広告制作をするに当たって、「低刺激」「安全性」は表現できるでしょうか。 消費者が健康食品や化粧品を購入する際に気にする一つとして「安全性」が挙げられます。誰しも自分の体のことだから、なるべく安心安全なものを使いたいと思うものです。
今回の記事では、「低刺激」「安全性」は広告表現において、薬機法上表現できるのか、化粧品、健康食品に分けて考え進めていきます。 お客様により届きやすい広告制作のために、言い換え表現なども紹介しています。どう表現すればいいのか迷った時の参考にしてみてください。
薬機法とは
正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といいます。間違った情報や認識により、身体に与える影響が大きいため法律で厳しく定められています。医薬品や医薬部外品、化粧品や医療機器に関する品質・有効性・安全性を確保するための法律です。
景品表示法とは
正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」といいます。 商品やサービスの取引に関連する不当な表示を禁止しています。一般消費者の利益を保護することを目的としています。実際のものよりも「すごくいい!」と思わせてしまう「優良誤認」、実際よりも「すごくお買い得!」と思わせてしまう「有利誤認」などが不当表示にあたります。
化粧品の広告表現で「低刺激」「安全性」言える?言えない?
化粧品の広告では「低刺激」は条件を守って表現することが可能です。「安全性」は表現できないとされています。それぞれ日本化粧品工業連合会の化粧品等の適正広告ガイドラインを元に解説していきます。
「低刺激」は条件付きで言える
「低刺激」については下記の条件をすべて満たせば、表現することは可能です。
- キャッチフレーズとなっていないこと
- デメリット表示が記載されていること
- デメリット表示は「アレルギーテスト済み」等の近傍に記載されていること
- デメリット表示は「アレルギーテスト済み」等の文字と同等程度の大きさで、目立つように記載されていること
デメリット表示とは「すべての方に皮膚刺激が発生しないということではありません」という表記のことです。 強調をせず、見やすい位置や文字の大きさを守ることが必要です。
「刺激が少ない」「低刺激」等の表現は安全性について誤認を与えるおそれがあるので、低刺激性等が客観的に立証されていない場合やキャッチフレーズ等強調する表現は行わないこと。
「安全性」は表現できない
消費者に誤解を与えやすいとして、「安全性」についての表現は禁止されています。
効能効果又は安全性を保証する表現の禁止 効能効果又は安全性を保証する表現の禁止の原則 化粧品等の効能効果又は安全性について、具体的効能効果又は摘示して、それが確実である保証をするような表現をしてはならない。
禁止されているのは「具体的効能効果又は摘示して、それが確実である保証をするような表現」とありますので、原則は禁止とされていると考えられます。
化粧品での違反事例
スキンケアアイテムなど、「低刺激」「安全性」に関する化粧品広告での使用がNGとなる内容には、次のようなものがあります。
- 医薬品的な効果効能があるような表現(よく効きますので安心しておつかいください、低刺激なので誰でも安心して使えます、安全性は確認済、いくら使っても安全、使用法を問わず安全)
- 身体の変化についての表現(肌荒れにも安心、アトピーにも安心安全、肌の奥深くまで浸透)
- 最大級表現(最大、デラックス処方、最高の、日本一、最高峰)
- 安全性の保証(安心安全、無害、赤ちゃんでも使える、比類なき安全性、絶対安全、安全性NO1)
- 有名人や専門家が推薦しているとした表現(医師推薦、厚生労働省が認める、美容師推薦)
- 他社を誹謗中傷するような内容(これまでより安全性が高い、○○社製品より優れた、肌によくないとされている〇〇成分無添加)
化粧品広告での使用が認められる表現
化粧品広告では、化粧品等の適正広告ガイドラインで定められている56の効能効果の範囲内に収める必要があります。逆に言うと事実であっても、効能効果範囲外のことは言えないので注意が必要です。
代表的なものには、
- 肌を整える
- 肌荒れを防ぐ
- 皮膚にうるおいを与える
- 肌にハリを与える
- 肌にツヤを与える
などがあげられます。また「補い保つ」「補う」「保つ」など、効果の範囲であれば言い換えをすることは可能です。
化粧品広告での言い換え表現(参考)
化粧品広告で「安全」に関連する表現で認められている言い換え表現をまとめました。 これらの言い換えの例を化粧品広告を作成する際の参考にしてみてください。
安全に関する表現を言い換えたい時の具体例
NG:子供にも安心
OK:子供の肌にもやさしい
NG:安全性を高めた
OK:肌へのやさしさを考えた
健康食品は薬機法の範囲外?
健康食品については、実は薬機法の対象ではありません。 ですが、広告で表現する際にその効果が医薬品的な効果を示していると、無承認無許可医薬品という扱いとなって薬機法違反となりますので注意が必要です。 つまり「医薬品」と誤解されるような表現が薬機法違法になります。あくまでも、健康食品は、健康を維持するための食品であるということを念頭において広告制作をすると良いと思います。
健康食品の広告表現で「低刺激」「安全性」言える?言えない?
健康食品については明確に「低刺激」や「安全性」を禁止している法律はありません。 ですが、広告の前後の文脈により、景品表示法の観点から指摘を受ける可能性はあります。不当表示を行うことは禁止されているからです。
(不当な表示の禁止)
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
「副作用がないから安全」などと表示すると、医薬品なのかと誤解を与える恐れが出てきます。 このような広告表現は、薬機法第68条(承認前の医薬品の広告の禁止)に抵触するおそれがあります。
(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)
第六十八条 何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であって、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
健康食品での違反事例
健康食品の広告で、使用がNGとなる内容には次のようなものがあります。
- 医薬品的な効果効能があるような表現(副作用はありません、血糖値をさげる、ニキビを治す)
- 身体の変化についての表現(自然の成分だから安全、天然成分を濃縮しているため低刺激、食品だから副作用がない、デトックス、毒出し、美肌効果、腸に効く)
- 特定部位を表す表現(肌、腕、おなか、腸)
- 症状や病名の記載(高血圧、がん、アトピー、便秘)
- 用法用量の指定(夕食後にお召し上がりください、1回1粒でOK)
- 行政機関が認めたような表現(厚生労働省が認めた、〇〇研究所推薦)
健康食品広告での使用が認められる表現
健康食品の広告での使用がOKとなっている表現には次のようなものがあります。
- サポート表現(健康のために、体の中から元気に)
- 使用感の表現(飲みやすい、続けられる、香りがいい)
健康食品広告での言い換え表現例(参考)
健康食品の広告で、安全性の表現についてまとめました。広告制作の際の参考にしてみてください。
安全性に関する表現を言い換えたい時の具体例
NG:副作用がないから安全
OK:食品だから安全
NG:センナのような強い刺激ではなく低刺激の成分を配合
OK:からだにやさしい成分を配合
まとめ
化粧品については「低刺激」については条件を満たせば表記可能です。「安全性」については表現は認められていません。 健康食品は「低刺激」「安全性」ともに事実であり、合理的根拠を提示することができれば、表現することは可能です。
言い換え表現も参考に、訴求力の高い広告制作の参考にしてみてください。
※違反事例、言い換え表現についてはあくまで参考として捉えてください。表現の違反等の判断については各都道府県の薬務課によって見解が異なりますので、ご理解頂きますようお願いいたします。