化粧品を複数の会社でOEM生産し、自社で詰め合わせることがあります。
また、旅行用セットとして化粧品とコットンなどお手入れ用品をセットにしたり、美容機器と化粧品をセット販売したりすることもあるでしょう。
そういった販売をする場合は、どのような注意をすればいいのでしょうか?
この記事では、詰め合わせ化粧品や化粧品のセット販売について、薬機法での取り扱いを解説します。
詰め合わせ化粧品の基本
ここでいう詰め合わせは、セット販売などで、容器に充填された複数の化粧品をセットにして1商品として扱う場合を指します。
輸送や流通のために複数の商品を段ボール箱などに詰め合わせることは規制の対象になりません。
詰め合わせに関する規制
詰め合わせ化粧品については「詰め合わせ化粧品(医薬部外品を含む)の自主基準」(昭和58年6月11日 薬監第45号 厚生省業務局監視指導課長通知)で基準が定められています。
- 詰め合わせる個々の化粧品と詰め合わせ箱に表示しなければならない事項、及びその例外について(規定1)
- 詰め合わせ箱の総名称の表示について(規定2)
- 詰め合わせの制限など(規定3~5)
これらが規定されていますので、これらすべてに適合する必要があります。
詰め合わせ箱と個々の化粧品に表示するべき事項
表示しなければならないとされている事項は、以下のとおりです。
- 製造業者又は輸入販売業者の氏名又は名称及び住所
- 医薬部外品の場合は、「医薬部外品」の文字
- 名称(一般的名称のある医薬部外品の場合は、その一般的名称)
- 製造番号又は製造記号
- 重量、容量又は個数等の内容量
- 厚生大臣の指定するものにあっては、その使用の期限
- 厚生大臣の指定するものに成分を含有するものにあっては、その成分の名称
- その他厚生省令で定める事項
なお、箱の中に含まれる化粧品の製造番号または製造記号を特定できる「詰め合わせ番号又は詰め合わせ記号」が、詰め合わせ箱に表示されていれば、必ずしも個々の化粧品の「製造番号又は製造記号」を表示する必要はないとされています。
複数の会社で製造された化粧品を詰め合わせる場合の注意点
複数の会社で製造された化粧品を一つの箱に詰めて販売することは可能ですが、注意点があります。
必要な表示が確認できること
まず、詰め合わせ箱と詰め合わせる化粧品について、必要な表示がされていることが必要です。
薬機法では
第五十一条 医薬品の直接の容器又は直接の被包が小売のために包装されている場合において、その直接の容器又は直接の被包に記載された第四十四条第一項若しくは第二項又は前条各号に規定する事項が外部の容器又は外部の被包を透かして容易に見ることができないときは、その外部の容器又は外部の被包にも、同様の事項が記載されていなければならない。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
とされています。
したがって、箱に詰めてしまうと個々の化粧品の表示ラベルが隠れてしまう場合には、箱の外に同じ表示をする必要がでてきます。
また、詰め合わせを構成する個々の化粧品を別々の会社で製造する場合は、ラベル表示に齟齬がでないように表記に気を配りましょう。
総称名の表示場所と制限
総称名(〇〇トライアルセット、〇〇ギフトセットなどのセット名)は、詰め合わせ箱の表示事項が表示された同一の場所に表示事項と併記して表示することになります。
総称名は、詰め合わせされた化粧品の使用目的、使用対象者、又は詰め合わせ内容を明らかにするものであって、内容物の品質又は効能・効果について誤解される恐れのないものであることとなっています。
そのほかの詰め合わせの注意点
子供用化粧品セットにメーキャップ化粧品を詰め合わせることは認められません。
また、詰め合わせる化粧品はその用法・用量に照らして、誤用されるおそれがなく、適正な使用に支障がないもので構成されなければなりません。
化粧品以外のものと詰め合わせる場合
化粧品以外のものと詰め合わせる場合は、どのようなものと組み合わせるかによって規制を受けるか変わってきます。
化粧品と雑貨の詰め合わせ
化粧品に関連のある物品(雑貨)を化粧品と同一の容器に収納し、又は詰め合わせを行っても差し支えないものとする、とありますので詰め合わせをおこなうことは可能です。
雑貨と組み合わせる例
- スキンケアセットと専用コットンの詰め合わせ
- ヘアケア商品にお手入れ用のブラシをセットにする
- ネイル用化粧品と爪磨きや爪やすりのセット販売
詰め合わせができるのは「化粧品に関連する雑貨」であって、まったく関係のないものを詰め合わせることはできません。
この場合は、詰め合わせに化粧品製造業許可がいりますので、許可がない場合は詰め合わせできません。
美容機器と化粧品のセット販売
美容機器に化粧品をセットして売る場合は、詰め合わせに該当しないので化粧品製造業の許可は不要です。
化粧品は化粧品で完結しているところがポイントです。
化粧品は包装が完了した状態であるため、美顔器をセットにすることはプラスアルファの行為とみなされます。
つまり詰め合わせに関する法的な拘束力はないということです。
包装までが完成された化粧品で、容器には一切触らないことが前提になります。セットするために包装を解いてしまうようなことはできません。
セット販売するために化粧品製造業許可はいりませんが、化粧品の品質保持や安全衛生上の観点から、セット・保管するのは化粧品の包装区分許可のあるところでおこなうことが望ましいです。
景品と詰め合わせ
販促などで化粧品にノベルティや試供品などをセットする場合があります。
セットするものが景品とみなされる場合は、詰め合わせに該当しないので、規制の対象外になります。
景品は、不当景品類及び不当表示防止法(景表法)では、「景品類」を「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に付随して相手方に提供する物品、金銭その他経済上の利益であって、公正取引委員会が指定するもの」と定義しています。
ただし、消費者に提供されるときに景品と認知できる形態のものでないと、組合せや詰め合わせとみなされる可能性があるので注意が必要です。
化粧品の詰め合わせは化粧品製造業の許可が必要
化粧品製造業許可は化粧品の製造行為を行うために必要となる許可のことです。
製造販売業者の指示のもとで製造を行う行為に対する許可となり、「一般区分」と「包装・表示・保管区分」の2種類あります。
詰め合わせをするといった製品を化粧箱に入れるなど包装行為や表示ラベルを貼付する行為(輸入品を詰合せに含む場合、外国語表示シールを法文表示に張り替える行為)は、製造行為の「包装・表示・保管」にあたるので、化粧品製造業の許可(包装・表示・保管区分)が必要です。
化粧品製造業許可を取得していない場合は、ギフトボックスに詰めて、表示ラベルを貼ることはできません。
自社でセットの詰め合わせをする、パッケージへのラベル貼りをしたり、包装をしたり、販売までの間倉庫で保管したりする場合は、あらかじめ包装・表示・保管区分の製造業許可を取得しておく必要があります。
自社で許可を取ることが難しい場合は、化粧品製造業の許可を持つ業者に詰め合わせ業務を委託しましょう。
まとめ
化粧品の詰め合わせは自主規制による表示や、詰め合わせ作業には化粧品製造業の許可が必要といった注意点があります。
詰め合わせ箱にも法定表示が必要で、総称名の表示(セット名をつける)、化粧品と雑貨の詰め合わせが可能といった点を押さえた上で、詰め合わせ商品を考えましょう。
この記事を参考にして、素敵な詰め合わせ化粧品を作ってください。