医薬品成分を含有する健康食品が販売できない理由はなぜでしょう?
今まで健康食品やサプリメントの製造・販売に関わってきている方ならば答えられて当然の質問ですが、そうでない方には少し難しいかもしれません。
近年、一般消費者の健康志向が高まり、その需要を見越して健康食品事業に新規参入する企業もの増加傾向にあります。
これから自社の健康食品OEMの製造・販売を初めて担当する方もどんどん増えてくるでしょう。
そこで本記事では、初めて健康食品OEMの製造・販売を担当する方に向けて、医薬品成分を含有する健康食品がなぜ販売できないのかを説明していきます。
そもそも「健康食品」とは何なのか?
「健康食品」の定義
「健康食品」という言葉自体はみなさんご存知だと思いますが、実は法令上、明確な定義がないことまで知る方はあまり多くありません。
一般に、口から摂取されるものは、まず「食品」と「医薬品、医薬部外品、再生医療等製品」に分類されます。
そしてその「食品」の中でも「健康の保持増進に資する食品として販売、利用されるもの全般」が「健康食品」ということになっています。
「いわゆる健康食品」とは?
健康食品に関連した資料などを読んでいると、「保健機能食品」や「いわゆる健康食品」という記述が出てきます。この「いわゆる」ってなに?と思われる方もいるかもしれないので説明すると、健康食品の中にも分類があり、国の制度として認められている「保健機能食品」とそれ以外が「いわゆる健康食品」というだけのことです。
ちなみに、この保健機能食品はさらに、「特定保健用食品(トクホ)」、「栄養機能食品」、「機能性表示食品」の3種類に分けられます。これらの保健機能食品は、国が設定した安全性や有効性等の基準に従って「食後の血中の中性脂肪を抑える」、「歯の健康維持に役立つ」などの機能性を表示して販売することができます。
一方、「いわゆる健康食品」ではこの表示がいっさい認められておらず、「サプリメント」、「健康補助食品」、「栄養強化食品」等の名称で販売されています。
健康食品と医薬品の区別
健康食品は食品に分類されるので、医薬品医療機器等法(以下、薬機法)の適用範囲外にあります。しかし、医薬品成分が含まれると医薬品として扱われるため、薬機法の適用により自由に販売できなくなってしまいます。そのような事態を防ぐために、ここでは健康食品と医薬品を区別する方法について説明していきます。
46通知
医薬品に該当するかどうかを判断する基準として重要なのが、「医薬品の範囲に関する基準」です。この基準は、昭和46年に厚生省(現在の厚生労働省)から発表されたので通称「46通知」といわれています。発表から50年以上のあいだ、幾度となく改正され、現在でも実務上大変重要な基準となっています。
これが発表されるまで漠然としていた「医薬品に該当するかどうか」を判断するための基準を、この46通知では次の4つの要素で示しています。
- 効果効能:治療、予防効果、改善効果等
- 成分本質(原材料):医薬品専用の成分か否か
- 形状:アンプル、スプレーなど専ら医学品的形状
- 用法用量:服用時期、服用間隔、服用量を定める
以上の4点を総合的に判断して、医薬品に該当するか否かが判断されます。
食薬区分リストについて
ここでは、46通知の4要素のうち、本記事の主題である「1.成分本質(原材料)」について更に説明していきます。
厚生労働省、2つの食薬区分リスト
厚生労働省は、ある製品の成分本質(原材料)が医薬品に該当するか否かを判断するために2つのリストを掲示しています。
1つは、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」、通称「医薬品リスト」。もう1つは、「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」、通称「非医薬品リスト」です。
医薬品リストとは
医薬品リストに掲載されている成分は、医薬品・医薬部外品などに含有されている成分ですので、これらの成分を含有する健康食品は医薬品とみなされます。また、含有されていることを表示すると、実際には含有されていない場合であっても医薬品としてみなされてしまいます。
非医薬品リストとは
非医薬品リストに掲載されている成分は、健康食品に使用することが可能となります。
ただし、46通知の他の要素に該当する「医薬品的効能効果」や「医薬品的用法用量」などを標ぼうすると、医薬品としてみなされてしまうので注意が必要です。
どちらのリストにも収載されていない場合
医薬品リストと非医薬品リストは、逐次改訂されています。新たな成分の安全性等の知見が得られたりするためです。今現在、どちらのリストに収載されていないというだけで、食品に使用できるということではないので注意が必要です。
どちらのリストにも収載されていない新規成分本質(原材料)については、その原材料の性質(原材料の学名、使用部位、薬理作用又は生理作用、毒性、麻薬・覚醒剤様作用、国内外での医薬品又は食品としての前例など)を明らかにした資料を添えて、所属する都道府県を通じて個別に厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課あてに提出し、その判断を求めることができます。
表示に注意が必要な非医薬品成分
非医薬品成分の中には医薬品として使用されているものもあるため、食品として使用する場合には原則として、「基源植物名等」を使用し、「生薬名」を使用しないというルールになっています。
特に、生薬名が著名な漢方系のサプリメントの場合には注意が必要です。
表示例を以下に示します。
(生薬名×)→(基源植物名等○)
- サンヤク(山薬)→ヤマイモ
- ショウキョウ(生薑)→ショウガ
- タイソウ(大棗)→ナツメ
- シャゼンシ(車前子)→オオバコの種
- チンピ(陳皮)→みかんの皮
- ハンピ(反鼻)→マムシ
- ヨクイニン→はとむぎ
- ボレイ→カキ殻
なお、生薬名と基源植物名等が同一である成分(原材料)については、基源植物名等を使用することをもって生薬名を使用したとはみなされないものがあります。
(例)カンゾウ(甘草)、ウコン(鬱金)、ケイヒ(桂皮)など
食品添加物の場合
医薬品リストに収載されている成分本質(原材料)であっても、着色着香等の目的のためであれば食品添加物として使用できる場合があります。ただしその場合、当該成分を含有していることを標ぼうしない、または標ぼうしていたとしても食品添加物としての使用であることを明記する必要があります。
なお、食品添加物としての使用の適否については、食品衛生法に規定があるため行政への照会が必要となります。
健康食品の輸入販売に伴う問題について
近年、医薬品や健康食品の個人輸入が増えています。健康食品だと思っていたものに医薬品成分が含有されていると健康被害に結びつくような問題も起こりかねませんので注意が必要です。
外国では食品として販売されている健康食品・サプリメントの中には、日本では医薬品成分とされているのもが含まれていたり、医薬品的な効能効果を標ぼうされていたりするものがあります。これらを食品として輸入・販売すると、「無承認無許可医薬品」として薬機法の指導取り締まりの対象となります。
このような事態にならないよう、輸入しようとしている健康食品の原材料を確認する必要があります。海外の仕入先から「原材料配合表」を入手し、上述の医薬品リスト、ならびに非医薬品リストにより該当成分か否かを調べます。医薬品か食品かの判断が難しい場合には、各都道府県の薬務担当部署に照会してください。
輸入販売しようとする商品が確実に食品であることを確認できると食品衛生法に基づいた手続きをすることになりますので、厚生労働省検疫所にて詳細をお問い合わせください。
医薬品成分を含有する健康食品が発見された事例
世の中には医薬品成分やそれに似た成分を違法に添加している健康食品がまだまだあるのも事実です。これらは「無承認無許可医薬品」といわれ、薬機法の指導取り締まりの対象になります。しかし、一見普通の「健康食品」であるかのように販売されていることもあるため、知らずに摂った人が健康被害を起こす事例も発生しています。
ここでは、令和3年に各都道府県で発表された、医薬品成分を含有する健康食品が発見された事例を紹介します。
製品名(都道府県) 医薬品成分
- ミラクルキング(長野県) シルデナフィル
- MAGIX MAXX(長崎県) リドカイン
- BBX Premium DIETARY SUPPLEMENT PRODUCT(東京都) クロトリマゾール
- 魔力繊姿茶(東京都) センナ葉
- ENJOY of The LIFE GORIKKI(東京都) シルデナフィル
- Royal Honey VIP(千葉県) タダラフィル
- Power52(千葉県) タダラフィル
- HEMP Baby CBDグミ(東京都) メラトニン
- いきいきハイパワー(北海道) シルデナフィル
まとめ
本記事では、初めて健康食品OEMの製造・販売を担当する方に向けて、医薬品成分を含有する健康食品が販売できない理由を関連する法令や実例などを交えて説明させていただきました。
今後の健康食品OEMに役立てていただけたら幸いです。