近年では、「飲む日焼け止め」を謳ったサプリメントが販売されており、話題を集めています。しかし、「飲む日焼け止め」といった広告表現や商品名は薬機法違反に該当するため注意が必要です。
本記事では、飲む日焼け止めの広告表現や商品名について、薬機法違反となる理由について解説します。また、健康食品への使用がOK となる言い換え表現についてもご紹介します。
飲む日焼け止めって何?
「飲む日焼け止め」は飲むだけで日焼け止め効果が得られるサプリメントとして、テレビやSNSで話題になっている商品です。毎朝日焼け止めを塗るのが面倒という人にとって、飲むだけで日焼け止め効果があるといった商品はとても魅力的といえるでしょう。
しかし、科学的には「飲む日焼け止め」によって日焼け止め効果が得られることはほとんどないといわれています。
また、商品説明分に「1粒で紫外線カット」などのワードが記載されている商品も科学的な根拠は認められていないため注意が必要です。
薬機法とは?
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)とは、医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器による健康被害から一般の消費者を守るための法律です。
この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。
(薬機法第1条より引用)
薬機法において、虚偽・誇大な広告表現は禁止されています。こうした広告規制は広告制作に関わす全ての人が対象となっており、広告主だけでなくインフルエンサーも規制を受ける可能性があります。
何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
(薬機法第66条より引用)
薬機法の対象となるのは医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品とされています。
ただし、健康食品の広告において医薬品と同じような効果効能表現を行った場合は、未承認の医薬品と見なされて薬機法による規制を受ける可能性があります。
(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止) 第六十八条
何人も、医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、承認認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
(薬機法第68条より引用)
サプリメントなどの健康食品は、あくまでも「食品」とされています。そのため、食品の範疇を超えた効果効能表現は認められていません。ちなみに、特定保健用食品など機能性表示食品の場合は、法律で認められた範囲でのみ、その製品に含まれる成分について記載が可能です。
薬機法違反広告は措置命令・課徴金制度の対象に
「飲む日焼け止め」といった薬機法違反にあたる広告表現を行うと、措置命令や課徴金制度の対象となる可能性ががあります。
措置命令の対象となった場合は、薬機法違反を行った当人や法人に対して広告の取り下げやそれらについて公示すること、再発防止の措置などが求められます。
厚生労働大臣又は都道府県知事は、第六十六条第一項又は第六十八条の規定に違反した者に対して、その行為の中止、その行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他公衆衛生上の危険の発生を防止するに足りる措置をとるべきことを命ずることができる。
一 当該違反行為をした者
二 当該違反行為をした者が法人である場合において、当該法人が合併により消滅したときにおける合併後存続し、又は合併により設立された法人
三 当該違反行為をした者が法人である場合において、当該法人から分割により当該違反行為に係る事業の全部又は一部を承継した
四 当該違反行為をした者から当該違反行為に係る事業の全部又は一部を譲り受けた者
(薬機法第72条より引用)
また、虚偽・誇大広告による課徴金制度の対象となった場合は、課徴金対象期間に売り上げた該当商品の4.5%を納付することが求められます。
第六十六条第一項の規定に違反する行為(以下「課徴金対象行為」という。)をした者(以下「課徴金対象行為者」という。)があるときは、厚生労働大臣は、当該課徴金対象行為者に対し、課徴金対象期間に取引をした課徴金対象行為に係る医薬品等の対価の額の合計額(次条及び第七十五条の五の五第八項において「対価合計額」という。)に百分の四・五を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。
前項に規定する「課徴金対象期間」とは、課徴金対象行為をした期間(課徴金対象行為をやめた後そのやめた日から六月を経過する日 (同日前に、課徴金対象行為者が、当該課徴金対象行為により当該医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して誤解を生ずるおそれを解消するための措置として厚生労働省令で定める措置をとつたときは、その日)までの間に課徴金対象行為者が当該課徴金対象行為に係る医薬品等の取引をしたときは、当該課徴金対象行為をやめてから最後に当該取引をした日までの期間を加えた期間とし、当該期間が三年を超えるときは、当該期間の末日から遡つて三年間とする。)をいう。
(薬機法第75条より引用)
「飲む日焼け止め」はNG表現!
「飲む日焼け止め」を謳ったサプリメントなどは、健康食品としての広告表現の範囲を超えているとして薬機法違反に該当します。
なお、「飲む日焼け止め」を連想させる商品名や商品説明分の記載、商品画像の使用いずれも使用NGとされています。「飲む日焼け止め」そのもののワードだけでなく、同じように解釈される表現も認められていません。
「飲む日焼け止め」を意味するワードとしては、次のようなものが挙げられます。
- 飲むUVケア
- 飲む日差し対策
- 飲むだけで紫外線○○%カット
- 1粒で紫外線カット
こんな表現ならOK
サプリメントなどの健康食品では、身体の部位を表していないサポート表現や使用感の表現であれば広告への使用が認められています。使用がOKとなっているサポート表現には、次のようなものがあります。
- 透明感にアプローチ
- 美容のために
- 健康維持のために
また、使用感の表現としては次のようなワードが挙げられます。
- ひんやり
- さっぱり
- 香りがいい
ただし、次の表現は、身体の部位を表すワードに合わせての使用が認められない場合があるため注意しましょう。
- 美をサポート
- 女子力アップ
- イキイキとした毎日に
「日焼け止め効果」に関する言い換え表現
「飲む日焼け止め」や「日焼け対策」を言い換えるときの具体例についてご紹介します。サポート表現や使用感の表現を上手く利用して、薬機法に抵触しない広告を制作しましょう。
NG:飲む日焼け止め
OK:透明感をサポート
NG:肌が綺麗になる
OK:女子力アップに
まとめ
「飲む日焼け止め」は法律上「食品」に該当するため、日焼けを防ぐといった広告表現は認められていません。サプリメントなどの健康食品において、医薬品と同じような効能効果表現は「未承認の医薬品広告」として薬機法に抵触します。そのため、「美容のために」「健康維持のために」といったサポート表現に留めておきましょう。
健康食品の広告制作に関わる人は、薬機法やガイドラインを定期的に確認し、薬機法に抵触しない広告表現を心がけましょう。