ECプラットフォームの発達により、個人でオリジナル化粧品を販売することも可能になってきました。
しかし、化粧品の製造や販売には薬機法の規制もあって注意が必要です。
この記事では、オリジナル化粧品を販売する上での注意点を解説します。
オリジナル化粧品の製造販売には薬機法の規制がある
手作りの石けんやハンドクリームなどの化粧品を販売したいという方も増えています。 しかし、ハンドメイド化粧品を気軽にECプラットフォームに出品したら、法律違反になる可能性があります。
薬機法の規制は厳しい
化粧品の製造と販売は「薬機法」で規制されています。
薬機法は、正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といい、「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」「医療機器」「再生医療等製品」の品質と有効性および安全性を確保するため、製造から販売、市販後の安全対策まで一貫した規制をしている法律です。
違反した場合、以下のような厳しい行政処分が設けられています。
- 措置命令
- 中止命令
- 課徴金
措置命令と中止命令は、厚生労働大臣または都道府県知事から違反行為の中止や排除、再発防止策の実施を命じられます。 違反とはならなかったものの、今後違反になりそうだと判断された場合は、指導(行政指導)がおこなわれることもあります。 課徴金額は、課徴金納付命令第七十五条の五の二において決められていて、原則として違反を行っていた期間中における対象商品の売上額 × 4.5%です。
それだけでなく、社会的信用が失われることも大きな損失になるので、違反は絶対にしないようにしてください。
化粧品製造販売の許可
自分で作った化粧品を販売するには「化粧品製造業」と「化粧品製造販売業」という許可が必要です。
化粧品は、自分で作って自分で使用する場合には許可がいりません。つくった化粧品を他者に「譲渡」や「販売」したときに初めて規制の対象になります。
手作り化粧品をプレゼントするのも、実は薬機法違反です。
製造や販売の許可申請に必要な要件は非常に厳しく、個人でこれらの許可を取得するのは非常にハードルが高いのが現実です。個人で取得するのはほぼ無理と言っても過言ではなく、これが原因で化粧品販売を諦める方も多くいます。
許可がなくてもオリジナル化粧品を販売する事はできる
化粧品を、許可を取らずに売る方法はないのでしょうか? 許可を取らなくてもオリジナル化粧品を売る方法はいくつかあります。
他社から仕入れた化粧品を販売だけする
仕入れた他社製品の販売のみをおこなう場合は、許可が不要です。
すでに「化粧品製造販売業」を取得しているOEM会社にオリジナル化粧品の製造と販売を依頼すれば、許可を取る必要がありません。自身は小売業という形で販売をおこないます。
仕入れた化粧品を開封して別の容器に詰め替える、パッケージを自分で行うなどの行為は製造行為になるので許可が必要です。 包装は製造行為なので、化粧品の中身や中身が入っているボトルには一切触らずに小箱へ入れたりシールを張ったり詰め合わせをするだけでも、無許可では違反になります。
輸入化粧品を販売する
輸入化粧品は仕入れ方法によって、許可が必要なケースとそうでないケースがあります。
「化粧品製造販売業」を取得している問屋や輸入販売会社から仕入れた化粧品を、販売だけするのであれば、「化粧品製造販売業」の許可は不要とされる場合がほとんどです。 こちらも自身が「小売のみ」になるように、製造作業などはやってはいけません。
ただし都道府県によっては上記の場合でも許可が必要な場合がありますので、必ず所轄の都道府県の担当窓口に相談してから輸入販売を始めましょう。
オリジナル化粧品の広告には注意が必要
化粧品の販売をするのであれば、広告に関する薬機法について正しく理解しておかなければなりません。 化粧品はファッションや雑貨と違って、広告に使える表現に厳しい規制があります。 消費者の関心を引くためにキャッチーなフレーズを使用した場合、違反になるおそれが出てきます。
薬機法の広告の要件
薬機法では
- 顧客の購入意欲を昴進させる意図が明確であること
- 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
- 一般人が認知できる状態であること
の3つの要件すべてを満たせば広告とみなされます。 この基準は、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、ウェブサイト及びSNSなどのすべての媒体における広告を対象としています。 広告はテキスト、画像、動画すべてが対象になります。
誇大広告の禁止
誇大広告の定義は「事実に反する虚偽の表現や誇張した表現により消費者に誤った認識をさせるおそれのある広告」です。 実際にはない効能効果をうたったりすれば「虚偽」になります。 消費者にアピールするために効果を大げさに表示すれば「誇張」です。 販売する際の商品の説明には十分配慮して違反にならないようにしましょう。
他社商品の誹謗広告の制限
薬機法では、“医薬品等の品質、効能効果、安全性その他について、他社の製品を誹謗するような広告を行ってはならない”と定められています。
他社製品を実際より悪く表現することは当然ながら禁止です。他社の製品の内容について事実を表現した場合でも誹謗広告になります。
他社商品と比べた表現をしている「比較広告」に関しても同じで、他社の同様の製品と成分量の比較や効果の違いを表現することはできません。 商品同士の比較広告を行う場合は、自社商品の範囲で、その対照製品の名称をしっかり明示する場合に限定しています。化粧品の広告で他社製品を引き合いに出すことはNGです。
医薬関係者等の推せん
広告の中に医療関係者を登場させることも基本的にはできません。 なぜなら“医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所、薬局、その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は学会を含む団体が指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告を行ってはならない。” と薬機法で明言されているからです。
化粧品56の効能効果
化粧品で表現していい効能効果は、薬機法で認められたものだけです。 実際に効能効果について有効なエビデンスがあったとしても、その効果が薬機法に掲げられていなければ表現してはいけません。 化粧品として認められる効能効果は、「56項目の範囲内の効能効果」「メイクアップ効果」「使用感」です。これらの表記内であれば薬機法違反を問われることはありません。
輸入化粧品の販売
海外の化粧品を日本で宣伝し販売を行う事業者や法人は、「薬機法」の規制対象品を輸入する際に「化粧品製造販売業許可」が必要です。 輸入した化粧品のラベルを張り替えたりする場合は「化粧品製造業許可」も取得しなければなりません。 また、海外の化粧品の規制と日本の化粧品の規制には、配合していい成分の種類や処方量に違いがあったりするので、成分分析などをおこない品質について厳しくチェックする必要があります。
まとめ
オリジナル化粧品を製造販売するためには、「化粧品製造販売業許可」および「化粧品製造業許可」にくわえて「薬機法の知識」が必要です。
難しい法律知識や難易度の高い許可申請などを回避して、オリジナル化粧品をプロデュースするなら、OEM製造を検討しましょう。
すでに製造や販売の実績のある企業であれば、充実したサポートであなたのオリジナル化粧品を販売することが可能になるでしょう。