広告制作には言葉選びのインパクトが重要になります。 「最高級」「最高の」「完璧の」などの最上級表現(最高級表現)はインパクトがありますが、最上級表現を安易に医療広告に使用すると、薬機法や景表法に違反する恐れがあります。
本記事では、最上級表現を使いたい時に確認するべき内容を紹介します。 医療広告の制作には、インパクトはあるものの法律に違反していない正しい表現内容を心がけましょう。
「日本初」「No.1」「完璧な」は医療広告には不適切
「日本初」「No.1」「完璧な」などという表現のことを、最上級表現(最高級表現)と呼びます。 最上級表現はインパクトがあり消費者の目を引くため、最上級表現は広告ニーズが高いと考えられています。
しかし、医療広告においてこれらの表記を安易に使うのは不適切とされています。 また、「当院は○○の治療において日本有数の実績を有する病院です」といった他院と比較して優れているような表現も認められていません。
最上級表現の安易な使用は薬機法によりNG
客観的な裏付け・社会的根拠が無いまま最上級表現を使用すると、社会的信用を失うだけでなく、薬機法や景表法などの法律に違反する可能性があります。 薬機法66条において、医薬品等の効能効果について虚偽・誇大な広告は禁止されています。 これは、最上級表現は消費者に誤解を招く表現とされているためです。
最上級表現は比較優良広告に該当する
医療広告ガイドラインにおいても、最上級表現の安易な使用は不適切とされています。 最上級表現は医療広告ガイドラインのNG事項の1つである「比較優良広告」にあたります。 仮に、最上級表現の内容が事実であっても他の病院やクリニックなどの医療機関よりも優良である旨を記載することはNGです。 これは、患者さんが医療を適切に選択することを妨害することが無いようにするという理由から定められています。
ただ、根拠を示して客観的に実証していれば「最新の治療法」「最新の医療機器」などといった表現は可能になります。
「最新の治療法」や「最新の医療機器」であることが、医学的、社会的な常識の範囲で、事実と認められるものであれば、必ずしも禁止される表現ではありません。ただし、求められれば内容に係る裏付けとなる根拠を示し、客観的に実証できる必要があります。登場してから何年までを最新と認めるか等の基準を示すことは困難ですが、より新しい治療法や医療機器が定着したと認められる時点においても、「最新」との表現を 使用することは、虚偽広告や誇大広告に該当するおそれがあります。また、より新しい治療法や医療機器が存在しない場合でも、十数年前のものである 場合等、常識的な判断から「最新」との表現が不適切な場合があり、誇大広告等に該当するおそれがあります。
出典:医療広告ガイドラインに関するQ&Aより引用
最上級表現の安易な使用は景表法に違反する恐れも
景表法(景品表示法)とは、「不当表示」や「不当景品」を規制するための法律です。 消費者から悪質な商品やサービスから守るために誇張して表現された消費や過大な景品の提供を禁止しています。 この景表法により、最上級表現は消費者に謝った認識を与える恐れがあることがら不適切な表示とされています。
最上級表現は「優良誤認表示」に該当する
最上級表現は「優良誤認表示」にあてはまるとされています。優良誤認表示とは、商品やサービスの品質・規格などの「不当な表示」にあたる行為です。 次のような広告表現は、優良誤認表示に該当します。
- 実際よりも良いものであると示す
- 競合他社の商品やサービスよりも優れていると示す
誇張・誇大が社会一般に許容される程度を越えるものであるか否かは、当該表示を誤認して顧客が誘引されるか否かで判断され、その誤認がなければ顧客が誘引されることが通常ないであろうと認められる程度に達する誇大表示であれば「著しく優良であると一般消費者に誤認される」表示に当たります。また、優良誤認表示に当たるか否かは、商品の性質、一般消費者の知識水準、取引の実態、表示 の方法、表示の対象となる内容などを基に、表示全体から判断されます。
出典:事例で分かる景品表示法
優良誤認表示とみなされる場合
優良誤認表示が疑わる場合、消費者庁から表示を行った事業者に対し表示の裏付けとなる客観的根拠を示す資料の提出が求められます。事業者が資料を提出しない場合、資料を提出したとしても表示の裏付けとなる客観的根拠と認められない場合は、その広告は優良誤認表示とみなされます。
合理的な根拠がない効果・性能の 表示は、優良誤認表示とみなされます。消費者庁は優良誤認表示に当たるかどうかを判断するため 必要があると認めるときは、表示の裏付けとなる合理的な根拠 を示す資料の提出を事業者に求めることができます。その結果、当該資料が提出されないときは不当表示とみなされます。
出典:事例で分かる景品表示法
健康食品の場合は健康増進法違反となる恐れも
医薬品、化粧品だけでなく、健康食品の広告においても最上級表現の安易な使用はNGです。 その健康食品を使用しただけでダイエットに成功したり、病気が治るかのような広告表示は虚偽誇大表示と呼ばれ、健康増進法により禁止されています。 最上級表現は、こうした虚偽誇大表示とされる表示にあてはまるとされています。 また、景表法においても、健康食品の最上級表現は優良誤認表示とみなされる可能性があります。
どのような表現が最上級表現になる?
医療広告において、どのような最上級表現に気を付ける必要があるのでしょうか?まずは最上級表現にはどのような種類があるかを把握しておきましょう。 最上級表現には主に次の3つに分けられます。
- 比較系
- 最上系
- 保証系
それぞれの最上級表現について、具体的なワードを確認していきましょう。
比較系
比較系は、「No.1」など、他と比較して優れているとした表現のことです。 基本的には医療広告に使用が認められていませんが、「世界一高い山、エベレストは・・」などといった、事実に基づいた表現は表記OKとなります。 しかし、「人気No.1」など根拠のない表記は誇張表現とされる可能性があるため、医療広告での使用は不適切とされています。
具体的例
- 日本初
- トップクラス
- ○○のエース
- No1
最上系
最上系とは、「最高の」「最も」といった最上を表す表現です。 こうした最上系表現も、根拠がない場合は医療広告として使用できませんが、明確な根拠を記載できる場合は使用が認められます。
具体的例
- 最高峰の
- 無類の
- ○○の王様
- 代表的な
保証系
保証系は、「100%」「必ず」などの「絶対」を保証するような表現のことです。 そもそも、「絶対」を保証するようなものは世の中にほぼ存在しないと考えられています。このため医療広告への使用は不適切とされています。
具体的な例
- 絶対
- 100%
- 必ず
- 完璧
「客観的な根拠」とは?
最上級表現を使う際には、客観的な裏付け・社会的根拠も一緒に掲載することが必要です。 では、客観的な根拠とはどんなものを指すのでしょうか? 客観的な根拠の具体的な内容は次のようなものが挙げられます。
- 試験や調査による客観的結果
- 専門家、専門家団体や専門機関の見解または学術的文献
試験や調査による客観的結果
客観的な根拠の1つとして、試験や調査による客観的結果が挙げられます。 この場合の試験や調査は、関連する学術界や産業界で認められている方法や、複数の専門家によって認められた方法での実施が求められます。
専門家、専門家団体や専門機関の見解または学術的文献
専門家や専門機関の見解や学術的文献がある場合も、客観的な根拠として認められます。 これらの基準は、「専門家等が客観的に評価した見解または学術的文献で、その専門分野に一般的に認められているもの」とされています。
また、自社で独自に調査した結果を根拠にするという方法もあります。 この場合は「自社調べ」である旨を表記し、調査内容や手段、対象、期間等を詳細に掲載することが、調査の信ぴょう性を持たせるために求められています。
まとめ
医療広告には社会的信頼が必要です。 安易な最上級表現の使用は薬機法や景表法などの法律に違反する恐れがあります。 医療広告の制作には、法律に違反しない正しい表現で消費者を引き付けるような広告制作を心がけましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。