ホットフラッシュやほてり、のぼせは女性の6割程度が閉経前(更年期)に経験するといわれている更年期症状の一つであり、中には日常生活に支障をきたす程症状が重くなってしまう人もいるようです。
更年期症状のある女性に向けたサプリメントなどの商品は数多く販売されていますが、化粧品や健康食品、美容機器の広告表現に「ホットフラッシュ」「ほてり」「のぼせ」といったワードを使用すると薬機法や景表法に違反する恐れがあります。
本記事では、「ホットフラッシュ」「ほてり」「のぼせ」に関する広告表現の違反事例や言い換え表現について紹介しています。関連商品の広告作成の参考にしていただければ幸いです。
ホットフラッシュ、ほてり、のぼせとは
「ホットフラッシュ」とは更年期障害でみられる症状の一つであり、上半身のほてりやのぼせ、発汗が現れるのが特徴です。更年期世代の女性の6割が、ホットフラッシュの症状を経験しているといわれています。
また、ホットフラッシュに加えて、動機や息切れ、手足のしびれなどがある場合は高血圧が隠れている場合があるため注意が必要です。
ホットフラッシュの症状
ホットフラッシュには、具体的には次のような症状がみられ、ほてりやのぼせはホットフラッシュ症状の一つに含まれます。
- 突然身体が熱くなる
- 顔や胸が急に紅潮する(ほてり、のぼせ)
- 暑くないのに汗が止まらない
- 動悸が激しくなる
ホットフラッシュやほてり、のぼせは顔から頭部、胸にかけて症状が現れることが多いといわれています。また、ホットフラッシュの症状には個人差があり、顔のほてりや発汗だけが現れる人もいるようです。
ホットフラッシュの原因
ホットフラッシュやほてり、のぼせは女性ホルモン(エストロゲン)が減少することにより自律神経が乱れることによって起こります。自律神経は血管の拡張や収縮をコントロールする機能があるため、自律神経が乱れることで体温の急激な上昇や発汗、肌の紅潮に繋がるのです。
また、女性ホルモンの減少の他にも暖かい部屋でドライヤーなどの高温になる製品を使用することがホットフラッシュの引き金になる場合があるといわれています。
薬用化粧品では「日やけ、雪やけ後のほてり」のみ表現OK
薬用化粧品と呼ばれる製品は、化粧品という名称はあっても薬機法的には「医薬部外品」に分類されます。薬用化粧品は、品目ごとに承認された範囲内の効果効能であれば広告表現に使用することが認められているため、医薬品と化粧品の中間といった位置付けといえるでしょう。
薬用化粧品に該当する化粧水やクリームなどのスキンケア用品において、承認された効果効能の一つとして「日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ」といった項目があります。つまり、日やけ・雪やけによるほてりを防ぐといった効果効能は広告表現OKですが、ホットフラッシュや更年期症状によるほてり・のぼせに効くといった効果効能広告表現NGとなるのです。
仮に薬用化粧品の広告表現に使用した場合は、「ホットフラッシュや更年期症状によるほてりを防ぐ」は「承認されていない効果効能」を表示しているものと判断されるでしょう。
サプリ広告での「ホットフラッシュ、ほてり、のぼせに効く」は薬機法違反
更年期症状のある女性に向けたサプリメントの広告において、「ホットフラッシュ、ほてり、のぼせに効く」といった広告表現は薬機法違反となる恐れがあります。
サプリメントなどの健康食品広告で更年期症状や女性特有の症状に効果があることを暗示させる表現は、薬機法による「医薬品的な効果効能の表現」とされることが原因です。 また、肌や顔などの身体の部位へ効果があることを暗示させる表現も認められていないため注意が必要です。
広告作成の際は「更年期症状に効く」ではなく、「女性にうれしい栄養素が摂れる」などといった表現への言い換えが求められています。
冷却ジェルシートの広告で「ホットフラッシュ、ほてり、のぼせに効く」は薬機法違反?
額や顔に貼るとひんやりとする冷却ジェルシートはドラックストアでも人気の商品だそうですが、これらの商品の広告表現にホットフラッシュやほてり、のぼせといったワードは使用できるのでしょうか?
結論からいうと、冷却ジェルシートなどの広告でホットフラッシュやほてり、のぼせに関する効果効能の表示は薬機法違反となる可能性が高いです。これは、冷却ジェルシートを貼ってもホットフラッシュ予防・改善や体温を下げる効果効能はないとされているためです。 冷却ジェルシートはジェルに含まれる水分が蒸発する際に吸収される気化熱によって、貼った部分が局所的に冷たくなるといった原理を利用しています。そのため、体温そのものを下げる訳ではないのです。
これらの製品の広告では、あくまでも「ひんやりする」といった使用感の表現までに留めておきましょう。
景表法における「優良誤認表示」にあたる恐れも
景表法(景品表示法)とは、消費者の利益を守ることを目的として商品やサービスの広告表示について規制している法律です。こうした景表法において、商品やサービスの品質などについて実際のものより著しく優良であるかのように表示することは「優良誤認表示」として禁止されています。
現在の化粧品や健康食品、雑貨などにはホットフラッシュやほてり、のぼせを改善する効果があると承認されているものはありません。したがってこれらの効果効能があるといった表示は優良誤認表示に該当する恐れがあるといえるのです。
優良誤認表示の疑いがあるとされた場合は、消費者庁からその表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求められます。資料の提出ができない・提出した資料の内容が合理的な根拠と認められないと判断されると、優良誤認表示として措置命令の対象となるため十分な注意が必要です。
また、措置命令に従わなかった場合は、2年以下の懲役または300万円以下の罰金、あるいはその両方が科される可能性があります。
化粧品での違反事例
スキンケア用品などのホットフラッシュ、ほてり、のぼせに関する化粧品や薬用化粧品の広告での使用がNGとなる内容を紹介します。
- 医薬品的な効果効能があるような表現(治る、完治する、万能)
- 承認されていない効能効果(日焼けしなくなる、肌がよみがえる、肌荒れしなくなる)
- 特定部位を表す表現(肌、おなか、ウエスト)
- 効果効能の保証(100%、必ず効く、絶対に)
- その製品を使うだけで良いといった表現(塗るだけで、何もしなくても)
- 不安を煽る表現(手遅れになる前に、病気の信号ですよ、このままでいいの?)
- 最大級表現(もっとも、最高の、日本一、最上級)
- 安全性の保証(安心、安全、無害、大丈夫、心配なく)
- 有名人や専門家が推薦しているとした表現(芸能人が推薦、医師監修、大学教授が認めた)
- 他社を誹謗中傷するような内容(これまでにない、類をみない、○○社製品より優れた)
化粧品広告での使用が認められる表現
化粧品広告に使用がOKとなる効能効果は、原則として「化粧品等の適正広告ガイドライン」で定められた56項目に限られています。ほてりに関係している効能効果としては、次のようなものがあります。
- 日やけを防ぐ
- 日やけによるシミ、そばかすを防ぐ(「日焼けによる」を入れない場合はNG表現)
薬用化粧品にあたる場合は、承認されている効果効能(日焼け後のほてりを防ぐ、など)については広告表現が認められています。 また、使用感の表現(使いやすい、スッキリ、さっぱり、サラサラ)はOKとなります
化粧品広告での言い換え表現(参考)
化粧品や薬用化粧品の広告で「ホットフラッシュ」「ほてり」「のぼせ」について表現する際に認められている言い換え表現をまとめました。これらの表現例を化粧品の広告を作成する際に参考にしてみてください。
ホットフラッシュ、ほてり、のぼせに関する表現を言い換えたい時の具体例
NG:ほてりを防ぐ OK:日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ
NG:顔の紅潮を抑える OK:日やけを防ぐ
健康食品での違反事例
サプリメントなどのホットフラッシュ、ほてり、のぼせに関する健康食品広告での使用がNGとなる内容には次のようなものがあります。
- 医薬品的な効果効能があるような表現(治療、万能、療治、改善)
- 身体の変化についての表現(イライラ、アンチエイジング、女性ホルモンと同様の効果)
- 特定部位を表す表現(肌、顔、胸)
- 症状や病名の記載(ホットフラッシュ、ほてり、のぼせ、更年期症状、女性特有の不調)
- 用法用量の指定(夕食後にお召し上がりください、1日1回必ずお飲みください)
- 不安を煽る表現(後悔する前に、病気の信号ですよ、このままでいいの?)
- 安全性の保証(安全、無害、大丈夫、問題なく)
- その製品を使うだけで良いといった表現(我慢せずに、何もしなくても、病院いらず)
- 最大級表現(最高、高級、一位、ベスト)
- 有名人や専門家が推薦しているとした表現(医師推薦、大学教授が監修、国の基準)
- 他社を誹謗中傷するような内容(今までにない、○○社製品より優れた、大手企業にはない)
健康食品広告での使用が認められる表現
健康食品の広告での使用がOKとなっている表現には次のようなものがあります。
- サポート表現(女子に不足しがちな成分を補給、いつも笑顔でいたい)
- 使用感の表現(飲みやすい、ひんやり、マイルド)
使用には注意が必要となる表現
次の表現は、身体の部位を表すワードに合わせての使用はNGとなるため注意が必要です。
- 女性らしさ
- 女性美のためのアイテム
健康食品広告での言い換え表現例(参考)
健康食品広告で「ホットフラッシュ」「ほてり」「のぼせ」について表現する際に認められている言い換え表現をまとめました。広告作成の際に参考にしていただければと思います。
ホットフラッシュ、ほてり、のぼせに関する表現を言い換えたい時の具体例
NG:女性ホルモンと同様の効果 OK:女性らしさを出す
NG:効果が出ます、効きます OK:サポートしてくれます
雑貨、美容機器での違反事例
冷却ジェルシートなどの雑貨や美容機器の広告での使用が認められない表現方法やワードには次のようなものがあります。
- 医薬品的な効果効能があるような表現(万能、施術、改善)
- 特定部位を表す表現(肌、顔、胸、女性ホルモン)
- 身体の変化についての表現(体温を下げる、イライラ、アンチエイジング)
- 症状や病名の記載(更年期症状、ホットフラッシュ、PMS(月経前症候群))
- 用法用量の指定(1日30分ご使用ください、就寝前に)
- その製品を使うだけで良いといった表現(使うだけで、何もしなくても、病院いらず)
- 不安を煽る表現(異性に嫌われる、このままでいいの?)
- 最大級表現(最大、最小、日本一)
- 安全性の保証(安心安全、無毒、副作用の心配なく)
- 有名人や専門家が推薦しているとした表現(教授推薦、国の基準、厚生労働省)
- 他社を誹謗中傷するような内容(従来の、類を見ない、○○社製品にはない)
雑貨、美容機器広告での使用が認められる表現
雑貨や美容機器の広告での使用がOKとなっている表現には次のようなものがあります。
- サポート表現(若々しい、魅力的に)
- 使用感の表現(ひんやり、心地よい、使いやすい)
使用には注意が必要となる表現
次の表現は、身体の部位を表すワードに合わせての使用はNGとなるため注意が必要です。
- 女性らしさ
- 女性美のためのアイテム
雑貨、美容機器の広告での言い換え表現(参考)
雑貨や美容機器の広告で「ホットフラッシュ」「ほてり」「のぼせ」について表現する際に認められている言い換え表現をまとめました。これらの表現例を美容機器や雑貨の広告を作成する際に参考にしてみてください。
ホットフラッシュ、ほてり、のぼせに関する表現を言い換えたい時の具体例
NG:体温を下げる OK:ひんやりする
NG:女性ホルモンを増やす OK:女性らしさを出す
まとめ
「顔や胸が突然暑くなった」「自分だけ顔を真っ赤にして大汗をかいていて恥ずかしい」などの悩みを抱えている女性は多いようです。 ホットフラッシュやほてり、のぼせなどの更年期症状はホルモン調節機能や自律神経の乱れによって引き起こされるものです。したがって、これらの症状を改善するための製品は医薬品にのみ認められ、化粧品や健康食品、雑貨などの広告に使用されることは虚偽広告として薬機法違反にあたると考えられます。 また、景品表示法において優良誤認表示とされた場合は措置命令や課徴金納付命令が科されるといった重大な事例に繋がります。
広告作成に関わる人は、それぞれの製品において承認されている効果効能を超えた表現を使わないよう十分注意することが大切です。薬機法や景表法、各ガイドラインなどを定期的に確認しておきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※違反事例、言い換え表現についてはあくまで参考として捉えてください。表現の違反等の判断については各都道府県の薬務課によって見解が異なりますので、ご理解頂きますようお願いいたします。