医療機器は、製造や販売について薬機法で規制が設けられており、どのようなものが医療機器にあてはまるかも薬機法によって決められています。 また、医療機器の広告も、医薬品と同じように医療広告として薬機法の規制の対象となります。
医療機器の広告にはどのような規制が設けられているのでしょうか? 本記事では、医療機器の広告についての注意点について解説していきます。
医療機器と薬機法
医療機器とは、薬機法によって「人もしくは動物の疾病の診断、治療もしくは予防に使用されること、または人もしくは動物の身体の構造もしくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等」と定められています。 つまり、人や動物の病気に対して使われるもの、人や動物の身体に影響を及ぼす物は全て医療機器にあてはまります。
身近にあるこんな物も医療機器?
医療機器には、小物類から身や大型の装置まで様々なものがあります。 具体的な医療機器としては次のようなものがあります。
- メス
- ピンセット
- ペースメーカー
- CT装置
- レントゲン装置
- 放射線治療装置
家の中にもある身近な医療機器には次のようなものがあります。
- コンタクトレンズ(カラコン含む)
- 救急絆創膏
- ガーゼ
- 体温計
- 血圧計
- 家庭用マッサージ器
カラコンも医療機器に該当する
以前、カラーコンタクトレンズ(カラコン)による失明の危険性が問題視されました。 カラコンを化粧品と同じような扱いと思っている人もいますが、正確には医療機器にあたります。このため、カラコンも、視力補正用のコンタクトレンズと同じように薬機法が適用されます。
カラコンの製造や輸入については厚生労働大臣の承認、販売については都道府県知事の販売業の許可、販売管理者の設置が義務付けられています。
医療機器の広告も薬機法による規制の対象となる
薬機法によって、広告は次の3つの要件を全て満たすものとされています。
- 顧客を誘引する意図が明確であること(誘引性)
- 特定の(医薬品等)の商品名が明らかにされていること(特定性)
- 一般人が認知できる状態であること(認知性)
医薬品や医療機器の広告については、薬機法や医薬品等適正広告基準によって規制が設けられています。 医薬品用適正広告基準とは、医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品の広告表現が虚偽や誇大なものにならないようにするための基準です。
医療機器の名称には表現の範囲が決まっている
医療機器は薬機法によって認証を受けた販売名か、一般的な名称以外の名称で表現することは禁止されています。
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145 号。以下「法」という。) 第14条又は第23条の2の5若しくは第23条の25の規定に基づく承認並びに法第 23 条の2の23の規定に基づく認証(以下「承認等」という。)を受けた名称又は一般的名称以外の名称を、別に定める場合を除き使用してはならない。
出典:医薬品等適正広告基準
医療機器の製造方法を広告に使用する場合の規制
医療機器の製造方法について、広告に使用することが認められない表現方法があります。 具体的な内容については、次のようなものがあります。
- 実際の製造方法とは異なる表現
- 優秀性について誤った認識を与える可能性がある表現
製造方法の優秀性とは、「最高の技術」といった、最大級表現を指します。 製造方法について、誤解を与えないような表現を心がけましょう。 また、医療機器や製造方法の特許について虚偽の広告表現は禁止されているので注意が必要です。
医療機器の効能効果についての広告表現に関する規制
医療機器の効能効果について、はっきり記載しているか暗示的かは関係なく承認を受けた効能効果の範囲を超えることはNGとなります。仮に承認されていない効能効果が事実であっても、広告表現として使用することはできません。
承認等を要する医薬品等の効能効果又は性能(以下「効能効果等」という。) についての表現は、明示的又は暗示的であるか否かにかかわらず承認等を受けた効能効果等の範囲をこえてはならない。
出典:医薬品等適正広告基準
医療機器の安全性についての広告表現に関する規制
医療機器の広告に、安全性を保証する内容を使用することは禁止されています。
医薬品等の効能効果等又は安全性について、具体的効能効果等又は安全 性を摘示して、それが確実である保証をするような表現をしてはならない。
医薬品等の効能効果等又は安全性について、最大級の表現又はこれに類する表現をしてはならない。
出典:医薬品等適正広告基準
安全性を保証する内容とは、次のようなものが挙げられます。
- 安全性が高い
- 安心してお使いください
- 最も安全ですといった最大級表現
一般向けに広告できない医療機器について
医療機器には、医師等の医薬関係者のみが使用できるものがあります。 こうした医療機器の広告を、一般の人々に向けて掲載することは認められていません。広告を見た一般の人がその医療機器を使用した場合、危害が発生する可能性があるためです。
(1)医師若しくは歯科医師が自ら使用し、又はこれらの者の処方せん若しくは指示によって使用することを目的として供給される医薬品及び再生医療等製品については、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告を行ってはならない。 (2)医師、歯科医師、はり師等医療関係者が自ら使用することを目的として供給される医療機器で、一般人が使用するおそれのないものを除き、一般人が使用した場合に保健衛生上の危害が発生するおそれのあるものについても(1)と同様にするものとする。
出典:医薬品等適正広告基準
また、医薬関係者を対象とした広告には次のようなものがあります。
- 医薬関係者向けの雑誌や新聞
- MR(医薬情報担当者:Medical Representativeの略。)による説明
- ダイレクトメール
- 文献や説明書
- 医薬関係者が参加する集会、説明会
他社製品の誹謗中傷は広告としてNG
医療機器の広告として、効能効果や安全性について他社製品を誹謗中傷するような広告表現はNGです。 また、自社製品との比較広告を行う場合は、自社製品の範囲で行い、対象となる製品の名称が分かりやすく記載されている場合に限られています。 このとき、表示内容が説明不足とならないように注意が必要です。
専門家の推薦はNG
医療機器の広告について、医薬関係者等の専門家が推薦しているような表現は認められません。 専門家による推薦は一般の人々に与える影響が大きいため、仮に事実であっても不適切な広告となります。 また、専門家による推薦が事実でない場合は虚偽の広告表現に該当します。 ちなみに美容師による化粧品の使用方法の実演は認められています。
医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所、薬局、その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は学会を含む 団体が指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告を行ってはならない。ただし、公衆衛生の維持増進のため公務所又はこれに準ずるものが指定等を している事実を広告することが必要な場合等特別の場合はこの限りでない。
出典:医薬品等適正広告基準
まとめ
医療機器には、身近にあるものから医療機関の設備まで様々なものが含まれます。 医療機器の広告制作も、医薬品の広告と同じように薬機法や医薬品等適正広告基準に違反しないように注意しなければなりません。 広告の内容が、医療機器広告として不適切な名称や効果効能を表現したものでないかしっかりチェックしましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。