女性ホルモン、男性ホルモンという言葉は女性を中心に注目を集めそうな表現といえます。また、美容サプリメントや毛髪ケア用品など、健康、老化対策目的の製品が数多く販売されています。
「女性ホルモン」「男性ホルモン」という言葉は身体機能の変化を表す内容であるため、医薬品以外での広告表現を行うと薬機法や景表法に違反していることになります。
本記事では、薬機法・景表法と「女性ホルモン」「男性ホルモン」という表現の関係と言い換えについて解説していきます。 広告規制に違反しない表現方法について、本記事の具体的な言い換え表現も参考にしてみてください。
「女性ホルモン」「男性ホルモン」は医薬品にしか使用できない
女性ホルモンや男性ホルモンの分泌や調整といった表現は身体の機能に影響を与える内容であるため、医薬品の効能効果となります。つまり、化粧品や健康食品、美容機器についてホルモンバランス調節やアンチエイジング効果があるような表現をしている場合、薬機法において虚偽広告、誇大広告にあたります。
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
また、事実に反する表現を使用した広告は薬機法だけでなく景表法など他の法律やガイドラインに違反する恐れもあります。
景表法(優良誤認表示)とは?
景表法(景品表示法)では、商品やサービスの品質や内容について、実際とは異なる表示(優良誤認表示)をしてはならないと定めています。優良誤認表示によって、その製品の効果や使い方について消費者が誤った認識を与える恐れがあるためです。
「ホルモンバランスを調節」や「アンチエイジング」に意識を向けさせて大げさに宣伝することは優良誤認表示にあたる恐れがあります。
化粧品広告に「女性ホルモン」「男性ホルモン」が使用できない理由
エッセンシャルオイル等の化粧品においても、「女性ホルモン」「ホルモンバランス」に効果的であると表示されることがありますが、広告としては不適切といわれています。
化粧品広告に使用が認められる効能効果の範囲は、「化粧品等の適正広告ガイドライン」で定められた56項目に限定されています。ホルモンバランス調節は治療効果や薬理作用によるものと考えられているため、化粧品の効能効果の範囲を超えている表現といえます。
育毛剤(薬用化粧品)の広告表現について
また、育毛剤の広告においても、「頭皮のホルモンバランスを整える」等の表現は認められておらず、「頭皮の炎症を抑える」等の表現に言い換える必要があります。 育毛剤は薬用化粧品(医薬部外品)に該当する製品です。薬用化粧品(医薬部外品)では次のような広告表現が認められています。
- 予防や防止の表現
- 承認されている効能効果(育毛、除毛)
薬用化粧品(医薬部外品)で広告表現がNGとなる内容には次のようなものがあります。
- 治療を表す内容(治る、改善、治療)
- 未承認の効能効果(毛を生やす、永久脱毛)
- 承認されている効能効果を保証するような表現(100%、必ず効く、確実)
- 特定の年齢層や性別以外の区別(薄毛の方専用)
健康食品の広告に「女性ホルモン」「男性ホルモン」表現はNG
美容サプリメントなどの健康食品の広告においても、「女性・男性ホルモン」「ホルモンバランス」といった表現は認められていません。ホルモンの分泌や調整に関わる広告表現は、身体の機能に影響を与える表現と考えられるため、医薬品的な効能効果を表現しているといえます。こうした表現は薬機法における「未承認医薬品広告」や「虚偽広告」といった薬機法違反にあたる恐れがあります。
健康食品は、あくまでも健康を維持するための補助として使用される食品であり、女性・男性ホルモン等の身体機能を直接改善するものでは無いことをしっかりと理解しておきましょう。
薬機法の目的規制とは?
健康食品は「食品」に該当するため、正確には薬機法の対象ではありません。 しかし、健康食品について医薬品と同じような効能効果があるような広告表現を行うと、薬機法の規制を受けることがあります。これは、薬機法が「目的規制」という規制方法をとっているためです。
薬機法は、医薬品を「疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされているもの」「身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされているもの」と定義しています。このため、実際には医薬品的な効能効果を持っていない製品であっても、医薬品的な効能効果を目的として販売すると、薬機法上の「医薬品」とみなされます。こうした考え方を「目的規制」と呼んでいるのです。
医薬品的な効能効果を広告表現として使用すると、たとえ商品のパッケージに健康食品と表示していたとしても、医薬品とみなされて薬機法の規制対象となる場合があるため注意が必要です。
美容機器の広告に「女性ホルモン」「男性ホルモン」はNG
他にも「女性ホルモン」「男性ホルモン」といった表現が利用される可能性がある製品として、毛髪ケア器やバストアップ用品などの美容機器があります。
しかし、これらの美容機器においても「女性ホルモン」「男性ホルモン」といった表現は誇大広告として不適切な広告とされています。 美容機器に関しては、化粧品の効能効果と同様の範囲内と定められています。美容機器とは、美容を目的としており、身体の構造や機能に影響を与えないものを指しているため、「女性ホルモン」「男性ホルモン」というワードは効能効果の範囲を超えていると考えられます。
化粧品での違反事例
女性ホルモン、男性ホルモンに関する化粧品広告での使用がNGとなる内容には次のようなものがあります。
- 医薬品的な効果効能があるような表現(ホルモンバランスを調節、改善する)
- 身体の変化についての表現(女性(男性)ホルモンと同様の効果、アンチエイジング)
- 特定部位を表す表現(肌、髪、頭皮、血液、バスト)
- 用法用量の指定(1日1回必ずご使用ください、就寝前に)
- その製品を使うだけで良いといった表現(運動しなくても、塗るだけで)
- 不安を煽る表現(後悔する前に、異性に嫌われる、放っておくと大変なことに)
- 最大級表現(最大、最小、最高の、日本一、最高峰)
- 安全性の保証(安心安全、無害、低刺激、問題ありません)
- 有名人や専門家が推薦しているとした表現(医師推薦、厚生労働省が認める)
- 他社を誹謗中傷するような内容(今までにない、○○社製品より優れた)
化粧品広告での使用が認められる表現
化粧品広告に使用がOKとなる効能効果は、原則として「化粧品等の適正広告ガイドライン」で定められた56項目に限られています。女性ホルモン、男性ホルモンに関係している効能効果としては、次のようなものがあります。
- 肌を整える
- 肌にハリを与える
- 頭皮、毛髪をすこやかに保つ
また、使用感の表現(さっぱり、香りがいい)はOKとなります。
化粧品広告での言い換え表現(参考)
化粧品広告で女性ホルモン、男性ホルモンについて表現する際に認められている言い換え表現をまとめました。これらの表現例を化粧品の広告を作成する際に参考にしてみてください。
「女性ホルモン」「男性ホルモン」を言い換えたい時の具体例
NG:アンチエイジング OK:肌を整える、肌荒れを防ぐ
NG:毛髪が若返る OK:毛髪のうるおいを保つ
NG:頭皮のホルモンバランスを抑える OK:頭皮のうるおいを保つ
健康食品での違反事例
美容サプリやなどの健康食品広告での使用がNGとなる内容には次のようなものがあります。
- 医薬品的な効果効能があるような表現(完治、施術、改善)
- 身体の変化についての表現(女性(男性)ホルモン同様の効果、アンチエイジング)
- 特定部位を表す表現(肌、髪、頭皮、血液、バスト)
- 症状や病名の記載(更年期障害、肥満、あせも、アトピー)
- 用法用量の指定(毎朝お飲みください、就寝前に)
- 不安を煽る表現(すぐに対策しないと、男性はがっかり、放っておくと大変なことに)
- 安全性の保証(安心安全、副作用の心配はありません、保証されている)
- その製品を使うだけで良いといった表現(エステいらず、飲むだけで)
- 最大級表現(最小、最大、最先端、最適、高級)
- 有名人や専門家が推薦しているとした表現(教授推薦、医師の監修)
- 他社を誹謗中傷するような内容(○○社製品より優れた、従来の)
健康食品広告での使用が認められる表現
健康食品の広告での使用がOKとなっている表現には次のようなものがあります。
- サポート表現(食事のバランスが気になる方に、忙しい毎日に)
- 使用感の表現(すっきり、スカッと、やさしい味)
使用には注意が必要となる表現
身体の部位を表すワードに合わせての使用はNGです。
- 健康美人
- 女性美(男性美)のためのアイテム
- ビューティーレベルを底上げ
健康食品広告での言い換え表現例(参考)
健康食品広告で女性ホルモン、男性ホルモンについて表現する際に認められている言い換え表現をまとめました。これらの表現例を健康食品の広告を作成する際に参考にしてみてください。
「女性ホルモン」「男性ホルモン」を言い換えたい時の具体例
NG:女性(男性)ホルモンと同様の効果 **OK:**女性(男性)らしさを出す
NG:バストアップ **OK:**堂々とビキニを着られるように
NG:美しい肌質に **OK:**女子力アップに
NG:肌をつるつるに **OK:**キレイをサポート
美容機器、雑貨での違反事例
薬機法により、などの美容機器の広告での使用が認められない表現方法やワードには次のようなものがあります。
- 医薬品的な効果効能があるような表現(効果、作用、回復)
- 特定部位を表す表現(肌、髪、頭皮、血液、バスト)
- 身体の変化についての表現(女性(男性)ホルモンを活性化、魅力的なバスト)
- 症状や病名の記載(更年期障害、メタボ、アトピー)
- 用法用量の指定(毎日5分だけご使用ください、夕食後に使用すると効果的)
- その製品を使うだけで良いといった表現(エステに行かなくても、着るだけで)
- 不安を煽る表現(後悔する前に、病気の信号ですよ、このままでいいの?)
- 最大級表現(最高、最小、最大、最上級、高級)
- 安全性の保証(安全、無害、無毒、疲れない)
- 有名人や専門家が推薦しているとした表現(医師推薦、教授監修)
- 他社を誹謗中傷するような内容(今までにない、○○社製品より優れた)
美容機器広告での使用が認められる表現
美容機器や雑貨の広告での使用がOKとなっている表現には次のようなものがあります。
- サポート表現(魅力的に、女子力を上げる)
- 使用感の表現(付けやすい、ホールド感、ぴったり)
使用には注意が必要となる表現
身体の部位を表すワードに合わせての使用はNGです。
- 女性美(男性美)のためのアイテム
- ビューティーレベルを底上げ
- 女性(男性)らしさ
美容機器、雑貨の広告での言い換え表現(参考)
美容機器広告で女性ホルモン、男性ホルモンについて表現する際に認められている言い換え表現をまとめました。これらの表現例を美容機器や雑貨の広告を作成する際に参考にしてみてください。
「女性ホルモン」「男性ホルモン」を言い換えたい時の具体例
NG:女性(男性)ホルモンを増やす **OK:**女性(男性)らしさを出す
NG:胸が大きくなった **OK:**実感がわく
NG:バストアップ **OK:**堂々とビキニを着られるように
NG:胸が大きくなる **OK:**女子力がプラス
まとめ
ホルモンバランスの調節や、女性らしさ・男性らしさを求める人は沢山います。女性ホルモン、男性ホルモンの調節やアンチエイジングを謳った製品が数多く販売されていますが、これらの広告表現には不適切なものが数多く存在しています。 ホルモンの分泌や調節は身体機能に影響を与えるものであるため、化粧品、や健康食品、美容機器での広告表現は薬機法違反にあたることを覚えておきましょう。 これらの製品はあくまで健康維持の補助的に使用するものであり、身体の機能や症状を改善するものではないことを念頭に置く必要があります。薬機法や景表法に違反しないために、広告規制の内容についてしっかり確認しておきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※違反事例、言い換え表現についてはあくまで参考として捉えてください。表現の違反等の判断については各都道府県の薬務課によって見解が異なりますので、ご理解頂きますようお願いいたします。