広告制作をするにあたって、「妊娠」 「不妊症」 「妊活」は表現できるでしょうか。 妊活とは、あかちゃんがほしいと考えたり話し合ったり、知識を取り入れて行動を起こすこと、そして医療による不妊治療なども含まれます。あかちゃんをさずかり育てていく生活をめざして行動すること全般を表した言葉です。その意味を指すところは広く、また人によっては大変深い悩みであることも少なくありません。 今回の記事では、「妊娠」 「不妊症」 「妊活」は広告表現において、薬機法上表現できるのか、化粧品、健康食品に分けて考え進めていきます。
お客様により届きやすい広告制作のために、言い換え表現なども紹介しています。 どう表現すればいいのか迷った時の参考にしてみてください。
薬機法とは
正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といいます。間違った情報や認識により、身体に与える影響が大きいため法律で厳しく定められています。 医薬品や医薬部外品、化粧品や医療機器に関する品質・有効性・安全性を確保するための法律です。 対象となるのは下記のとおりです。
- 医薬品(風邪薬、鼻炎薬など)
- 医薬部外品(うがい薬、日焼け止めなど)
- 化粧品(コスメ、シャンプーなど)
- 医療機器(家庭用マッサージ器など)
- 再生医療等製品
景品表示法とは
正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」といいます。商品やサービスの取引に関連する不当な表示を禁止しています。一般消費者の利益を保護することを目的としています。実際のものよりも「すごくいい!」と思わせてしまう「優良誤認」、実際よりも「すごくお買い得!」と思わせてしまう「有利誤認」などが不当表示にあたります。
健康増進法とは
健康増進法は国民保健の向上をはかることを目的とした法律です。広告と健康増進法も無関係ではありません。健康食品の広告を扱う場合には忘れてはいけない大切な法律です。
第六十五条 何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項(次条第三項において「健康保持増進効果等」という。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。
出典:健康増進法
健康増進法に違反する場合となるのは下記の条件を満たした場合です。
- 広告とみなされること
- 健康保持増進効果であること
- 表現内容が誤解を招く表現であること
広告の定義は3つの要素から成り立っています。 1998年9月29日付厚生省医薬安全局監視指導課長通知により、広告の3要素が提示されています。いずれの要件も満たす場合は広告とみなされます。
- 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること。
- 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること。
- 一般人が認知できる状態であること。
健康増進法にかかる広告表現についても、虚偽誇大な表現は認められていません。「これを飲むだけで〇〇が改善される」といった表現などは健康増進法の観点からもおすすめできません。
参考:健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について – 消費者庁
化粧品の広告表現で「妊娠」「不妊症」「妊活」言える?言えない?
直接的に化粧品が妊娠に係る商品というのはそう多くは無いと思いますが、「妊娠線」など妊娠に係る周辺の商品で、広告表現に悩まれることはあるかもしれません。 化粧品の広告で表現できることは「化粧品等の適正広告ガイドライン」で定められている56の効能効果の範囲内と定められています。ですので、この効果の中にない「妊娠」については言及できません。
妊娠線についての広告表現
妊娠線についてまとめます。化粧品で妊娠線について効果があるように広告表現することはできません。
妊娠線とは、妊娠中の急激な体型の変化によってできる肉割れ線のことです。皮膚は「表皮」「真皮」「皮下組織」の三層構造からなり、妊娠によって真皮まで裂けてしまった状態が妊娠線です。 正式名称は、「線状皮膚萎縮症」あるいは「皮膚進展線条」と言われ、海外ではストレッチマークと呼ばれることもあります。 はじめは赤黒い線で、段々と白い線に変化していきます。一度できると完全に消えることはないので、妊婦さんは妊娠線の予防をする方も多く、そのためのクリームやオイルなどがあります。
妊娠線は肌が断裂している状態です。「断裂した肌に効果がある」とは化粧品の効能効果の範囲から逸脱しますので、表現することはできません。予防に関しても同様に直接的に表現することは難しいと考えられます。
化粧品での違反事例
化粧品では妊娠線対策にボディクリームなどがありますが、効能効果の範囲でしか表現できないので注意が必要です。
- 医薬品的な効果効能があるような表現(妊娠線を解消する、妊娠線予防に、妊娠線が治る、妊娠線を改善、できてしまったストレッチマークに)
- 身体の変化についての表現(妊娠線が消える、妊娠線をなくす、ストレッチマーク解消)
- 最大級表現(最大、デラックス処方、最高の、日本一、最高峰)
- 安全性の保証(安心安全、無害、赤ちゃんでも使える、妊婦さんにも安心)
- 有名人や専門家が推薦しているとした表現(医師推薦、厚生労働省が認める、美容師推薦、産婦人科さんおすすめ)
- 他社を誹謗中傷するような内容(これまでクリームはもう使えない、○○社製品より優れた、肌によくないとされている〇〇成分無添加)
化粧品広告での使用が認められる表現
化粧品広告では、「化粧品等の適正広告ガイドライン」で定められている56の効能効果の範囲内に収める必要があります。逆に言うと事実であっても、効能効果範囲外のことは言えないので注意が必要です。 代表的なものには、
- 肌を整える
- 皮膚にうるおいを与える
- 肌にハリを与える
- 肌にツヤを与える
などがあげられます。また「補い保つ」「補う」「保つ」など、効果の範囲であれば言い換えをすることは可能です。
化粧品広告での言い換え表現(参考)
化粧品広告で「妊娠線」「ストレッチマーク」に関連する表現で認められている言い換え表現をまとめました。 これらの言い換えの例を化粧品広告を作成する際の参考にしてみてください。
妊娠線、ストレッチマークに関する表現を言い換えたい時の具体例
NG:妊娠線予防に
OK:お腹の保湿に
NG:できてしまったストレッチマークに
OK:気になる部分にしっとり保湿
健康食品は薬機法の範囲外?
健康食品については、実は薬機法の対象ではありません。ですが、広告で表現する際にその効果が医薬品的な効果を示していると、無承認無許可医薬品という扱いとなって薬機法違反となりますので注意が必要です。 つまり「医薬品」と誤解されるような表現が薬機法違法になります。あくまでも、健康食品は、健康を維持するための食品であるということを念頭において広告制作をすると良いと思います。
健康食品の「妊娠」「不妊症改善」「妊活」広告表現で言える?言えない?
健康食品で「妊娠できる」「不妊症改善」とあたかもこの食品を摂取することで妊娠できると捉えられる表現は、薬機法上も景品表示法も健康増進法にも抵触する可能性が高いです。 では「妊活」はどうでしょうか。「妊活」はただちのそのワードがNGとなるわけではありません。なぜなら「妊娠前や妊娠時」に必要な栄養を補給するという考え方で表現すれば、可能となるからです。
例えば葉酸サプリであれば「胎児の正常な発育に寄与する栄養素」として、妊娠を計画している女性や妊娠中の女性に推奨されているサプリメントの一つです。表現をうまく活用することで、訴求は十分に可能だと考えられます。
参考:葉酸とサプリメント – 厚生労働省
ただし、前後の文脈から明らかに「摂取することで妊娠できた」と読み取れるものは、「妊活」と表現していても法律に抵触する可能性が出てきますので注意が必要です。 医薬的な効果効能を暗示するような表現は、使用できず、医薬品医療機器等法の第68条に抵触する可能性があります。
第68条 何人も、第14条第1項、第23条の2の5第1項若しくは第23条の2の23第1項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であって、まだ第14条第1項、第19条の2第1項、第23条の2の5第1項、第23条の2の17第1項、第23条の25第1項若しくは第23条の37第1項の承認又は第23条の2の23第1項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
健康食品での違反事例
健康食品の広告で、使用がNGとなる内容には次のようなものがあります。
- 医薬品的な効果効能があるような表現(妊娠を促す、不妊症が改善)
- 身体の変化についての表現(妊娠できる、不妊症改善、授かり)
- 特定部位を表す表現(子宮、卵巣、おなか、腸)
- 症状や病名の記載(不妊症)
- 用法用量の指定(夕食後にお召し上がりください、1回1粒でOK)
- 行政機関が認めたような表現(厚生労働省が認めた、〇〇研究所推薦)
健康食品広告での使用が認められる表現
健康食品の広告での使用がOKとなっている表現には次のようなものがあります。
- サポート表現(健康のために、体の中から元気に、健康の維持のために)
- 使用感の表現(飲みやすい、続けられる、香りがいい)
健康食品広告での言い換え表現例(参考)
健康食品の広告で、妊活に関する表現についてまとめました。広告制作の際の参考にしてみてください。
妊活に関する表現を言い換えたい時の具体例
NG:さずかりたいならこのサプリ
OK:さずかる準備にこのサプリ
NG:妊娠を望むあなたに
OK:健康な出産を望むあなたに
まとめ
妊活について、健康食品では「妊娠できる」「不妊症が改善される」と身体の変化や効能効果を表す表現はNGです。「妊活」は栄養補給を目的としていればNGとはなりません。前後の文脈から「妊娠できる」と暗示していると薬機法に抵触する可能性がでてきます。
言い換え表現などを上手に活用することで、訴求力のある広告制作の参考にしてみてください。
※違反事例、言い換え表現についてはあくまで参考として捉えてください。表現の違反等の判断については各都道府県の薬務課によって見解が異なりますので、ご理解頂きますようお願いいたします。