加齢臭や体臭、口臭など臭いケアや消臭については、どの年代でも関心のある事柄であると考えられています。
そのため暖かい季節になってくると、体臭対策や消臭商品の売り上げが飛躍的に伸びると言われおり、これに合わせて加齢臭や体臭・口臭対策や消臭関連の化粧品や健康食品、雑貨が多数発売されてきます。
本記事では、化粧品や健康食品、雑貨の広告で消臭について広告表現するときに注意したいポイントについて解説していきます。薬機法や景表法による加齢臭や体臭、口臭対策や消臭についての広告表現について確認しておきましょう。
薬機法の広告規制
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の広告規制は、薬機法10章において、次の3か条で構成されています。
- 誇大広告等の禁止(66条)
- 特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品の広告の制限(67条)
- 承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止(68条)
ちなみに、薬機法において健康食品を含む食品は規制の対象とはなっていません。しかし、食品の広告において医薬品と同じような効能効果を標榜すると、その食品が医薬品とみなされてしまいます。その結果、承認前の医薬品の広告の禁止(68条)や医薬品の無許可販売(24条)に違反するとして薬機法違反となる恐れがあります。
化粧品の中で歯磨き類のみ「口臭を防ぐ」効能効果が使用OK
化粧品で標榜できる効能効果は、厚生労働省によって定められた56項目に限定されています。
このうち、臭いに関する効能効果については、歯磨き類によっての「口臭を防ぐ」のみ認められています。あくまで「口臭を防ぐ」までが認められた表現であり、「口臭を治す」はNG表現となります。その他の化粧品では、体臭予防などの直接的な表現は使用できません。「香り」によって加齢臭や体臭などの気になる嫌な臭いを気にならなくさせるという表現なら使用が認められています。
また、化粧品によって、体臭の元を分解する、除去するなど医薬品的な効能効果の表現は薬機法違反に該当するため注意が必要です。
化粧品については、薬機法以外にも日本化粧品工業連合会(粧工連)が「化粧品等の適正広告ガイドライン」を定めているため、合わせてチェックしておきましょう。
「消臭」関連商品は薬用化粧品である場合が多い
デオドラントスプレーやなど、体臭予防を目的とする外用剤は薬用化粧品(医薬部外品)にあたります。 薬用化粧品は、個別の製品において医薬部外品として承認された範囲内で、化粧品よりも強い効能効果を標榜することができます。
しかし、薬用化粧品(医薬部外品)であっても、「臭いの元を分解する」といった効能効果の表現は承認の範囲を超えているため、薬機法違反にあたる恐れがあります。また、化粧品や薬用化粧品(医薬部外品)の広告において「1ヶ月間効果が持続する」といった効果期間を設定する表現は、医薬品の用法用量の暗示とされ、薬機法違反にあたる恐れがあるため注意が必要です。
健康食品は「体臭を抑える」はNG!
健康食品の広告では、医薬品的な効能効果を標榜することは認められていません。口臭を抑えたり、加齢臭や体臭といった身体機能に関わる臭いに作用するかのような表現はこの「医薬品的な効能効果」に該当します。 サプリメントやドリンクに香りが添加されており、その香りによって嫌なにおいが気にならなくなるといった表現ならOKとなります。
健康食品は医薬品ではなく食品
健康食品はあくまで食品であり、医薬品ではありません。健康食品は、健康の維持・増進を目的としており、医薬品のような病気の予防や治療を目的としていません。
いわゆる健康食品は、医薬品と違い、病気の治療・予防を目的とするものではありません。病気の治療や予防に役立つことを説明したりほのめかしたりする表示や広告を行っている製品は、「医薬品」と判断します。外国語で記載されていても取り扱いは同じです。疾病の治療や予防効果の表示・広告は、医薬品としての承認を取得して初めて可能になるものなのです。いわゆる健康食品には、栄養補給や健康の維持など一般的な食品の範囲の目的しか持たせることができません。
薬機法において、医薬品以外において医薬品と同じような効能効果を標榜することは禁止されています。 これは、医薬品と同じような効能効果を健康食品に表示すると、薬機法68条においての「承認前の医薬品」とみなされるためです。
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
衣料用スプレーなどの雑貨はモノや空間に対してならOK
洋服や部屋など物や空間の消臭を行う商品やアロマ用の商品は雑貨にあたります。 洋服などの物や空間への消臭や香りづけを行うことを目的とする商品である場合は薬機法の対象外となります。そのため、事実である場合に限り、消臭効果があるといった標榜は可能になります。しかし、加齢臭や体臭、口臭などの臭いの元に影響を与えるといった表現は「医薬品的な効能効果」を暗示していることになるため、認められていません。
合理的根拠のない効果や性能の表示は景表法違反にあたる場合も
景表法において、商品やサービスが実際のものより著しく優良であると示すものは優良誤認表示と呼ばれます。 「消臭」商品について優良誤認表示とならないためには、合理的な根拠となる試験や調査の結果などの提出を求められる場合があります。そのためには、次の2つの要件を満たす必要があります。
- 提出資料が客観的に実証された内容のものであること
- 表示された効果・性能と、提出資料によって実証された内容が、適切に対応していること
また、「客観的に実証された内容のもの」とは、次のようなものを指しています。
- 試験、調査によって得られた結果
- 専門家、専門家団体もしくは専門機関の見解または学術的文献
化粧品での違反事例
加齢臭や体臭、口臭に関する化粧品広告での使用がNGとなる内容には次のようなものがあります。
- 医薬品的な効果効能があるような表現(治る、治療、改善、完治)
- 承認されていない効能効果の表現(口臭を消す、臭いの元を断つ、臭わない体質に)
- 不安を煽る表現(手遅れになる前に、後悔する前に、病気の信号かもしれません)
- 最大級表現(最大、最小、最適、ベスト、高級)
- 安全性の保証(安心安全、必ず効く、万能、確実、絶対)
- 有名人や専門家が推薦しているとした表現(芸能人推薦、医師も認めた)
- 他社を誹謗中傷するような内容(これまでにない、○○社製品より優秀です)
化粧品広告での使用が認められる表現
化粧品や薬用化粧品広告に使用がOKとなる効能効果は、原則として「化粧品等の適正広告ガイドライン」で定められた56項目に限られています。加齢臭や体臭、口臭対策に関係している効能効果としては、次のようなものがあります。
- 口臭を防ぐ
- 歯のヤニを取る
- 香りで臭いを包みこむ
また、使用感の表現(爽やかな香り、爽快)はOKとなります。
化粧品広告での言い換え表現(参考)
歯磨き粉などの薬用化粧品の広告で口臭、加齢臭、体臭対策について表現する際に認められている言い換え表現をまとめました。これらの表現例を化粧品の広告を作成する際に参考にしてみてください。
「体臭を抑える」「口臭を防ぐ」を言い換えたい時の具体例
NG:この歯磨き粉で口臭が治りました OK:この歯磨き粉は口臭防止に役立ちます
NG:体臭を分解する OK:香りで身体の臭いをやさしく包みこむ
NG:この商品で体臭が治ります OK:この商品でサラサラに
健康食品での違反事例
サプリメントなどの健康食品広告での使用がNGとなる内容には次のようなものがあります。
- 医薬品的な効果効能があるような表現(予防、防ぐ、解消、分解、作用)
- 身体の変化についての表現(臭いの元を断つ、加齢臭を抑える、体臭改善、デオドラント)
- 特定部位を表す表現(肌、髪、頭皮、歯茎)
- 症状や病名の記載(歯周病、更年期障害、ガン、糖尿病)
- 用法用量の指定(夕食後に必ずお飲みください、毎朝お召し上がりください)
- 不安を煽る表現(すぐに対策しないと、後悔する前に、病気の信号です)
- 安全性の保証(安心安全、大丈夫、満足度、無害)
- その製品を使うだけで良いといった表現(治療しなくても、病院いらず、飲むだけで)
- 最大級表現(最小、最大、最高峰、一級、日本一、ベスト)
- 有名人や専門家が推薦しているとした表現(医師推薦、大学教授のお墨付き、○○も認めた)
- 他社を誹謗中傷するような内容(○○社製品より優れた、これまでにない)
健康食品広告での使用が認められる表現
健康食品の広告での使用がOKとなっている表現には次のようなものがあります。
- サポート表現(ニオイケア、エチケットケア、食事のお供に)
- 使用感の表現(さっと飲める、サラサラ、香りがいい)
使用には注意が必要となる表現
身体の部位を表すワードに合わせての使用はNGです。
- いつもスッキリ
- エイジングケア
- 消臭
健康食品広告での言い換え表現例(参考)
健康食品広告で口臭、加齢臭、体臭対策について表現する際に認められている言い換え表現をまとめました。これらの表現例を健康食品の広告を作成する際に参考にしてみてください。
「体臭を抑える」「口臭を防ぐ」を言い換えたい時の具体例
NG:臭いの元を断つ OK:エチケットケア
NG:汗の臭いもこのサプリで OK:このサプリで臭いケア
NG:加齢臭が気になりだしたら OK:40代でもいつもスッキリ
NG:身体から出る嫌な臭いに OK:夏のエレベーターが嫌いな方に
美容機器、雑貨での違反事例
衣料用消臭スプレーは雑貨にあたります。美容機器や雑貨の広告での使用が認められない表現方法やワードには次のようなものがあります。
- 医薬品的な効果効能があるような表現(デオドラント、消臭、解消、改善)
- 特定部位を表す表現(肌、髪、ウエスト、贅肉、脚)
- 身体の変化についての表現(体臭防止、制汗、デトックス)
- 症状や病名の記載(ガン、更年期障害、糖尿病、肌荒れ)
- 用法用量の指定(1日1回必ずご使用ください、夕食後に)
- その製品を使うだけで良いといった表現(付けるだけで、我慢せずに、何もしなくても)
- 不安を煽る表現(異性に嫌われる、病気かもしれません、後悔する前に)
- 最大級表現(最小、最大、ナンバーワン、ベスト、最高峰)
- 安全性の保証(安心安全、無害、無毒、大丈夫)
- 有名人や専門家が推薦しているとした表現(芸能人推薦、医師監修、○○も認めた)
- 他社を誹謗中傷するような内容(従来の、○○社製品より優れた)
美容機器・雑貨広告での使用が認められる表現
美容機器、雑貨の広告での使用がOKとなっている表現には次のようなものがあります。
- サポート表現(健康維持のために、美容のために、運動をサポート)
- 使用感の表現(洗いやすい、ふわふわ、なめらか、スムーズ)
使用には注意が必要となる表現
身体の部位を表すワードに合わせての使用はNGです。
- 生活習慣が気になる方に
- 毎日のスッキリに
- 消臭
美容機器、雑貨の広告での言い換え表現(参考)
美容機器や雑貨の広告で、加齢臭や体臭、口臭対策について表現する際に認められている言い換え表現をまとめました。これらの表現例を美容機器や雑貨の広告を作成する際に参考にしてみてください。
「体臭を抑える」「口臭を防ぐ」を言い換えたい時の具体例
NG:口臭を消す OK:口の中がスッキリ
NG:髪のダメージを修復する OK:髪を補修する
NG:どんな効果が出るのか楽しみ OK:どんな結果になるのか楽しみ
まとめ
化粧品広告において、臭いに対する効能効果は「口臭を防ぐ」のみ標榜が認められています。消臭スプレーなどは薬用化粧品(医薬部外品)にあたりますが、化粧品と薬用化粧品では、それぞれ広告表現に制限が設けられているので注意しましょう。 サプリメントなどの健康食品や衣料用消臭スプレーなどの雑貨の広告においては、加齢臭や体臭、口臭の元を断つような表現は医薬品的な効能効果を標榜しているとして薬機法違反にあたります。
また、客観的な根拠が実証できない効果・性能の表示は景表法違反にあたる恐れがあるため、薬機法と合わせて景表法に関しても違反することがよう細心の注意を払いましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※違反事例、言い換え表現についてはあくまで参考として捉えてください。表現の違反等の判断については各都道府県の薬務課によって見解が異なりますので、ご理解頂きますようお願いいたします。