肌の「ターンオーバー」を化粧品広告で使う場合は、薬機法による規制を受けるため工夫が必要です。 そのまま使うことができないの!?と驚かれる方もいるかも知れません。
実は「ターンオーバー」は表現によっては化粧品の効果の範囲を逸脱してしまうため、使うためには言い換えや工夫が必要です。
この記事では、「ターンオーバー」の化粧品広告での使い方を解説します。
肌のターンオーバーとは
肌のターンオーバーとはどのような体の仕組みでしょうか?言い換えのためにもしっかり理解しておきましょう。
ターンオーバーとは肌が生まれ変わること
ターンオーバーとは、肌の中で新しい細胞がうまれて、古い細胞が死んで剥がれ落ちていく生理機能のことです。肌の新陳代謝とも言います。年齢や部位によって異なりますが約28日周期で肌細胞が完全に入れ替わります。
ターンオーバーの仕組み
人間の皮膚は表皮(ひょうひ)・真皮(しんぴ)・皮下組織(ひかそしき)の3層から構成されています。
表皮は皮膚の最表面の層で、さらに5層にわかれています。 表皮の5層とは、①角層、②透明層(手のひらと足裏のみ)、③顆粒層、④有棘層(ゆうきょくそう)、⑤基底層です。私たちの皮膚は、表皮の一番深い層である基底層で日々新しい細胞がつくられていて、徐々に表面に押し上げられてやがて角層となり、最後は垢となって剥離・脱落するというサイクルを繰り返しています。
ターンオーバーの乱れとは
ターンオーバーの正常なサイクルはおよそ1ヶ月です。ターンオーバーは、早すぎても遅すぎても肌のトラブルの原因となります。
ターンオーバーが早くなる
日焼けや皮膚の炎症、皮膚をこすりすぎた場合などは肌のターンオーバーが早くなります。肌が薄くなりバリア機能が損なわれて、肌荒れや乾燥肌などの皮膚トラブルが出てきます。
ターンオーバーが遅くなる
加齢で遅くなります。20代の頃は28日周期だった肌のターンオーバーが、40代では40~50日、50代では50~60日、60代にもなると100日かかるといわれています。古い角質がいつまでも残ることで、肌のハリやツヤが失われ、くすみが目立つなどのトラブルが出てきます。
薬機法への配慮が必要な「ターンオーバー」表現
肌の「ターンオーバー」という言葉は、少しの不注意で「医薬品的な表現」となってしまい、薬機法違反となってしまう危険性をはらんでいます。
薬機法違反になる理由
化粧品では、うたえる効果効能は56種類と決められているため、それ以外の効果を記述した広告は違反と判断されます。 また、ターンオーバーは生理的な活動なので、それに作用するということは化粧品に許されていない「薬理的な作用」であると判断されます。
これらのことから、「ターンオーバー」に働きかけるような表現を使うことはできません。効能効果の許される範囲で言い換えることも必要になります。 以下に、肌に使える化粧品の効能効果をあげます。
薬用化粧品(医薬部外品)の効能効果
- 肌あれ。あれ性。
- あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・にきびを防ぐ。
- 油性肌。
- かみそりまけを防ぐ。
- 日やけによるしみ・そばかすを防ぐ。(注1)
- 日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ。
- 肌をひきしめる。肌を清浄にする。肌を整える。
- 皮膚をすこやかに保つ。皮膚にうるおいを与える。
化粧品の効能効果
- (19)肌を整える。
- (20)肌のキメを整える。
- (21)皮膚をすこやかに保つ。
- (22)肌荒れを防ぐ。
- (23)肌をひきしめる。
- (24)皮膚にうるおいを与える
- (25)皮膚の水分、油分を補い保つ。
- (26)皮膚の柔軟性を保つ。
- (27)皮膚を保護する。
- (28)皮膚の乾燥を防ぐ。
- (29)肌を柔らげる。
- (30)肌にはりを与える。
- (31)肌にツヤを与える。
ここにあげた表現の範囲内で表現できれば、違反広告とはなりません。
「細胞」も使えない
ターンオーバーの関連で、細胞に関する表現をしたくなることもあるかもしれませんが、「細胞」も禁止表現です。
細胞等の表現 類似の表現に、セルなどがある。細胞レベル等(角質層を除く表皮、基底層、真皮、皮下組織、遺伝子等を含む)の表現においては、化粧品等の定義や効能効果の範囲を逸脱することになるので行わないこと
皮膚組織では唯一「角質層」だけが広告表現に使えることになっています。「細胞」だけでなく、組織の名称も過剰表現になってしまうので注意しましょう。
「ターンオーバー」の広告表現の具体例
ターンオーバーに関しては、効能効果と切り離せば表現することも可能です。どうしても使いたい場合には、以下のような表現を使いましょう。
「ターンオーバーに着目した○○美容液」
「あくまで着目しているだけで効果ではない」という立ち位置の表現方法です。近年は好ましくないとされているのであまり推奨できませんが、どうしても使いたいときに役立ちます。
「ターンオーバーが乱れやすい季節の変わり目に○○美容液」
効能効果として謳ってはいけないという規制なので、「ターンオーバー」と効能効果を切り離すことが有効です。効果には絡めないのであれば、「ターンオーバー」という言葉そのものが否定されるというものではありません。
「肌が本来持っているターンオーバー機能を邪魔しない(妨げない)お手入れ方法」
この化粧品を使うことが、ターンオーバーの負担にならないといっているだけなので、OKという戦略です。「ターンオーバー」は肌が持っている機能であって、それは化粧品の効果とは関係ないというスタンスの表現になります。
「ターンオーバー」のNG表現や言い換えの具体例
ターンオーバー関連の広告表現の具体例をあげて、注意したい禁止表現とその代替表現を確認します。
「肌のターンオーバーを促進、ターンオーバーを整える」
「ターンオーバーを促進」は、肌の再生をうながすような表現とみなされるため違反になります。 「ターンオーバーを整える」は、ターンオーバーの周期を変えるので機能的表現になり不適切です。 「ターンオーバーをケア」、「ターンオーバーの乱れをケア」という表現であれば、不可とはいえないというレベルですが、表現可能になります。
「肌のサイクルを整える、肌の生まれ変わりを助ける」
この2つの表現は、肌の機能を向上させる薬理的な効果を暗示しているのでNGとなります。「肌本来の力をサポートする」といった、効能と切り離す表現に変えることで使用可能になります。
「メラニンが剥がれ落ちていくのをお手伝い」
メラニンの表現は美白関連の表現になるため、効能の承認を受けた薬用の美白化粧品の広告以外では表現できません。「古い角質層を落とす(除去する)」といった表現に言い換えましょう。
「細胞レベルから美しく」
「細胞レベル」という表現は、化粧品等の定義や効能効果の範囲を逸脱しています。細胞という言葉を使わずに「中から美しく」とぼかして使えばOKです。
まとめ
適切なスキンケア商品を使用することで、肌のターンオーバーがケアできることは事実です。 それなのになぜ広告表現ができないのかと疑問に思うかもしれませんが、消費者に誤解を与えないようにする大切な規制ですので、遵守して適切な表現をする必要があります。 広告表現について不安があるなら、プロに相談することも1つの方法です。
広告表現について不安がある場合は、プロフェッショナルの力を借りることも考えましょう。