食品製造業は巨大な産業である一方で、近年食品製造業に置ける深刻な人手不足が問題になっています。人手不足を解消するために、省人化(単位経済あたりの労働時間を減少させること)が進んでおり、様々な施策をおこなわれています。食品製造業での人手不足原因はなんでしょうか。この記事では、食品製造業で人手不足をしている原因や省人化の方法について紹介します。
食品製造業で人手不足している原因
なぜ食品製造業で人手不足が深刻化しているのでしょうか。人手不足が起きる原因としては、次の3つが挙げられます。
- 労働人口の減少
- 製造業全体の悪い印象
- 離職率の上昇
労働人口の減少
理由の一つに労働力が大きく減少していることが挙げられます。少子高齢化により、本来企業が欲しい人手に対して、労働できる人の数が少なく首都圏へ一極集中という人口の大きな偏りが労働力の減少につながっています。このように首都圏では人手を確保することは、比較的容易ですが地方だと労働人口が減ってしまい、人材確保が困難になります。
製造業全体の悪い印象
次に、製造業全般へのマイナスな印象の定着です。バブルが崩壊して不景気を元に、製造業はどことなく「キツそうで、身体に危険があり、衛生的に汚いのではないだろうか」という印象が加わってしまいました。
離職率の上昇
なぜ現代では、希望して就職したのにもかかわらず、離職率が高いのでしょうか。それは、人手不足が業務に与えている影響が大きいことが挙げられます。人手不足により、従業員の時間外労働が増えてしまうことにより、休暇の取得が減少してしまいます。その結果、職場の雰囲気が悪くなってしまうことで、技術の継承が難しくなってきてしまうのです。そして業務のミスが少しずつ増えていき、納期が遅れてしまい顧客からのクレームが増加していきます。業務の見直しをしたいのに従業員の数が少ないので、業務の見直しや改善ができないのです。このような悪循環により、さらに従業員の離職率が上昇していきます。足りない労働力を外国人労働者を採用して穴を埋めるという方法もあります。しかし、長期的な戦略を考えると得策ではありません。理由としては、言語の壁や文化の違いなど業務を教えるうえで非効率的なことが考えられます。低生産性のまま外国人労働者を加えることは、先を長く考えると問題が起きてしまう可能性が高いというふうに考えられているからです。外国人労働者を過剰に当てにしてしまっている工場の運営は、企業が本来持っていた分野か高い技術力などが衰退する可能性があります。
生産向上のための省人化するメリット
一つの業務にかかる時間を見直すことにより、1人分の仕事を減らし製造業務から社員を抜くことを省人化といいます。例えば、5人で行っていた作業を4人で行うことができるようになるので、1人に違う仕事を任せることができるようになります。省人化が可能になれば、最終的に仕事に掛かる人的工数を減らすことができるようになるため、従業員にかかる費用を抑えることができます。
省人化には具体的にどのような施策があるのでしょうか。
チャットボットによる施策
省人化の施策の一つとして、人事やIT部門、営業活動、コールセンターでの活用が挙げられます。従業員や顧客からの似たような問い合わせがくる場合、その都度問い合わせに追われてしまいます。問い合わせ自体が多すぎて対応しきれなくなったりする場合は、対話形式の自動問い合わせが可能なチャットボットを導入して活用することで、担当者たちの負担を軽減することができるのです。実際にチャットボットを導入をすることにより、問い合わせが約半減したという事例もあります。
製造業の自動化
さまざまな製造工程を自動化することです。食材を砕いたり、混ぜたりの工程を自動化することであったり、高感度の検査機器を使用することで、不良品を的確に排除することができるので、品質の安定化や生産性の向上を図ります。人間で行っていた多くの工程を機械に任せることで、人員をかなり削減することが可能です。そしてキャリアの従業員の技術に依存することなく、誰であっても同じ精度ですべての工程を完遂させることができるのです。
ある工場では多くの種類の食品を製造していますが、機械の数が限られている関係で、機械の種目を都度切り替えをする必要がありました。その際に別の品種の製造した商品が混ざってしまうというミスが発生しており、複数のクレームに繋がっていました。ミスやクレーム対策として、1人を検査場に常に置いて目視の検査を行いましたが、食品の形状や色が非常に似ていたために不良品を迅速に選別することは、大変難しい状態でした。そこで色の選別が出来る機械を導入することで、選別、そして空気で自動ではじくことができるようになり、省人化をすることができました。そして結果的に大きなコストの削減につながりました。
少子高齢化がすすんでいる現代の日本で、人材の確保が地方では厳しくなっていくことから省人化を進めていくことは、リスクマネジメントの視点からも有効といえます。そして、従業員の高齢化に加え、省人化が進んでいないことが原因で、業務中の怪我や死亡事故につながることが危険視されているのです。人材不足と作業工程の効率化に加え、従業員の安全も確保することができるものが省人化の導入です。
生産向上のための省人化するデメリット
メリットだけではな、デメリットもあります。省人化を実現するために、AIやロボットを使った自動化が主な方法となりますので、システムや設備を導入するための初期投資するための経費が必要になってきます。また、システムやロボットを導入するのには、相応の専門性の深いスキルを持った新しい労働力が必要になってきます。設備導入のための経費と、新たな人員の確保に経費をかけたものの、経費の削減もできなくて、さらに余計な経費が追いかぶさってくるという結果になってしまう事態も考えられます。そして現場に対してのヒアリングが上手くいかず、新たなシステムを導入したものの、現場担当者が良く合わずに結局負担が減らずに、逆に倍増してしまった。という例もあります。そのため、自動化することで楽になるならと軽率に判断せずに、十分に事前準備をすることが重要となるでしょう。
今後の課題
食品製造業は、製品の効率的な生産に向けての自動化を積極的に行うことが大切なことですが多くの課題が食品製造業ではあります。
食品の製造をする工場では、形や品質が全く同じではありません。キュウリやナスは、曲がり具合や大きさ、色見、収穫時期までが異なってきます。その違いに柔軟に対応できるロボットでないと工場で使用することができません。
次に、季節ごとに食材は旬なものが異なってくるため、製造ラインや装置の入れ替えが求められます。そして季節ごとに都度新商品を発売するので、生産品目での変更も求められます。さらに、食材だけでなく、それを利用して製造した商品にも、おせち料理やクリスマスケーキなどの季節性があり、同じ生産機械ではあるのに通年で使用できないということも多々あります。ロボットやAIは当然安価なものではないので、経費をかけること自体ができないという経営者もいます。
省人化の今後の課題として、まずは柔軟な対応が可能なロボットでかつ可能な限り安価で丈夫なものを製造することが重要になってくるでしょう。そして、そのロボットを扱える専門知識を蓄えている従業員を新たに増員することが課題に挙げられます。