月に6,500万人が利用しているYouTubeにも、医療機関の広告を出すことができます。 しかし、YouTubeの医療広告でも薬機法が関係する場合があるのです。
そこで、YouTubeにおける医療広告について、気をつけるべき薬機法についてご紹介します。
YouTubeの広告ポリシーとYouTubeの動き
YouTubeにおける広告ポリシー内で、広告として出せないカテゴリは以下のものになります。
禁止カテゴリ 誇張表現や不正確な表現 ×商品やサービスについて誇張した表現や虚偽の表現を含むアセット、またはユーザーの誤解を招くようなアセット 例:
- お金や短期間での成功に関する虚偽の表現(例: 「一攫千金」の方法を謳う広告など)
- 疾患の治療に関する虚偽の表現や誇張表現
攻撃的な表現 ×攻撃的または不適切な言葉を使用するアセット 例:
- ユーザーに不快な思いをさせる可能性がある、わいせつまたは攻撃的な表現を含むアセット
- 制度的な差別に結び付くような、個人または集団の排斥を促し、差別を助長し、誹謗している中傷的な言葉
よくない出来事または画像 ×精神的な苦痛、不安感、不快感、嫌悪感を与えるコンテンツや、負傷、死、衰弱に関連し恐怖を感じさせるコンテンツを含むアセット 例:
- 身体的危害につながったり、模倣を助長したりするような危険行為(危険なチャレンジなど)
- 過度に残酷またはリアルな、ドラマ化されたコンテンツやアニメーション コンテンツ
- 人々が涙を流したり、嘆き悲しんだり、泣き叫んだりしている様子を表している葬儀
- 故意に恐怖心をあおる目的で作成された動画や、悲惨な事故や自然災害の映像を含む動画(シミュレーションされたコンテンツや実際のコンテンツに適用されます)
不適切なコンテンツ ×特定の体の部位や健康状態に焦点を当てたアセット 例:
- 血液、臓腑、血のり、体液、虫歯が表示されている医療手術や歯科手術
- 身体部位の強調(例: 腹部の脂肪の拡大表示)
- 身体症状(例: 体液や発疹)の表示
×ヌードが含まれるアセット、または際どいトピックや性的内容を示唆するトピックを含むアセット 例:
- 広告の大部分がヌードや性的な内容に焦点を当てているアダルト コンテンツの宣伝
- 性的に露骨な画像や言葉を使用した出会い系の広告
YouTube マストヘッド コンテンツ要件 YouTube マストヘッド広告は、YouTube トップページの最上部に表示される広告です。マストヘッド広告は、Google が広告主様にご提供している中で最も視認性の高いプレースメントです。ユーザーに高品質な広告エクスペリエンスを提供するため、YouTube マストヘッド広告は、Google 広告ポリシーと YouTube 広告の要件をすべて満たしている必要があります。
禁止カテゴリ
ギャンブル ×ギャンブル関連のコンテンツ(オフラインのギャンブル、オンラインのギャンブル、カジノ以外のオンライン ゲーム、ソーシャル カジノゲームなど)の描写や言及を含むアセット
選挙や政治に関するコンテンツ ×選挙や政治に関係するアセット
アルコール ×アルコール関連のコンテンツの描写や言及を含むアセット(アルコールの販売を促進する広告、アルコール飲料に関するブランディング広告や情報広告など)
処方薬に関連するキーワード ×処方薬に関連するキーワードの描写や言及を含むアセット
出典:YouTube 広告の要件 – Google 広告ポリシー ヘルプ
以下の内容の広告は、制限付きで許可されます。
- ダイエット・脱毛・皮膚疾患・その他の健康状態に関する広告で、画像が不快でないもの
- 水着やスパトリートメントなどの商品やサービスでコンテンツが露骨に性的なものでないもの
YouTubeでは薬機法違反の広告を削除する動きがある
2019年にGoogleがYouTubeを買収してから、YouTube広告はGoogleの広告掲載ポリシーとYouTube広告の要件を満たしたものだけが流れるようになりました。しかし、薬機法に違反している広告などが後を立たず、2020年6月以降に約55万件をさらに削除したと発表されているのです。審査が通った後に広告内容を変え、違反表現している広告があることを示しており、薬機法違反などの違反広告に対しYouTubeが動いています。 その背景にはYouTubeの強い影響力が関係していると言えるでしょう。
YouTubeは若い方を中心に、10〜60代の全ての年代の方に人気がある媒体になります。 「商品の購入につながったデジタル媒体は何か?」と10~60代の男女500人に調査した結果では、30%の方々がYouTubeと回答しています。YouTubeで流れる広告によって30%の方々が商品を購入しているのです。
影響力があるYouTubeだからこそ違反広告を削除する動きがあり、YouTuberの方は薬機法を守ってPRをする必要があると言えます。
医療広告でも薬機法は守る必要がある
YouTubeに医療広告を出すさいにも薬機法を守る必要があります。医療広告だけではなく、医療機関のアカウントを作って投稿をするさいには、ハッシュタグや投稿内容にも注意が必要です。 医療広告が薬機法で該当するのは、以下の第66条と第68条です。
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
第六十八条 何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
第66条は、誇大広告を禁止する旨を、第68条は承認を得ていない医薬品・医療機器・再生医療等機器において、効能効果や性能を謳うことを禁止する旨を記載しています。 第66条と第68条は、医療機関で健康食品を扱う際に関係してきます。
サプリや健康食品を扱うときに薬機法が関係してくる
サプリを含む健康食品は、「食品」に分類されるので、直接薬機法は関係しません。しかし、その健康食品において効能効果など医薬品と消費者が間違うような表示をすると、薬機法違反となり薬機法が関わってくるのです。
また、医薬品にしか使えない成分を使った場合にも薬機法違反となります。 医薬品と間違うような表示をすると、健康食品は「承認を得ていない医薬品」という扱いとなり薬機法第66条、第68条に違反となり、誇大広告違反にも該当するのです。
医療機関において、健康食品を広告上で紹介する際には気をつけましょう。
医療広告において医療広告ガイドラインが重要
医療広告を出す際に、薬機法の他に医療広告ガイドラインが重要になります。このガイドラインはインターネットなどの全ての医療広告を対象としたガイドラインとなっています。医療広告ガイドラインにおいて、抑えておくべきポイントをご紹介します。
広告の定義と規制の対象
医療広告ガイドラインにおける広告の定義は、以下の2つを満たしたときとされています。
①患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性) ②医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可 能であること(特定性)
出典:医療広告ガイドライン
また、上記の広告の定義が適応されるのは、広告を出す医療機関だけではありません。 以下のように、医療広告ガイドラインでは示されています。
法第6条の5第1項において「何人も、医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して、文書その他いかなる方法によるを問わず、広告その他の医療を受ける者を誘引する為の手段 としての表示(以下この節において単に「広告」という。)をする場合には、虚偽の広告をしてはならない」とあるように、医師若しくは歯科医師又は病院等の医療機関だけではなく、マスコミ、広告代理店、アフィリエイター(閲覧した人を誘引することを目的としてブログ等で紹介し、 その成果に応じて報酬が支払われる広告を行う者をいう。以下同じ。)、患者又は一般人等、何 人も広告規制の対象とされるものである。
また、日本国内向けの広告であれば、外国人や海外の事業者等による広告(海外から発送され るダイレクトメールやEメール等)も規制の対象である。
出典:医療広告ガイドライン
アフィリエイターやライターもその範囲に含まれるので、特に気をつけなければいけません。
広告の規制の対象
医療広告ガイドラインにおいて、規制の対象は以下の媒体とされています。
ア チラシ、パンフレットその他これらに類似する物によるもの(ダイレクトメール、ファクシミ リ等によるものを含む。) イ ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む。)、ネオ ンサイン、アドバルーンその他これらに類似する物によるもの
ウ 新聞紙、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備による放送を含む。)、映写又は電光 によるもの エ 情報処理の用に供する機器によるもの(Eメール、インターネット上の広告等) オ 不特定多数の者への説明会、相談会、キャッチセールス等において使用するスライド、ビデオ又は口頭で行われる演述によるもの
出典:医療広告ガイドライン
明確にガイドライン内にSNSの項目はありませんが、(エ)の項目にインターネット上の広告と定められているので、SNSも含まれていると考えられています。そのため、Instagramの医療広告もインターネット上の広告に当てはまるため、医療広告ガイドラインを守る必要があるのです。
医療広告ガイドラインで定められている内容とは?
医療広告ガイドラインにおいて、定められている内容をご紹介します。 医療広告ガイドラインは様々な項目が細かく定められていおり、ガイドラインの内容を守って広告を出す必要があります。
1. 患者の体験談
患者の体験談を載せることはNGとなります。患者自身の感じたことであっても広告に体験談を載せるのは禁止されているのです。医療機関から体験談を書いた見返りがある場合にもNGとなります。 しかし、見返りなく患者自ら個人的に書き込む口コミなどは例外となります。
2. ビフォーアフターの写真
ビフォーアフターの写真だけを載せることは禁止されています。しかし、絶対ビフォーアフターを使ってはいけないという訳ではありません。以下のような情報を添えて掲載するのはOKとなるのです。
- 治療内容
- 費用
- 治療にかかる主なリスク
- 副作用など
ビフォーアフターの写真については美容外科でのビフォーアフターの影響が大きく、加工されたりなど違反広告が多いため、このように変わりました。
3. 内容が虚偽・大
医療広告ガイドラインでは、虚偽・誇大に当たる内容を禁止しています。虚偽の具体例がガイドラインに載っています。
・ 絶対安全な手術です! ・ 「どんなに難しい症例でも必ず成功します」 ・ 厚生労働省の認可した○○専門医 ・ 加工・修正した術前術後の写真等の掲載 ・ 「一日で全ての治療が終了します」(治療後の定期的な処置等が必要な場合) ・「○%の満足度」(根拠・調査方法の提示がないもの)
出典:医療広告ガイドライン
誇大な広告は以下のような表現をしたものです。
・ 知事の許可を取得した病院です! ・ 医師数○名(○年○月現在) ・ (美容外科の自由診療の際の費用として)顔面の○○術1カ所○○円 ・ 「○○学会認定医」(活動実態のない団体による認定) ・ 「○○協会認定施設」(活動実態のない団体による認定) ・ 「○○センター」(医療機関の名称又は医療機関の名称と併記して掲載される名称) ・ 手術や処置等の効果又は有効性を強調するもの ・ 比較的安全な手術です。
出典:医療広告ガイドライン
上記でご紹介した例は虚偽・誇大広告となるので注意しましょう。
4. 他の施設との比較
他の医療機関との比較で、以下のように自分の医療機関の方がいいと見せることは禁止されています。
・ 肝臓がんの治療では、日本有数の実績を有する病院です。 ・ 当院は県内一の医師数を誇ります。 ・ 本グループは全国に展開し、最高の医療を広く国民に提供しております。 ・ 「芸能プロダクションと提携しています」 ・ 「著名人も○○医師を推薦しています」 ・ 著名人も当院で治療を受けております。
出典:医療広告ガイドライン
著名人の来院を紹介することも他の施設との比較となるので、広告では記載できない内容となります。
5. その他
その他にも、以下の内容を医療広告で謳うことは禁止されています。
- 専門外来(例外あり)
- 死亡率
- 術後生存率
- 未承認医薬品による治療の内容
- 期間限定で〇〇%オフ
- 無料相談をされた方へ〇〇のプレゼント
医療広告ガイドラインでは細かく禁止事項や文言が決められているので、違反とならないように気をつけましょう。