SNSでは多くの医療関係の投稿が存在します。
中には「これは誇大広告では?」と思うような投稿内容を見た人も多いのではないでしょうか。 実際に美容医療の広告で誇大広告として問題になった広告も存在します。
また、東京都のインターネット広告表示監視事業の令和2年度実施報告では291件の広告内容改善指導が行われています。
今回は医療広告における誇大広告について具体例を交えながら詳しく説明していきます。
医療広告とは
まず医療広告の定義から確認していきます。医療広告は医療法と医療広告ガイドラインで定義されています。
第二節 医業、歯科医業又は助産師の業務等の広告 第六条の五 何人も、医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して、文書その他いかなる方法によるを問わず、広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示(以下この節において単に「広告」という。)をする場合には、虚偽の広告をしてはならない
出典:医療法
1 広告の定義 次の①及び②のいずれの要件も満たす場合に、法第2章第2節「医業、歯科医業又は助産師の業務 等の広告」の規定による規制の対象となる医療広告に該当するものと判断されたい。 ① 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性) ② 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可 能であること(特定性) なお、①でいう「誘引性」は、広告に該当するか否かを判断する情報物の客体の利益を期待して誘 引しているか否かにより判断することとし、例えば新聞記事は、特定の病院等を推薦している内容で あったとしても、①でいう「誘引性」の要件を満たさないものとして取り扱うこと。ただし、当該病 院等が自らのウェブサイト等に掲載する治療等の内容又は効果に関する体験談については広告に該当 すること(その上で省令第 1 条の 9 第 1 号の規定に基づき禁止されること)。 また、②でいう「特定性」については、複数の提供者又は医療機関を対象としている場合も該当す るものであること。
出典:医療広告ガイドライン
となっており、医業に関わる内容で「誘引性」と「特定性」を持つものを医療広告と定義されています。
医療法と誇大広告
医療広告については前述しましたが、実際に誇大広告とはどういったものを指すのでしょうか。医療広告ガイドラインに記載されていたので引用します。
(3) 誇大な広告(誇大広告) 法第6条の5第2項第2号に規定する「誇大な広告」とは、必ずしも虚偽ではないが、施設の規 模、人員配置、提供する医療の内容等について、事実を不当に誇張して表現していたり、人を誤認 させる広告を意味するものであり、医療広告としては認められない。 「人を誤認させる」とは、一般人が広告内容から認識する「印象」や「期待感」と実際の内容に相違があることを常識的判断として言えれば足り、誤認することを証明したり、実際に誤認したという結果までは必要としない。
出典:医療広告ガイドライン
となっており、虚偽ではないが事実を誇張した表現や誤解を与える表現のある広告を誇大広告といいます。
薬機法と誇大広告
誇大広告についての記載があるのは医療法だけではありません。薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)にも同様に誇大広告の記載があるので引用します。
(誇大広告等) 第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。 2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。 3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
となっており、医療法の誇大広告とほぼ同じ内容ですがこちらは医薬品等の名称・製造方法・効能または性能に関して誇大な表現をしてはならないとされています。
具体例
ここまで法律上の記載を紹介してきましたが、実際にどういった表現が誇大広告に当たるのか具体例を交えて紹介していきます。
Libeiro のアフィリエイト広告によるトラブル事例の概要 Libeiro が販売する「エゴイプセビライズ」のアフィリエイト広告には、例えば、肌のシミが数日で確実に消えるかのような内容(SNS の投稿画像、体験談など)が表示されています。 これにより、消費者は、「エゴイプセビライズ」を使用することにより、肌のシミが数日で確実に消えると認識して、当該商品に興味を持ちます。 また、アフィリエイト広告には、「定期縛り無し! いつでも解約 OK!」などと強調して表示されていたり、通常価格 9,800 円の「エゴイプセビライズ」が 2,980 円で購入できるかのように表示されていたりすることから、消費者は、特別セール価格で試してみて、気に入らなければ解約すればよいなどと考え、アフィリエイト広告の「お得に購入できる公式サイトはこちら」などと表示されたバナー広告などをクリックして販売用ウェブサイトにアクセスし、当該サイトにおいて当該商品を購入します。 「エゴイプセビライズ」到着後、消費者は、実際に当該商品を使用してみますが、広告に表示されていたような、肌のシミが数日で消えるなどといった期待していた効果が感じられないことに落胆し、Libeiro に解約を申し出て、当該商品の使用を中止します。
となっており、SNSなどでの投稿画像や体験談をみた使用者が実際に商品を使ったが、思っていたような効果が得られなかったとして虚偽・誇大広告に該当するとされた事例です。 また今回の事例で問題になった記載を一部抜粋します。
- 「この配合量ならシミが消えますね。レーザーを超えていると思います。(ガチの先生のお墨付き…)」 →あたかも医師が効果効能を保証したような表現
- 「たった5日でこの感じです。思いっきり笑ってもシワは残りません!笑」 等の体験談 →肌のシミが短期間で消えることはないのに、消えるかのような表現
- 「12 月 11 日(水曜日)限定で、このページから購入をすると! 通常 9,800円のところ、69%OFF の 2,980 円で手に入る特別セールを開催中です!」 →12月11日に限り2980円で購入できるかのような表現。実際はこの日以降も2980円で販売していた。
- 「※売り切れの際は、再入荷に3ヶ月かかりますのでご注意ください。【注意】こちらの商品は、売れ過ぎてよく完売します。」 →在庫が残りわずかであって、売り切れた場合には長期間購入できなくなるかのような表現
- 編集した画像によるビフォーアフターの写真 →画像やテキストを編集して実在の消費者の体験談であるかのようにみせかけた架空の表現
となっており、医療法と薬機法両方の誇大広告に該当する広告内容でした。 インターネット上では化粧品広告だけではなく雑貨や健康食品も誇大広告に該当するものが多く、景品表示法や健康増進法などの内容も併せて確認しておくと良いかと思います。
まとめ
今回は医療広告における誇大広告について具体例を交えて説明してきました。
広告を出すのであればより魅力的に見せたいという気持ちは分からなくもないですが、虚偽や誇大な広告の物は消費者の不利益になることが多々あるので広告をする側も広告を見る側も良く注意する必要があると思います。
本記事が少しでも広告作成の参考になれば嬉しいです。