紫外線が気になる季節だけでなく、日常でのケアでも美白を意識する方が多いと思います。
日本での美白のニーズは根強いものがあり、市場でも美白を訴求した商品が年に数多くリリースされています。 更に、海外の特にアジア圏でも日本の美白化粧品の人気は高く、コロナ禍で減少傾向にあるものの未だに根強い人気があります。
では、化粧品広告で美白を標榜する場合はどのような点に気を付けなければならないのでしょうか。
今回の記事では美白化粧品の考え方や、薬機法上の広告ルールなどをご説明して行きたいと思います。
美白化粧品広告の薬機法上の考え方
まず、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、通称「医薬品医療機器等法(薬機法)」における広告に関する記載は以下のように書かれています。
第十章 医薬品等の広告 (誇大広告等)第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
つまり、要約すると化粧品の効能や効果に関して誇大な広告をしてはならないと記載されています。
しかし、この「誇大な広告」がどの程度の内容なのかまではこの法律には収載されていないため、薬機法の内容を基に「医薬品等適正広告基準」という解釈の基準が制定されました。 また、この解釈の基準を化粧品に落とし込みやすくするよう、日本化粧品工業連合会が「化粧品等の適正広告ガイドライン」を作成、公開しています。
それではこの化粧品等の適正広告ガイドラインでは美白についてどの様に書かれているのでしょう。
E15 「美白」等の表現 E15.0 薬用化粧品・一般化粧品における美白表現の原則 「美白」、「ホワイトニング」等は医薬品医療機器等法による効能効果ではない。従って、これらの文字を使用する場合は承認を受けた効能効果や化粧品で定められた効能効果の範囲で表現し、E15.1及びE15.2に示す場合以外は用いないこと。特に継続して使用しているうちに既に黒い肌の色が段々と白くなる旨を暗示することは認められない。 【関連法令等】
医薬品等適正広告基準 第4の3(1)、3(2)E15.1 薬用化粧品(医薬部外品)における美白表現の範囲
承認を受けた効能効果に対応した薬用化粧品の美白表現 (1) 認められる表現の範囲と具体例 a) 承認を受けた効能効果に対応して「美白」「ホワイトニング」を表現する場合。「美白」「ホワイトニング」等を表現する場合は、承認を受けた効能効果「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」、又は「日やけによるしみ・そばかすを防ぐ」を記載すること。 ・「この美白化粧品はメラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぎます」 ・「美白*」 「 * メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」 〔解説〕 承認された効能効果が「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」の場合の説明表現は「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」を、承認された効能効果が「日やけによるしみ・そばかすを防ぐ」の場合の説明表現は「メラニンの生成を抑え、日やけによるしみ・そばかすを防ぐ」を用いる。
(2) 認められない表現の範囲とその具体例 a)肌本来の色そのものが変化する(白くなる)旨の表現 ・黒い肌も徐々に白くするホワイトニング効果
・使えば使うほど肌が白くなるホワイトニング効果 b)できてしまったしみ、そばかすをなくす(治療的)表現 ・ホワイトニング効果でシミ、ソバカス残さない ・○○年間もあったシミがこんなに薄くなるなんて ・シミをケアする c)承認効能以外のしみ、色素沈着等に係わる表現 ・頑固なシミ、老人性斑点を美白 ・ニキビ痕、炎症痕の黒ずみに ・ニキビ跡の色素沈着を防ぐ d)肌質改善を暗示させる表現 ・美白が変われば肌は変わる。 ・シミ・ソバカスの出来にくい肌に e)効能効果の保証・最大級的表現に該当する表現 ・結果がみえる美白 ・シミ・クスミが目立たなくなり美白効果を実感 ・美白成分が○倍浸透する美白美容液(当社比) (当社比であっても、数値を例示して比較することは不適当) ・美白成分として有効性と安全性を明確に実証 f)添加剤を有効成分と誤認されるような表現 ・○○美白(○○は保湿成分等添加剤の成分名) ・○○配合、新しい美白の誕生です (同上)
まず、「美白」や「ホワイトニング」と標榜する場合は医薬部外品として承認を受けた薬用化粧品であるか、一般化粧品としても使い方に十分注意しなければならない必要があります。 更に、医薬部外品の場合は商材や有効成分で承認を受ける効能効果が異なるため、承認を受けた内容を表記しなければなりません。
例えば、「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」という効能効果の承認を得ている場合は、その内容を明記しなければならず、「しみ、そばかすを防ぎます」のみの表現だと不十分になります。
また、「防ぐ」というワードにも注意が必要となります。 あくまで認められている効能効果は「しみ、そばかすを防ぐ」というものであるため、元からあるしみ、そばかすには効果が認められていません。 そのため、すでにあるしみやそばかすが薄くなったり、無くなる様な表現(「悩んでたしみがみるみる薄く!」「そばかすが気にならなくなりました」等)をする事ができません。
以上を端的にまとめると、
- 「美白」と表現する場合は必ず承認を受けた医薬部外品の効能効果内の表現を行う。
- 一般化粧品の場合も化粧品の効能効果内での表現にとどめる。
- 医薬部外品の場合はあくまで「防ぐ」ものなので、既にできてしまったしみやそばかすへの効果は標榜できない。
という点に注意して広告表現を行う必要があります。
医薬部外品以外での美白表現
厚労省から承認を得た医薬部外品以外での「美白」表現にはある程度の注意が必要となります。 化粧品等の適正広告ガイドラインには以下の内容が書かれています。
E15.2 メーキャップ効果に基づく美白表現の範囲 薬用化粧品・一般化粧品のメーキャップ効果に基づく美白表現 (1) 認められる表現の範囲と具体例 a)メーキャップ効果により肌を白く見せる、またはしみを隠す旨の表現 ・シミ、ソバカスをきれいに隠し、お肌を白くみせてくれます ・お肌のシミを見えにくくカバーします (2) 認められない表現の範囲と具体例 a)メーキャップ効果である旨が明確でなく、誤認を与える表現 ・美白パウダーでシミ、ソバカスが消えてなくなる ( メーキャップ効果の表現をこえて治療的な効能との誤認を与える場合)
このように、一般化粧品においても多少の美白表現は可能となっていますが、「美白」というワードの使い方には十分注意が必要です。 あくまでメイクアップ効果によるものであるということが明確に表現されている必要があるため、
- 肌に伸ばすと白さ際立つ美白ファンデーション
- しみ、そばかすをカバーしてスッキリ陶器肌
のような表現にとどめておく必要があります。
更に、「美白」以外にも「肌が明るくなる」といった肌色が変わる様な表現も、医薬部外品の美白化粧品の効能効果を想起させるため同様の注意が必要です。
「肌が明るくなる」という表現を使用する際は、メイクアップ化粧品の場合は「※メイクアップ効果による」という打ち消し表現を必ず記載しておきましょう。
また、洗顔なども古い角質や汚れが落ちることによる効果と解釈できなくないため、標榜自体は可能と考えられていますが、表現の前後関係や打ち消し表現などで印象を弱めながら、汚れ落ち効果によるものであることを併記して標榜しておいたほうが良いと考えられます。 (例:濃密な泡洗顔で古い角質や汚れを落とし、クリアで明るい肌印象へ 等)
まとめ
今回は医薬部外品や一般化粧品における「美白」表現についてガイドラインの内容を踏まえてご説明させていただきました。
美白というワードは一般消費者の中でも購買意向に紐付きやすいワードのひとつである一方で、標榜する際は十分注意が必要なワードでもあります。
化粧品広告で美白表現についてお考えの方は、是非この記事を参考にしてみてください。