化粧品OEMで製造を開始したものの、製造スケールやコストの面で、もっと良い企業があると知り、受託企業を変えたい場合もありますよね。
そのときにはどのような点に注意し、実行すればよいのでしょうか?
この記事では、化粧品OEMで受託工場を変更する場合について解説します。
製品の仕様を変えずに工場を変更できるか
製品の仕様をそのままに、生産するOEM企業を変更する場合は、処方や容器デザインの意匠といった「知的財産権の所在」がどちらにあるのかがポイントです。
仕様書が自社所有である場合
仕様書が自社のものになっており、製造のみを委託している場合は、工場の変更が比較的容易です。
仕様書があれば、ほとんどのOEM工場で同じ商品の製造が可能になります。
仕様書を持って新しい契約先と打ち合わせをするだけで良いので、問題ないでしょう。
仕様書の帰属先がOEM企業の場合
製品の処方や容器デザインなどの仕様がOEM企業にある場合は、工場を変更して同じ商品を作ることは難しくなります。
契約の終了に伴って仕様書をもらえるのが一番ですが、機密保持契約の都合上もらえない可能性が高くなります。
その場合は、処方や容器デザインなどの意匠を買い取るという手もあります。
共同で開発した処方やデザインで独自のものであれば、OEM企業も他ブランドへの流用をしづらいので、売却してくれる可能性があります。
汎用処方でつくっている場合
医薬部外品などを汎用処方でつくっている場合は、同じ仕様で他工場で作ることは厳しくなります。
汎用処方の製品は、ほかの企業で同じような製品をつくってしまうと「知的財産権の侵害」になる恐れがあり、工場の変更はできません。
価格や納期に不満がある場合は、OEM企業の担当者に伝えて、交渉で改善できないか検討しましょう。
今の製品を持ち込んで同じような製品にしてもらうことは可能か
製品仕様書がもらえなかった場合、手元にある製品をほかのOEM企業に持ち込んで、同じような製品を作ることが可能です。
成分分析すれば同じ処方にすることができる
仕様書がなくても、化粧品に詳しい製造業者であれば、表示ラベルの成分を確認して現品の成分分析をすれば同じ処方を作ることができます。
実際に工場変更に対応してくれるOEM企業は、同じような相談を受けた経験があることが多く、事例を紹介してくれることもあります。
まったく同じものにできるとは限らない
成分分析してまったく同じ処方にしたとしても、原料の調達先が違ったり、製造設備の規模などが変わることで、テクスチャーなどが微妙に変わってしまうことがあります。
まったく同じにはできないことも知っておきましょう。
微妙なテクスチャーの変化でリピーターからの問い合わせが心配だという場合は、工場変更を機会に、リニューアル商品としてマイナーチェンジするのも良い方策です。
化粧品OEMでの工場変更の注意点
OEM工場との契約を終了して、ほかの工場と新たに契約する際に特に注意しておきたい点です。
契約違反の事項がないか
工場の変更が契約違反にならないように契約書の内容を確認しましょう。
- 契約の有効期間
- 知的財産権(処方や意匠)の帰属先
- 同様の製品を他社でつくることを禁止する項目
- 機密保持の範囲
こういった事項がどのような契約内容になっているかで、契約違反になる・ならないが変わってきます。
まず、契約書を確認しましょう。
詳細な契約書を取り交わさず、大まかなことしか決められていない契約の場合は、特に気にする必要はありません。
薬機法上の手続き
自身が製造販売業の許可を持っている場合は、工場の変更によって変更届(製造所の変更)を出すことが必要になってきます。
製造販売業の業務までOEM企業に委託する場合は、すべて任せてしまって大丈夫です。
しかし、申請書類のコピーを貰って、変更がきちんとできたかのチェックは自分でもやりましょう。
新しいOEM工場を探す方法
現在契約中のOEM企業に不満があり、新しい契約先を探すときにおすすめの4つの方法を紹介します。
今の工場に紹介してもらう
円満な契約終了などで、OEM企業も工場変更に応じてくれているのであれば、新たな契約先を紹介してもらうことが早くて簡単です。
化粧品OEM企業は全国に数多く存在し、業界内でも交流があるので、信頼の置ける企業を紹介してもらうことで、よくない企業と契約してしまうといった失敗を防ぐこともできます。
展示会で探す
化粧品の展示会には、多数のOEM企業も参加しており、委託してくれるブランドを積極的に募集しているところもあります。
企業ブースでその場で担当者と対面で言葉を交わせることが、展示会で探す大きな利点です。
展示会をまわり、地道で足で探すことは大変ですが、思いもかけない良いOEM企業と契約できる可能性もあります。
新たな契約先を求めて、展示会に出かけてみましょう。
OEM仲介サービスに依頼する
OEM仲介サービスは、化粧品をプロデュースしたい人や企業とOEM工場をつなぐサービスです。
依頼すれば専門の担当者が聞き取りをしてくれて、最適なOEM工場を紹介してくれます。
工場の紹介だけでなく、契約時の交渉や契約書作成なども依頼できます。
多くの仲介サービスがあり、相談だけなら無料ですので、気軽に問い合わせてみましょう。
マッチングサイトを利用する
化粧品OEMや化粧品ビジネスのマッチングサイトがあり、化粧品ビジネスに関する様々な相談が可能になっています。
マッチングサイトの場合は、コンタクト後は自社とOEM企業の当事者同士で交渉から契約までを進めていくことになります。
無料または安価でOEM企業を探すことができます。
<真ん中の広告タグをここに入れる>
OEMは製造前に契約書をきちんと取り交わすことが大事
OEM契約では、契約書をきちんと取り交わし、後々トラブルにならないようにしておくことが大切です。
その際に、契約事項に工場を変更することになっても困らないように、下記の事項を盛り込んでおくとよいでしょう。
開発した処方の取り扱いや帰属先
化粧品OEMは処方や容器デザインは共同で開発することがあります。
その場合の処方や意匠の取り扱いと帰属先を明確に決めて、契約書に明記します。
受託者(OEM企業)が主に企画開発をするODMの場合は、知的財産権の帰属をさらにはっきりさせておきましょう。
最初から工場変更があることも考えて契約しよう
類似製品の製造販売の制限を定めるかどうか、最初に決めて契約書に記載しておきましょう。
工場の変更をした際に、OEM企業側が似たような商品を他ブランドで作った、といったトラブルの防止にも役立ちます。
商標の取り扱い
商標(ブランド名やロゴなど)の取り扱いについては、特別な場合を除き、化粧品をプロデュースする側(委託社)に帰属することになります。
- 商標権は委託者に帰属すること
- 委託者の指示する方法で商標を表示すること
- 受託者が商標を第三者に譲渡等しないこと
- 受託者が商標を当該契約の達成目的以外で使用しないこと
は必ず記載しましょう。
契約解除や有効期間
当事者の倒産や不正行為など、契約を解除する理由やその方法を記載します。
また、契約の有効期間や、延長される場合の手続について記載します。
契約書はプロに作成してもらう
契約書を弁護士に作成してもらうことで、契約の不備やトラブルを防止できます。
リスク回避のために、化粧品のOEM契約に詳しい弁護士に契約書を作成してもらう・相談することもいいでしょう。
まとめ
契約しているOEM企業に不満があり、受託先を変えたいと考えることは、化粧品ビジネスを続けていれば誰にでもおこり得ることです。
そのときに困らないように、OEM契約を交わす際には、詳細までよく詰めておきましょう。
この記事を参考に、良いOEM工場と契約してください。