健康食品の広告表示において、体験談を紹介することはとても重要な要素となります。
特にお客様の生の声は、消費者にとっても有益な情報となるはずです。 しかし、体験談を広告に利用するには、いくつか注意すべき法律が存在します。 制作側が体験談を好き勝手に表示することはできず、規制内容を理解し適切に表現する必要があります。
今回は、特に重要な景品表示法について、解説させて頂きます。
景品表示法と「体験談」
正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」といいます。 商品やサービスの取引に関連する不当な表示を禁止しています。一般消費者の利益を保護することを目的としています。 実際のものよりも「すごくいい!」と思わせてしまう「優良誤認」、実際よりも「すごくお買い得!」と思わせてしまう「有利誤認」などが不当表示にあたります。商品やサービスの品質、価格等を偽って表示することを厳しく規制しており、消費者がより良い商品やサービスを選ぶための法律です。
健康食品の体験談において、景品表示法に照らし合わせた際、使用できない表現があります。 まずは、それらのポイントを見ていきましょう。
1. 不正利用がされていないか
健康食品の 効果効能は、体質により様々です。その前提にありながら実感のない人の体験談は起用せずに効果を発揮した体験談のみを表示するなど、事業者側にとって都合の良い体験談のみを抜粋掲載した際、あたかもすべての人に体験談通りの効能効果があると優良誤認される可能性があり規制の対象となります。
優良誤認について、景品表示法で以下のとおり定められています。
商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
また社内の人員のみで体験談を収集し、あたかもお客様の体験談かのように見せかけるもことも規制対象となります。体験談である以上、事業者の都合に合わせて、事実を捻じ曲げて架空のストーリーを表現することは当然認められません。
社内の従業員やその家族に商品を提供して体験談を収集して実施された調査には、事業者にとって都合の良い結果になる傾向があります。やはり調査対象者と事業者が利害関係にある場合に客観性が確保されにくいと考えられます。その為、客観的に実証されたものとは認められない可能性があります。
また、商品の利用者から送られてくる様な体験談に関しても客観的に実証されたものとは言い難い部分があります。体験談を送ってくる利用者というのは、その商品を購入して実際に効果があった人である可能性が高く、効果のなかった人との比較が難しいでしょう。 そのような体験談においても客観性に乏しく、商品効果の合理的根拠とは認められない可能性が高いでしょう。
そもそも、利用者からの体験談やお礼状自体が、学問として認められている科学的方法によって立証されたものではないため、合理的な根拠として認められないということになります。
健康食品の広告における体験談は、販売促進のためについつい過剰な表現を使用してしまいがちですが、景品表示法やその他法の規制対象となるだけではなく、お客様からのクレームや会社の信頼を落とすことにもつながるため、細心の注意が必要となります。
2. 医薬品的な効能効果を表現していないか
薬機法において、健康食品である以上、体験談において医薬品的な効能効果を表現している場合には、規制の対象となります。
「この健康茶を試した結果、花粉症に悩まされることがなくなりました」「なんと飲み始めてたった2週間ほどで、血糖値が驚くほど下がりました」というように、「花粉症」「血糖値が下がった」という表現は、医薬品的な効能効果として認識され、実際のお客様の声であったとしても、体験談に用いることは規制の対象となります。 たとえ体験談が事実であったとしても、医薬品的な効能効果の暗示する行為は認められません。 薬機法上、体験談が事実かどうかは問題ではなく、あくまでも体験談の内容として医薬品的効能効果を述べていないかで判断されます。
極端にお伝えすると「医薬品的効能効果の暗示」にならなければ良く、たとえ体験談が捏造であろうと事業者側の都合の良いものだけを集めて広告表示をしていたとしても、そこは論点ではないと言えます。 ただ、冒頭で紹介した、景品表示法や健康増進法においては、「消費者に誤解を与えない点」「事実を偽る表現はしない」このような点が問われるので、「医薬品的効能効果の暗示」をしているかどうかは関係がありません。
3. 合理的な根拠がないものは認められない
健康食品の体験談には、事実に基づいた根拠が必要になります。 健康食品の効果効能に関する表示の裏付けとなる根拠として提出する内容が、利用者の体験談やモニターの意見である際、無作為に抽出し相当数のサンプルを用意し、事業者の作為が生じないように考慮する必要があります。
- 日本最高品質を誇る成分〇〇!
- 抜群の効果!失敗しない楽で簡単ダイエット!
- 誰でも効果あり!簡単ダイエット!
上記の様なフレーズで考えた際に、「日本最高品質」「抜群の効果」「失敗しない」「楽で簡単」「誰でも」というような表示に対して合理的な根拠を示すことができない場合、すべて虚偽と見なされてしまいます。 正しい方法で調査し実証できないのであれば、このような表現はできません。
もしこのような表現を行なった場合、消費者庁は優良誤認表示と見なすか否かを判断する必要があり、期間を定めた上で事業者に対し表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めていきます。 事業者が求められた資料を期日内に提出できない場合や提出された資料が体験談の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとして認められない場合、この体験談に対し不当表示と判断され、課徴金納付命令との関係においては、不当表示と推定されます。
また、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出において、その期限を過ぎても提出されなかった場合、景品表示法第5条第1号(優良誤認)に該当する表示とみなされてしまいます。
まとめ
このように、健康食品を販売し広告表示する際、「体験談」は重要且つ有効な広告手段となることがわかります。消費者にとっても他者の体験談は、有益な情報となり、購入の判断材料になるでしょう。
一方、事業者においては消費者の期待感をあおり、共感を呼びやすい結果、購買につながる可能性が高くなるでしょう。しかし、体験談だからといって何を言っても良いというわけではありません。 健康食品であれば、薬機法・健康増進法・景品表示法を十分に理解し、それらを守る必要があるでしょう。
ルールに則ってどのようなことに配慮すべきかを判断する必要があります。