日本で化粧品を販売するとき、製品ラベルに記載する内容は、薬機法で定められています。今回は、ラベル作成までの流れと、ラベルに記載する内容について解説いたします。
ラベル表示とは?その概要
日本で販売されている化粧品には、薬機法第61条に則った表示内容・表示方法で、ラベルの貼付けが義務付けられています。 このラベルは、「正しい情報」を伝えることで、消費者が安心して商品を利用するために必要です。ラベルは、化粧品が直接入っている瓶や箱に貼り付けなければなりません。
第六十一条 化粧品は、その直接の容器又は直接の被包に、次に掲げる事項が記載されていなければならない。ただし、厚生労働省令で別段の定めをしたときは、この限りでない。 一 製造販売業者の氏名又は名称及び住所 二 名称 三 製造番号又は製造記号 四 厚生労働大臣の指定する成分を含有する化粧品にあつては、その成分の名称 五 厚生労働大臣の指定する化粧品にあつては、その使用の期限 六 第四十二条第二項の規定によりその基準が定められた化粧品にあつては、その基準において直接の容器又は直接の被包に記載するように定められた事項 七 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
並行輸入における化粧品ラベルの貼付について
輸入販売する化粧品に貼付けるラベルは、輸入~製造過程のどの時点で行うのが適切でしょうか?また、誰が行うのでしょうか? 並行輸入の流れと合わせて確認しておきましょう。
並行輸入の流れ
並行輸入を行う際の流れは、以下の順で行われます。それぞれなぜ行うか?も一緒に覚えると、考えやすいので、合わせて掲載しておきます。
- 化粧品製造販売業許可申請を、製造事務所所在地の都道府県へ提出 (並行輸入業を行う場合に、ラベルを貼り付けるだけでも許可は必要・製造販売業を行う許可を受けるための申請)
- 化粧品外国製造販売業者届書を独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ提出 (成分確認、効能範囲の確認を受けるための届出)
- 化粧品製造販売届書を、化粧品製造販売業許可申請を提出した都道府県へ提出 (化粧品を販売する品目を明確にするため)
- 税関
- 包装・表示・保管
- 並行輸入化粧品の製造・販売
ラベルはいつ貼り付けるのか?
輸入販売の大まかな流れを確認しましたが、この中のどこでラベルを貼るのでしょうか?
基本的にラベルはどの時点で貼付けでも正解です。 ラベルを付けるタイミングは主に4パターンあります。輸入の際、ラベル貼付けの義務はないですが、通関時に成分説明などが必要となる場合があるので、できるだけ現地で貼り付けてから輸入することをおすすめします。
現地で付ける場合
- 日本でラベルを作成し、現地へ送る。現地でラベルを貼付けて輸入
- 日本からラベルの内容を指示。現地で作成~貼付けを行い輸入
- 現地のメーカーが複数国のラベルを一括して作成していて、ラベル作成の必要がない
日本で付ける場合
- 先に輸入し、日本で輸入業者または販売業者にてラベルを貼付け
ラベルは誰が貼り付けるのか?
ラベルを貼り付ける作業は、誰が行っても構いません。
ラベルを「いつ」貼り付けるのかにより変わってきます。ですが、ラベルの表示内容には、日本での製造販売業者が責任を持つ必要があります。続けてラベルの表示内容についてもご説明しておきます。
義務づけられている表示内容?
商品ラベルの記載内容は、薬機法第61条で定められています。表示内容を確認しておきましょう。
製造販売業者の氏名または名称・所在地
商品ラベルには、「化粧品製造販売業 許可申請」で提出した、名称と所在地を記載します。 名称については、個人で許可を受けたときは、個人名を、法人で許可を受けたときは、法人名を記載てください。 所在地については、「化粧品製造販売業 許可申請」で提出した、所在地を記載します。この所在地は、「総括製造販売責任者がその業務を行う場所」を記載します。 なお、輸入する商品が小さく、貼付けスペースの問題から長い名称が記載出来ない場合は、略称もしくは、商標法によって登録された名称の使用も可能です。これは、薬機法施行規則第二百十三条に定められています。
第二百十三条 令第八十条の規定により都道府県知事が法第十二条第一項又は第二十三条の二第一項の製造販売業の許可の権限に属する事務を行うこととされている場合における法第五十条第一号の規定の適用については、同号中「住所」とあるのは、「医薬品等総括製造販売責任者又は医療機器等総括製造販売責任者がその業務を行う事務所の所在地」とする。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則
製品の名称
「製造販売届書」に記載をした製品名称を記載します。製品名称の記載は、略称を認めていません。正式名称を記載するにあたり、記載スペースの都合なども鑑みた名称をあらかじめ決めておいた方がよいでしょう。
製造番号または製造記号
製造番号または製造記号は、商品に問題が発生したときに、問題の商品を製造した範囲を迅速に特定するために記載しておきます。製造番号の記載内容についての法律はありませんが、問題の範囲特定に必要な情報を記号で網羅しておいた方が、実務上、便利です。
製造番号または製造記号のルール例:MRO012
輸入元業者記号:M/飛行機の便:R/製造年月日(製造年・週):012
1月の第2週に輸入アルファベットの大小文字、記号、数字を番号表として作成し、同じルールで記載しておくと、後に製品回収が発生した場合やお問い合わせの時、迅速に対応できます。また、記号は、反対から読むものもあります。ルール決めは、輸入開始前に取り決めておきましょう。
成分の名称
ラベルには、原則として配合されている全成分を記載する必要があります。詳しい表示ルールは、化粧品の全成分表示の表示方法等についてに定められています。
表示ルール
- 原則、配合されている成分すべてを記載する
- 成分の名称は、日本化粧品工業連合会から発行されている「化粧品の成分表示名称リスト」を利用して記載する
- 記載順序は配合量が多いものから
- 「1%以下の成分」と「着色剤」は順不同でよい
- 配合されている成分に付随しているもので、効能が発揮されないものは未記載でもよい
- 混合されているものは、混合されている成分ごとに記載
- 抽出による成分は、抽出物と溶媒液を別々に記載する。ただし、製品中に溶媒液が残っていない場合は記載しなくてよい
- 香料は、ひとまとめで「香料」と記載してよい
- 小さな容器で、記載を省略したものは、添付文書を別につけなければならない。また、容器の方には添付文書をつけている旨を記載すること
使用期限
使用期限は、以下の場合に記載が必要ですが、それ以外の場合は省略することができます。
- アスコルビン酸、そのエステル、それらの塩類または酵素を含有する化粧品
- 適切な保存条件の元で3年以内に品質や状態が変化する可能性がある場合
使用期限が3年以上の化粧品については、記載を省略することができます。また、小さな容器の場合は、容器ラベルへの記載は省略ができます。
特定の化粧品では、その基準において、記載するよう定められた事項
ここで言う「特定の化粧品」とは、「薬事法第42条第2項」の規定により定められたものです。具体的には2種類あります。
防腐剤や配合量の上限が定められた成分については、成分名と合わせて配合量を記載しなければなりません。
外国特例承認取得者等の氏名等
薬機法第19条の2により承認を得た化粧品について、外国特例承認取得者等の氏名等を記載する。
第十九条の二 厚生労働大臣は、第十四条第一項に規定する医薬品、医薬部外品又は化粧品であつて本邦に輸出されるものにつき、外国においてその製造等をする者から申請があつたときは、品目ごとに、その者が第三項の規定により選任した医薬品、医薬部外品又は化粧品の製造販売業者に製造販売をさせることについての承認を与えることができる。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
まとめ
化粧品を並行輸入する場合のラベリングについて、解説してきました。ポイントは、4つです。
- 並行輸入化粧品には、消費者に安心感を持ってもらうため、ラベルの貼付が義務付けられている
- 税関を通る前に貼付けることをおすすめ
- ラベル発行の責任者は「製造販売業者」にある
- 記載内容に決まりがある
消費者へ安心感を与えるために、間違いなく掲示しましょう。