胸の大きさは、多くの女性にとって悩みの種となっています。 バストの悩みがあっても相談しにくい、という女性は多く、販売担当者と直接やり取りしなくて良い通信販売はとても有効といえるでしょう。
化粧品の中にはバストの悩み解消目的で販売している製品も多数存在します。 また、バストアップサプリと呼ばれる健康食品も数多く販売されています。 販売するためには、広告表現として使用できる範囲をしっかりと理解しておく必要があります。
本記事では、バストアップサプリを標榜する化粧品や健康食品の広告表示が、薬機法においてどこまで認められているのか実際の薬機法違反となった事例を交えて解説していきます。
化粧品で「バストアップ」表記はNG
まず、化粧品の場合を考えていきます。 単に「バストケア」であれば、あくまでも「バスト」は使用部位を表すものとして標榜できる範囲と思われます。 しかし、「バストアップ」「バストを上向きに」など、大きさや形、色に対して何かしらの作用があるかのような表現は認められていません。 化粧品の広告に掲載できる効能効果の範囲は、薬機法によって56項目に定められています。 バストも肌の一部分として、あくまで肌への効果の範囲に留めるように気を付けましょう。
肌への効能効果の範囲
- (汚れを落とすことにより)皮膚を清浄にする
- (洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)
- 肌を整える
- 肌のキメを整える
- 皮膚をすこやかに保つ
- 肌荒れを防ぐ
- 肌をひきしめる
- 皮膚にうるおいを与える
- 皮膚の水分、油分を補い保つ
- 皮膚の柔軟性を保つ
- 皮膚を保護する
- 皮膚の乾燥を防ぐ
- 皮膚をやわらげる
- 肌にハリを与える
- 肌にツヤを与える
- 肌を滑らかにする
- ひげを剃りやすくする
- ひげそり後の肌を整える
- アセモを防ぐ(打粉)
- 日やけを防ぐ
- 日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ
- 乾燥による小じわを目立たなくする
化粧品の効能の範囲の改正についてより抜粋
つまり、「バストアップ」の表現は化粧品の効能効果の範囲を超えているため、医薬品的な効能効果を表現しているということになります。 化粧品の効能効果としては、「ハリのある魅力的なバストへ」程度の表現に留めるようにしましょう。
化粧品での不適切表現となった事例
東京都福祉保健局のホームページより、「薬事法に関わる不適表示・広告事例集」が公開されており、次のような事例が挙げられています。
- 「貧弱バストがふっくら豊かに!?」と表示されたダイレクトメールが、基礎化粧品、化粧品として表現できる効能効果の範囲を超えているとされた事例
- 「肌のリフト力に弾みをつけます。肌のバネに弾みをつけ、上へと引き上げるリフト力」といった内容が雑誌に広告表示され、バストアップを暗示しており化粧品の効能効果の範囲を超えているとされた事例
これらの資料を参考にしながら、薬機法の規制対象とならないよう注意しましょう。
健康食品では医薬品的な効能効果の表示はNG
では、バストアップのサプリメントはどのような広告表現ならOKなのでしょうか? 結論からいうと、健康食品では「バストアップ効果」はそもそも標榜することが認められていません。
薬機法の中では、健康食品が対象であることは明記されていませんが、健康食品が医薬品的な効能効果を表現している場合は、薬機法68条に違反することになります。 どのような表現が医薬品的な効能効果であるかについては、消費者庁が出している「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」に示されています。
食品の広告に使用できない表現
- 疾病の治療または予防を目的とする効果効能
- 身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効果
(ただし、栄養補給、健康維持等に関する表現はこの限りではない)
また、医薬品的な効能効果の暗示となる表現もNGとなります。
- 名称またはキャッチフレーズよりみて暗示するもの
- 含有成分の表示及び説明よりみて暗示するもの
- 製法の説明よりみて暗示するもの
- 紀元、由来等の説明よりみて暗示するもの
- 新聞、雑誌等の記事、医師、学者等の談話、学説、経験談などを引用または掲載することにより暗示するもの
サプリメントはどこまで表示できる?
サプリメントは「健康食品」に該当します。
バストアップ(豊胸)は、薬機法により定められている医薬品的な効能効果のうち、「身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効果」に該当します。 そのため、健康食品においてバストアップという表現は薬機法違反にあたります。
健康食品で商品の魅力を標榜する場合、次のような表現ならOKとなります。
- 女子力アップ
- ボディケア
- インナーケアで身体の中から魅力的に
アフィリエイター、インフルエンサーも薬機法違反の対象に
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
薬機法の対象となるのは、医療広告に関わる全ての人です。そのため、化粧品や健康食品の販売会社だけでなく、商品の広告を行っている広告主、広告代理店、アフィリエイター、インフルエンサーも対象となる可能性があります。 以前、健康食品会社の社員、広告代理店社員が薬機法違反で逮捕された事例もあります。 また、薬機法違反にあたると、課徴金の対象にもなります。
薬機法・景表法違反となった事例
薬機法違反にあたる標品が、課徴金のある景品表示法違反で取り締まりを受けた事例があります。
「ジュエルアップ」、「モテアンジュ」の事例
2021年11月、株式会社アクガレージ及びアシスト株式会社の「ジュエルアップ」と「モテアンジュ」が、あたかも、本件商品を摂取することで豊胸効果が得られるかのような表示をしていたとして規制対象となりました。 Instagram内のアカウントで、「バストアップサプリ」等の記載をしていたとのことです。 また、アフェリエイトサイトでモデルが豊胸に成功したと思われるような表現をしていたようです。 これらの表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、両社とも資料を提出しなかったと報じられています。
「pinky plus」の事例
2019年3月、株式会社GLORIAの「pinky plus」が、商品に含まれる成分により、誰でも簡単に豊胸効果が得られるかのように示す表示をしていたとして規制対象となりました。 また、「TwitterやFacebookで話題のバストアップサプリ!」等と記載されていると報じられました。 同社はこれらの表示の裏付けとなる資料を提出したものの、合理的な根拠を示しているとは認められなかったようです。結果として、同社には4598万円の支払いが命じられました。
「B-UP」の事例
2017年3月、株式会社ミーロードの「B-UP」があたかも豊胸効果と痩身効果が得られるかのような表示をしているとして規制対象となりました。 「バストUPとスリムUPを同時に叶えるスタイルUPサプリの決定版!」等の記載があったとのことです。 同社は、これらの表示の裏付けとなる資料を提出したものの、合理的な根拠を示しているとは認められませんでした。結果として、同社は課徴金納付命令によって、2430万円の支払いを命じられました。
バストアップサプリで健康被害が発生した事例も
バストアップサプリの安全性について問題となる事例も存在し、日本医師会から副作用などについて注意喚起が出ています。 「プエラリア・ミリフィカ」という成分を原材料に含むサプリメント等の健康食品についての副作用が問題となりました。 この成分を摂取し続けると、ホルモンバランスが崩れ、健康被害が出ている事例が発生したのです。 これにより、摂取量について注意喚起が出されています。
バストアップサプリの広告制作や販売に関わる人は、薬機法・景表法違反や健康被害など、リスクが大きいものとなるため、注意が必要です。
まとめ
バストについてコンプレックスを持っている女性は多く、サプリメントで何とかしたいと考える人もいるのが現状です。 ですが、バストの悩みは化粧品や健康食品で簡単に解決できるものではないことも事実です。
バストに関する化粧品広告に関わる際は、肌への効果範囲に留める表現方法を使いましょう。 また、サプリメントなどの健康食品では特定部位の増強や増進効果の標榜はNGとなることも知っておきましょう。 法的リスクが大きいものとなるので、規制対象となった表現や成分については具体的な事例をしっかり把握しておきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。