医療機関が雑誌の取材を受けることは問題ありません。 しかし、雑誌に掲載されたことやテレビ、ラジオなどのメディアで紹介されたことを病院やクリニックのホームページに記載することは薬機法や医療広告ガイドラインによりNGとなっています。 また、病院やクリニックのSNS(TwitterやInstagramなど)やブログへの記載にNGとなっているため注意が必要です。
しかし、患者さんが医療についての適正な情報を選択することができると認められた場合は、広告可能事項が限定解除されます。
本記事では、雑誌掲載やメディアでの紹介を医療広告に記載する際の注意点について解説していきます。
「テレビ・雑誌で紹介された」は広告使用NG
医療広告ガイドラインにおいて、メディアに紹介されたという内容は、広告可能な事項として認められていません。
自らの医療機関や勤務する医師等が新聞や雑誌等で紹介された旨は、広告可能な事項ではないので、広告は認められない。
出典:医療広告ガイドライン
また、ホームページだけでなく、病院やクリニック公式のSNS(TwitterやInstagramなど)やブログに掲載することも禁止されているので注意が必要です。 ちなみに、メディアの取材を受けること自体はOKです。
「メディアに掲載された」は比較優良広告に該当する
病院やクリニックが雑誌に取り上げられた場合、そのことを広告に掲載することは医療広告ガイドラインによる医療広告での使用が禁止されている「比較優良広告」にあてはまります。 これは、他院と比較してその病院やクリニックの方が優れているような印象を与える恐れがあるとされているためです。仮に、他院よりも優良であることが事実であっても比較優良広告は認められていません。 他にも比較優良広告にあてはまる例としては次のような表現があります。
- 最新、日本一といった最上級表現
- 地域有数の治療実績や県内一医師数といった表現
- 芸能人や有名人の来院情報
- 芸能プロダクションとの提携
- 専門家の推薦
このような広告規制に違反した場合、広告の中止・是正及び罰金が科されることがあります。
メディアでの掲載を広告に使用できる場合がある
メディアでの紹介を医療広告に記載するときは、広告可能事項の限定解除の要件を満たす必要があります。 広告可能事項の限定解除の要件は以下の通りです。
① 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること ② 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載する ことその他の方法により明示すること ③ 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること ④ 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること
出典:医療広告ガイドライン
ここからは、それぞれの要件について詳しく解説していきます。
患者さんが自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイト等の広告であること
患者さんが自ら求めて入手するウェブサイト等の広告とは、患者さんが自ら求めた情報を表示する広告を指します。 これにあてはまる具体的な例は、次のようなものがあります。
- 医療機関のホームページ
- メールマガジン
- 患者さんの求めに応じて送付する医療機関のパンフレット
詳しい問い合わせ先が分かりやすく記載されていること
限定解除の要件となっている問い合わせ先には、電話番号だけでなく、メールアドレスも含まれます。 また、予約専用の電話番号のみ記載している場合や、自動音声のみ対応となっている場合は要件として不十分となります。
Q5-10 広告可能事項の限定解除要件の一つとして問い合わせ先が記載されていることが挙げられていますが、医療機関の問い合わせ先として予約専用の電話番号等が記載されていても、適切であると考えられるのでしょうか。 A5-10 予約専用である旨が記載され、問い合わせ可能である旨の記載のない電話番号などの場合は、患者等が容易に照会できるとは言えず、限定解除要件を満たしているとは認められません。問い合わせ先の電話番号につながるものの自動音声が対応するのみで、問い合わせに対する折り返しの連絡がないような場合についても同様です。また、メールアドレスが記載されている場合であって、受付した旨の返信があるのみで問い合わせに対する返答がないような場合等についても、患者等が容易に照会できるとはみなされないため、限定解除要件を満たしているとは認められません。
自由診療の場合、治療内容、費用等について情報提供されていること
自由診療の治療内容、費用について、ただ記載されているだけでなく患者さんにとって分りやすいものであることが求められます。 文字が小さい、読みづらい等は要件を十分に満たしていないとされる可能性があるため注意が必要です。
限定解除要件については、患者が容易に視認できることが必要です。 例えば、以下のようなケースは容易に視認できる状態ではないと考えられます。
- 文字が極端に小さく容易に確認が出来ないと考えられるもの
- 背景色と同じあるいは同系統の文字色で記載されているなど、配色に問題があると考えられるもの
- 意図的に情報量を増やし、必要事項を見逃す恐れがあると判断できるもの
なお、患者の求めがあった場合には、広告可能事項の限定解除の要件として記載されたものと同じ内容を紙面等で提供することが望ましいと考えられます。
自由診療の場合リスク、副作用について情報提供されていること
自由診療の場合に情報提供が求められるリスクや副作用は、患者さんが安全性を誤解しないよう、詳しい記載が求められます。リスクや副作用の記載を省略していると、限定解除の要件として認められない可能性があります。
Q5-12広告可能事項の限定解除の要件として、自由診療の場合は、治療等に係る主な リスク、副作用等に関する事項について情報を提供することとされていますが、 次のような例を記載していれば限定解除要件を満たすのでしょうか。 (例)デメリットとしては、
- 時間の経過によって体内へと吸収され、元に戻る
- 十分な効果を得るために、数回の注射が必要な場合がある
が挙げられます。 A5-12 限定解除要件とされている、自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項、自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項を記載することが必要です。上記のような記載のみでは、限定解除要件を満たしているとは認められません。
薬機法による広告規制の範囲
医薬品などの医療広告について、薬機法による広告規制を受けるのは販売事業者や広告主だけではなく、広告に関わる全ての人です。 つまり、雑誌やテレビ等で違法な広告を使用していた場合は、雑誌社やテレビ局も違反となります。 インターネット上のホームページやアフィリエイター、インフルエンサーも対象となるので注意が必要です。
まとめ
本記事では、医療広告ガイドラインの規制の対象となる範囲について解説しました。 メディアで紹介された旨を医療広告に記載する際は、限定解除の要件を満たす必要があります。また、限定解除の要件を満たすには、いくつかの注意点があります。
医療広告の厳しい規制の中で、記載できること・できないことを知っておくことは重要です。医療広告ガイドライン、医療広告ガイドラインに関するQ&Aを参考にしながら確認しておきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。