医療広告ガイドラインとは、厚生労働省によって薬機法、景表法、医療法などの法律と照らし合わせながら定められたガイドラインです。 この医療広告ガイドラインにおいて、広告に治療前・治療後の画像、いわゆる「ビフォーアフター画像」を掲載することは基本的に認められていません。
しかし、全ての場合でビフォーアフター画像を記載してはいけないとい訳ではありません。
本記事では、ビフォーアフターの写真を医療広告に使う方法について説明していきます。
ウェブサイト上の広告が規制の対象に
2018年に医療法と医療広告ガイドラインの改正によって最も大きな変更は、これまで広告として扱われていなかった病院やクリニックのウェブサイトも広告として規制の対象になったという点でしょう。 これにより、Web広告だけでなく、病院やクリニックの情報としてインターネット上で利用者が見ることができるものは全て規制の対象となりました。 さらに公式アカウントによるSNS(TwitterやInstagramなど)だけでなく、病院情報のリンクがある院長や職員のSNS(TwitterやInstagramなど)やブログも規制の対象となっています。 病院やクリニック内で患者さんが自発的に手に取れるパンフレットは規制の対象外となっています。
ビフォーアフター画像は原則、広告に使用できない
医療広告ガイドラインでは、ビフォーアフター画像についても利用者が施術効果に対して謝った認識を持ってしまう可能性があるとして、ウェブサイト上の広告では原則として使用できないことになっています。
Q2-8手術前のみ又は手術後のみの写真を用いて広告することは、可能でしょうか。 A2-8手術の前後の写真と同様、手術前のみ又は手術後のみの写真についても、患者等を誤認させるおそれがある治療効果に関する表現に該当するため、広告できません。
これは、ビフォーアフター画像による虚偽広告・誇大広告の表現を禁止することが目的です。 治療前や治療後「のみ」の画像であっても、「ビフォーアフター」画像と同じ扱いを受け、医療広告ガイドラインによって基本的に広告への使用が認められていません。
薬機法による「ビフォーアフター」画像の規制
「ビフォーアフター」画像の使用は、薬機法の以下の部分を違反しているとされています。
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
このように、薬機法においても「ビフォーアフター」画像は虚偽広告・誇大広告にあたるとされているのです。
虚偽広告となるケース
医療内容において事実とは異なる情報を利用者に提示し、謝った認識を与えるような広告は認められていません。 被写体を変えることは勿論、加工や修正をしたビフォーアフター画像は、この虚偽広告にあたります。 施術後の印象を良くしたいからといって画像を明るくすることや、色味を調整するだけでも虚偽広告と判断されるので注意が必要です。
誇大広告となるケース
事実を誇張して表現することで、見た人が謝った認識するような広告は認められていません。 さらに、この治療を受ければ有利であると誤解してしまう(有利誤認)表現もNGです。 医療広告ガイドラインにおいては次のように示されています。
撮影条件や被写体の状態を変えるなどして撮影した術前術後の写真等をウェブサイトに 掲載しその効果又は有効性を強調することは、患者等を誤認させ、不当に誘引するおそれ があることから、そうした写真等については誇大広告として取り扱う。 また、あたかも効果があるかのように見せるため加工・修正した術前術後の写真等については、虚偽広告に該当する。
出典:医療広告ガイドライン
加工や修正をしていなくても、撮影場所の明るさを変えるなど、誤解を招くようなビフォーアフター画像は広告に使用することができません。 治療の効果は人によって変わるものであるため、全ての人に効果があるといった謝った認識を与える恐れがあるためです。 つまり、利用者への説明が不十分なビフォーアフター画像は広告として不適切なものとみなされる可能性があるのです。
ビフォーアフター画像を使用するためには
ビフォーアフター画像をウェブサイト上の広告に使用するためには、治療効果に関連する広告となるため、広告可能事項の限定解除の要件をみたしながら、詳しい説明分を掲載する必要があります。 次の4つの要件を全て満たす場合にのみ、限定解除が認められます。
① 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること ② 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること ③ 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること ④ 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること
出典:医療広告ガイドライン
さらに、ビフォーアフター画像を使用するときには、その画像についての詳しい説明が必要になります。
ビフォーアフター写真の掲載に必要な、術前又は術後の写真に通 常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な情報を付すことにより 広告が可能である。
詳しい説明の内容は、次のようなものがあります。
- 治療内容
- 治療にかかる費用
- リスク、副作用
- 治療から何日経過したアフター画像なのか
つまり、画像だけを使ったWeb広告には使用できないということになります。 また、広告事項の限定解除はウェブサイト上の広告のみ可能です。 チラシ広告のような広告媒体の場合は、限定解除が認められずビフォーアフター画像を使用することが出来ないため注意が必要です。
複数の治療方法をまとめて説明するのはNG
複数の治療方法がある場合、複数の画像の説明を一つにまとめて記載することは禁止されています。 治療方法が複数ある場合は、治療方法ごとにそれぞれの画像について詳しい説明を記載しなければなりません。
複数のビフォーアフター写真について、術前又は術後の写真に通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な情報を、まとめて付しているものは、広告することはできない。
まとめ
医療広告ガイドラインは、悪質な医療サービスから消費者を守るという目的があります。 ビフォーアフター画像は掲載方法によって虚偽広告扱いとなり、規制の対象となっています。 そのため、ビフォーアフター画像を広告に使用するためには、広告可能事項の限定解除の要件を満たす必要があります。
ビフォーアフター画像を含め、医療広告ガイドラインに違反しない広告制作を心がけましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。