近年、国民の健康志向の高まりもあり、健康食品が多く販売されています。 健康食品が広く普及する中、医薬品的な効能効果を謳っているなど、医薬品に該当するにも関わらず食品として流通しているものがあるのが現状です。
本記事では、医薬品と健康食品、明らか食品について考えていきます。
明らか食品とは
いわゆる明らか食品とは、誰が見ても食品であることが容易にわかり、誤認を与えるものではないもののことを言います。厚生省から発出されてる「無承認無許可医薬品の監視指導について」では下記のように記載されています。
4 「明らかに食品と認識される物」の解釈 (1) 通常の食生活において、その物の食品としての本質を経験的に十分認識していて、その外観、形状等より容易に食品であることがわかるものは、その物の食品としての本質に誤認を与えることはないため、通常人がその物を医薬品と誤認するおそれはない。 したがって、医薬品の目的を有するものであるという認識を与えるおそれのないこのような物は、医薬品に該当しないことは明らかであり、その成分本質(原材料)、形状、効能効果、用法用量について個々に検討し、後述する「判定方法」 に従って判定するまでもない。通知本文中のただし書はこの旨を明記したものである。
このように、通常、人が社会通念条容易に通常の食生活において、食品と認識するものを、明らかに食品と認識される物としています。 例えば下記のような物が該当します。
① 野菜、果物、卵、食肉、海藻、魚介等の生鮮食料品及びその乾燥品(ただし、 乾燥品のうち医薬品としても使用される物を除く。) (例) トマト、キャベツ、リンゴ、牛肉、豚肉、鰯、秋刀魚、鮪 等 ② 加工食品 (例) 豆腐、納豆、味噌、ヨーグルト、牛乳、チーズ、バター、パン、うどん、そば、緑茶、紅茶、ジャスミン茶、インスタントコーヒー、ハム、かまぼこ、コンニャク、清酒、ビール、まんじゅう、ケーキ等 ③ ①、②の調理品 (例) 飲食店等で提供される料理、弁当、惣菜及びこれらの冷凍食品・レ トルト食品 等 ④ 調味料 (例) 醤油、ソース 等
また、特定の成分を添加したものや医薬品としての目的を疑われるものに関しては個別に判断する必要があります。
健康食品とは
健康食品とは、法律で定義されているわけではありません。消費者庁ホームページでは、一般的に、健康に良いことをうたった食品全般のことをいうとされています。 また、健康食品のうち、特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品の3つを「保健機能食品」といいます。 それぞれの保健機能食品について厚生労働省e-ヘルスネットでは下記のように説明されています。
特定保健用食品(特保)
生理学的機能などに影響を与える食品です。消費者庁長官の許可を得ることにより、特定保健用食品である旨の記載ができるようになります。表示例として「血糖・血圧・血中のコレステロールなどを正常に保つことを助ける」、「おなかの調子を整える」などの保険機能表示があります。
機能性表示食品
特定保健用食品と同様に保健機能を表示することのできる食品です。特保と異なるのは、消費者庁長官の許可ではなく、事業者の責任で表示し、消費者庁に届出します。機能性の評価は、製品の臨床試験または製品や成分の文献調査によりことが決められています。
栄養機能食品
人の生命・健康維持に必要な特定の栄養素の補給のために利用されることを目的とした食品です。科学的根拠が十分にある栄養機能について表示することができます。国の定めた基準に沿えば、許可や届出がなくとも栄養機能を表示することができます。
健康食品の健康保持増進効果等について
健康食品で表示できる「健康増進保持効果等」は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」において記載されています。
「健康保持増進効果等」の定義 ①健康の保持増進の効果 ②内閣府令で定める事項 ③暗示的又は間接的に健康保持増進効果等を表示する場合 健康保持増進効果等の表示については、①及び②に掲げる効果を明示的又は直接的に表示しているものだけではなく、広告等全体でみた場合に、間接的に健康保持増進効果等を表示していると一般消費者が認識し得るものも含まれる。このため、例えば、次のような広告等も健康保持増進効果等の表示に該当する。 ア 名称又はキャッチフレーズにより表示するもの イ 含有成分の表示及び説明により表示するもの ウ 起源、由来等の説明により表示するもの エ 新聞、雑誌等の記事、医師、学者等の談話、学説、体験談などを引用又は掲載することにより表示するもの オ 医療・薬事・栄養等、国民の健康の増進に関連する事務を所掌する行政機関(外国政府機関を含む。)や研究機関等により、効果等に関して認められている旨を表示するもの
参考:健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について
明らか食品と健康食品の違いは?薬機法との関係
なお、前記(1)ア及びイのような医薬品的な効果効能を標ぼうするものは、医薬品医療機器等法上の医薬品とみなされ、野菜、果物、調理品等その外観、形状等から明らかに食品と認識される物を除き、原則として、医薬品医療機器等法上の承認を受けずにその名称、製造方法、効能、効果に関する広告をしてはならない(医薬 品医療機器等法第68条)
参考:健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について
健康食品に関しては、医薬品的な効果効能を広告に表示することは薬機法上認められません。 しかし、明らかに食品と認識されるものは除かれているので、明らか食品に関しては医薬品的な効能効果を広告に表示することは禁止されていません。 しかし、下記のように、虚偽誇大な表現に関しては健康増進法や景品表示法に抵触する恐れがあるので注意が必要です。
なお、「明らかに食品と認識される物」について行われる標ぼうにあっては、 虚偽誇大な表現については不当景品類及び不当表示防止法第4条第1項第1号 に、また、場合によっては健康増進法第31条等他法令に抵触するおそれがあるので、栄養・食品担当部局等関係部局に照会するよう指導すること。
明らか食品であるかの判定方法は?
その物がここでいう「明らかに食品と認識される物」に該当するか否かは、食生活の実態を十分勘案し、外観、形状及び成分本質(原材料)からみて社会通念上容易に食品と認識されるか否かにより判断するものである。 通常人が社会通念上容易に通常の食生活における食品と認識するものとは、例えば次のような物が考えられる。ただし、特定の成分を添加したもの、遺伝子組み換え技術を用いたものなど、医薬品としての目的を持つことが疑われるものについては、個別に判断をする必要がある。
上記のように、食品としての本質に誤認を与えることがなく、通常では人が医薬品と誤認する恐れがないものは、成分本質(原材料)、形状、用法容量、効能効果を検討するまでもなく、医薬品に該当しないことは明らかと判断されます。 医薬品かどうかの判定方法は、まず医薬品としての目的を有しているか否かを確認する必要があります。
その後、①成分本質(原材料)②剤型③効能効果、用法容量を組みあわせて総合的に判断されます。
まとめ
健康食品に関しては、医薬品的な効果効能を広告に表示することは薬機法上認められません。 明らかに食品と認識されるものは除かれているので、明らか食品に関しては医薬品的な効能効果を広告に表示することは禁止されていないものの、虚偽誇大な表現に関しては健康増進法や景品表示法に抵触する恐れがあるので注意が必要です。