薬機法が関係する広告を制作していると、表現方法に対して不安になることがありますよね。 化粧品や医薬部外品においての「浸透」表現もそのひとつ。
今回は、化粧品と医薬部外品における「浸透」表現について、詳しく解説していきます。
化粧品と医薬部外品における薬機法上の「浸透」表現
広告において、「浸透するのは角質層まで」と聞いたことがある方は多いのではないでしょうか? 化粧品の「浸透」の表現については、薬機法や化粧品等の適正広告ガイドラインでルールが決められています。
スキンケア商品における「角質層までの浸透」は化粧品における決まりとなり、医薬部外品では異なるのが特徴です。 医薬部外品においては、厚生労働省に認められた範囲であれば、その部位までの浸透を表すことができるのです。
浸透に関する表現は肌に関する表現が多いですが、肌だけではなく髪の毛にも適応されるため、ヘアケア商品などの広告では気をつけましょう。
化粧品で「浸透」表現はどこまでOK?
結論としては、化粧品の場合は「角質層まで」です。「浸透」の定義を紹介します。
化粧品における浸透表現の定義
薬機法における浸透の表現については、薬機法の内容を解説している医薬品等適正広告基準に以下の通りの定められています。
(5)効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止 医薬品等の効能効果等又は安全性について、具体的効能効果等又は安全性を摘示して、それが確実である保証をするような表現をしてはならない。
出典:医薬品等適正広告基準
2020年に改正となった化粧品等の適正広告ガイドラインで定められている浸透の表現については以下のようになっています。
浸透等の表現は、化粧品の効能効果の発現が確実であるかのような暗示、及び効能効果の範囲を逸脱した効果を暗示するおそれがあるため、原則として行わないこと。 ただし、作用部位が角質層であることを明記した場合であって、かつ、広告全体の印象から効能効果の保証や効能効果の範囲の逸脱に該当するものでない場合に限って表現することができる。
適正広告ガイドラインでも「作用部位が角質層」と、角質層まで浸透すると表現した場合に限って浸透の表現を使うことができると定められています。
「浸透」表現のOK例とNG例
化粧品における肌や髪への浸透の表現の例を見ていきましょう。
① 「肌への浸透」等の表現 「肌への浸透」の表現は「角質層」の範囲内であること。 [表現できる例] 「角質層へ浸透」、「角質層のすみずみへ」 [表現できない例] 「肌へ浸透」(「角質層」の範囲内であることが明記されていない) 「肌内部のいくつもの層* *角質層」、「肌*の奥深く *角質層」 (注釈で「角質層」とあっても「肌内部」「肌の奥深く」という表現は、角質層の範囲 を越えて浸透する印象を与えるため不適切) 「肌の内側(角質層)から・・・」(医薬品的) ② 「毛髪への浸透」等の表現 「毛髪への浸透」表現は、角化した毛髪部分の範囲内で行うこと。 [表現できる例] 「髪の内部へ浸透」、「髪の芯まで浸透」 [表現できない例] 「傷んだ髪へ浸透して健康な髪へ甦ります」(回復的) 【関連法令等】 医薬品等適正広告基準 第4の3(5)
日本化粧品工業連合会が独自機関として設置した化粧品広告審査会においても、浸透の表現が話題に上がっており、表現が指摘されたこともありました。以下が広告審査会において指摘された内容です。
角質層への浸透表現
- 媒体 雑誌広告
- 製品 スキンケア類
- 指摘事項 「肌内部のいくつもの層* 角質層」、「肌の奥深く *角質層」
- 内容説明 化粧品成分の肌への浸透表現については、浸透部位が角質層の範囲内である場合 は認められています。しかし、「肌内部」、「肌の奥深く」という表現は、例え注釈で「角質層」である旨の説明があっても、角質層の範囲を越えて浸透するか のような印象を与えるため不適切です。
角質層までと記載してあっても「肌内部」や「肌の奥深く」と表現していることで、広告審査会の話題に上がったことが分かります。
浸透表現の注意点
化粧品の広告で、浸透の表現をするさいの注意点は以下の3つです。
- 「肌への浸透(角質層まで)」「角質層まで浸透」と記載し、肌の奥へ浸透するような表現にしない
- 打ち消し表示をする
- 画像を用いた表現にも注意する
※を使って、「肌へ浸透 ※角質層まで」と角質層まで浸透することを別で伝える場合には、必ず※を忘れずに使うようにしましょう。
NG表現とされている「肌の奥深く」「肌内部に浸透」という表現は、角質層よりもっと奥へと浸透するようなイメージを持つおそれがあります。
また、「肌内部のいくつもの層」という言い方に関しても、角質層だけではなく、その奥にある層にも浸透するような表現になっています。これらの表現が、※で打ち消し表示をしても使えない表現とされている理由がわかりますね。
画像を用いて「角質層まで浸透」を説明する場合、矢印を使って「ここまで浸透」と角質層までの浸透であることを表現するとわかりやすいですが、その矢印が角質層までではなく、その下の顆粒層にかかっている場合には顆粒層まで浸透するような印象になるので、矢印の位置にも注意しましょう。
医薬部外品で「浸透」表現はどこまでOK?
医薬部外品については、承認された範囲であればその部位まで浸透することを表現できます。医薬部外品は薬用化粧品とも呼ばれており、「〜を防ぐ」と謳うことができるのが特徴です。
「真皮まで浸透してメラニンの生成を抑え、シミ・ソバカスを予防する」という医薬部外品の作用が、厚生労働省にて認められているのであればその事実を書くことができます。承認された事実以外にも化粧品と同じく謳える効能効果が決められており、化粧品の効能効果に「ニキビを防ぐ」が加わったものが医薬部外品となっています。
医薬部外品にはどんなものがある?
医薬部外品は、化粧品と医薬品の中間に位置しており、有効成分が入っているものです。医薬部外品は、薬用化粧品を含む以下の15種類になります。
- 吐き気やその他の不快感防止のための口中清涼剤
- わきが・汗臭用の腋臭防止剤
- あせも・かぶれ用のてんか粉類
- 育毛剤(養毛剤)
- 脱毛するための除毛剤
- 染毛剤
- パーマネント・ウェーブ剤
- ガーゼや綿などの衛生綿類
- 薬用歯みがき類
- ハエや蚊避けを目的とした忌避剤
- 殺虫剤
- 浴用剤
- 薬用化粧品
- 殺そ剤
- コンタクトレンズ用消毒剤
これら15種類の医薬部外品は、広告を作る際に認められた範囲で効能効果を謳うこと、「〜を防止する」を謳うことができます。
まとめ
化粧品と医薬部外品の「浸透」表現は、違いがあるのでしっかり覚えておきましょう。
広告を制作する際はぜひ参考にしてください。