日本の化粧品会社は世界的に見ても多く、フランス、アメリカの次と言われています。 それは、日本人は化粧・化粧品に興味がある人が多いと言え、またOEMを利用した化粧品を自作する企業(個人)も多い理由からと言えるでしょう。 化粧品容器を製造している日本の企業は数多くあり、容器に印刷する前まで仕上がっている汎用性容器の種類はとても豊富です。 ここでは、化粧品OEMには欠かせない、化粧品を入れている多種多様な容器や、その印刷方法等について解説していきます。
容器について
化粧品の容器には様々な種類がありますが、どのような容器であっても使用者にわかるように、中身、成分等を表示(記載)する義務があります。
(直接の容器等の記載事項)
第六十一条 化粧品は、その直接の容器又は直接の被包に、次に掲げる事項が記載されていなければならない。ただし、厚生労働省令で別段の定めをしたときは、この限りでない。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
薬機法では、化粧品の効果、効能、それらの表現や表示方法など細かく定められているため、化粧品OEM初心者は専門メーカー等に相談しながら作成していくことが、安全確実に製品化する近道とも言えます。
また、具体的に化粧品容器の素材は大まかに言って、プラスチック、ガラス容器、金属容器、紙製容器がありますが、上位2種のプラスチック、ガラスでほとんどを占めています。
プラスチック容器
樹脂が原料で、ほとんどの化粧品の容器はこのプラスチック素材です。デザイン種類も豊富で、高級感のあるものから割安感があるものまで様々です。形状としては、化粧水やシャンプーに使用される「ボトルタイプ」、クリームやジェル状の製品を入れる「ジャータイプ」、洗顔フォームやハンドクリームに使われる「チューブタイプ」の3タイプが多く、他にはマスカラなどの小さな形状のものまで、プラスチック容器は幅広い種類があります。
ガラス容器
その名の通り、硝子から作られています。昔から使われている天然素材のため、環境に優しく高級感も演出できます。ただ、製造コストがかかり汎用性が限られるため、種類が少ないデメリットがあります。また、割れる確率が高いため、商品としてそれを入れる化粧箱やクッション材も必要になります。
金属、紙容器
金属容器は、キャップなどに一部使われているものがあり、またアルミ製のボトルなどもあります。また、紙容器はガラス製の容器を保護するためや高級感を持たせるために使用されます。
容器印刷の種類
主に、化粧品容器の素材はプラスチックやガラスと説明しましたが、先にも述べましたように容器そのものへの表示が必要であり、また表面のデザイン次第で売れ行きに影響があることも想像できると思います。何の表示もない容器への印刷も知識があるのとないとでは、仕上がりに差が出てしまうことでしょう。以下の説明で参考にしてください。
シルクスクリーン印刷
一番利用されている印刷方法です。細かい穴が空いたスクリーンや布のようなもので版を作りそれを枠に張り、そこにインクを乗せて印刷するという技法です。
メリット
- 化粧品の容器への印刷はほぼOK
- インクの種類が豊富
- 文字の擦れが少ない
デメリット
- 印刷代は高め
- 印刷時間がかかる
- 細かい文字や線は潰れてしまい、綺麗に印刷されない
- 金や銀色の表現は難しい
オフセット印刷
パンフレットや雑誌、チラシなどで使われます。感光材を塗った凸凹がない平板の版に光を当て、画像や文字を転写する印刷方法です。プリンターインクでおなじみの、基本色(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)4版でフルカラー印刷できるのでカラフルで鮮明な仕上がりになります。 また、直接印刷面に触れないため、大量印刷が可能です。化粧品容器では、チューブ式の容器やプラスチック素材容器などの印刷によく使われています。
メリット
- 短い時間で大量印刷が出来る
- 大量生産であるほど、低コスト
- カラフルで繊細な仕上がり
- 写真プリントもOK
デメリット
- 少量であると、コストがかかる
- インクが薄い→容器の色が濃いと不鮮明
- 厚いものの直接印刷は不可
インクジェット印刷
平面には精度が高く印字される技法。また、パソコンからのデータを印刷する家庭用プリンターと同じ方法で、データから直接印字するため、版の必要がなくスピーディーな印刷が特徴です。他には、食品のパッケージに表示されている製造年月日の印刷に適しています。
メリット
- 平面で同じ形状のキャップなど、ロットの少ないものに向いている
- フルカラーでの印刷が可能
- 版代がかからない
デメリット
- 大量印刷には向かない
- 広い面への印刷は割高
- 繊細な印刷には向かない
転写印刷
薄い紙に一度印刷したものに熱を加えてプレスする手法です。グラデーションが可能で鮮やかな発色の特徴で、布などの衣類(Tシャツなど)への印刷によく用いられています。データからのデジタル転写なので、版の必要がなく割安です。
メリット
- 色落ちなどがなく、耐久性が高い
- 写真やイラストもきれいに仕上がる
- 小ロット印刷に向いている
デメリット
- 時間がかかる
- プレス跡が残る場合がある
- 素材によっては印刷が不可
ホットスタンプ印刷
「箔押し印刷」とも呼ばれる技法です。金箔や銀箔の上から版を押し付け(プレス)、印刷物(容器)に転写します。金銀を使用するため、高級感を出せることが特徴です。クレジットカードやお札の印刷にも使われ光沢やパール感の表現が可能です。化粧品に高級感を出したい場合には、外箱などにワンポイントで使うなど利用価値がある演出になります。
メリット
- 他の印刷方法にはない、金銀色を使用した高級感のある印刷
- 金銀を使用することで、さらに金属のような光沢感や輝きを表現で来る
デメリット
- 価格は高めになり、時間もかかる
- 金銀の色使いのみ
- 広範囲の塗りつぶしは不可
- 細い線の印刷は難しい
パッド印刷
柔らかなパッドに転写してからスタンプのように押しつけるような印刷方法です。例えば、ゴルフボールの表面に印刷されているロゴは、このパッド印刷です。化粧品容器でも、複雑な形や曲がっている箇所への印刷には最適です。
メリット
- 平面だけではなく、曲面の印刷へも有効
- プラスチックはもちろん、金属、ガラスなど、様々な素材に印刷可能
デメリット
- 広い面への印刷はコストがかかる
- 繊細な表現は出来ない
- 印刷機を保有する会社が少ない
化粧品OEM 売上は容器で決まる
どんなに素晴らしい化粧品を作っても、使っていただけなければ素晴らしさは誰にもわかりません。 まずはその容器を見て、「使ってみようかな」と思っていただくことが必要です。 つまり、容器の形状、デザイン次第で売れ行きが変わっていきます。
容器のデザインは印刷にあり
それぞれの容器は、中に入れられる化粧品の形状(液体か固体かジェル状かなど)により使いやすい形になっています。 OEM化粧品を作成に当たり、このボトル類を選びさらにその表面に印刷していくのですが、その表面プリント次第で売上を左右すると言っても過言ではありません。 誰が見ても「使ってみたい」、「購入したい」と思ってもらえるデザインを考えることが重要といえるでしょう。
発注ロットを考える
また、化粧品を作成するに当たって 「さて、手はじめは何個にしよう?」となることでしょう。 容器は既成のものが何種類もあり、それに印刷やシールなどでカスタマイズしていくのですが、加工の段階で発注ロットの制限などもあります。スタート時は少量(100個程度)からの方がリスクをかけなくて済むと言えますが、印刷方法によっては単価のコストが割に合わなくなる場合もあります。
同業他社の情報を集めるなどして、詳しく調べておくことが今後の経営を左右すると言えるでしょう。