将来に向けて、物忘れや認知機能の低下はなるべく予防しておきたいものです。
最近では、記憶力や認知力に作用する医薬品が発売されていますが、化粧品や健康食品、美容機器でこれらの広告表示を行うことは薬機法や景表法に違反してしまいます。 物忘れの治療や認知症の予防などの広告表現は、その製品に医薬品的な効果効能が得られるかのような広告表示に該当します。
本記事では、物忘れについての広告表現と薬機法・景表法の関わりや、言い換え表現についてご紹介します。広告制作に関わる方は、薬機法や景表法について事前にしっかりチェックしておきましょう。
化粧品、健康食品、美容機器が「物忘れに効く」広告表現は薬機法違反
サプリメントなどの健康食品の広告において、使用するだけで物忘れが改善するような表示を行うと、「未承認の医薬品広告」を標榜しているとして薬機法違反となります。
(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)
第六十八条 何人も、医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、承認認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
(薬機法第68条より引用)
「物忘れに効く」は優良誤認表示に該当する可能性も
また、これらの広告表示は優良誤認表示として景表法違反にも該当します。
優良誤認表示とは、商品の効能効果について著しく優良であると消費者が誤解する恐れのある広告表示を指しています。
(不当な表示の禁止)
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
(景表法第5条より引用)
過去には健康食品の広告にこれらの効果があるとした表現を使用していたとして、消費者庁による改善指導を受けた事例が報告されています。
「物忘れに効く」と暗示させる画像も使用NG
広告規制の対象となるのは、広告に記載するワードだけではありません。
広告に使用する写真やイラストなどの画像も薬機法や景表法に抵触していないか注意が必要です。 広告に使われる画像は、細かい文字が読みづらいシニア世代には特に影響度の高い情報です。何かが思い出せなくて首をかしげているような画像は、物忘れの症状を暗示していると判断される可能性があります。 消費者の不安を煽るようなネガティブな画像は、過剰な表現とみなされるリスクも高くなります。広告に使う画像は、元気でハツラツとしているなど、ポジティブな表情のものを選びましょう。
化粧品での違反事例
化粧品広告での使用がNGとなる内容には次のようなものがあります。
- 治療表現(改善、治る、治療)
- 承認されていない効能効果(物忘れが改善する、記憶力が良くなる)
- 症状や病名の記載(物忘れ、認知症、ボケ)
- 不安を煽る表現(病気の信号ですよ、このままでいいの?)
- 安全性の保証(安心安全、100%、副作用の心配なく)
- 最大級表現(最高、最大、抜群、無類)
- 有名人や専門家が推薦しているとした表現(医師の推薦、芸能人もおすすめ)
- 他社を誹謗中傷するような内容(○○社製品にはない、これまでにない)
化粧品広告での使用が認められる表現
化粧品広告に使用が認められる効能効果は、原則として「化粧品等の適正広告ガイドライン」で定められた56項目に限られています。
また、使用感の表現(しっとり、サラサラ)はOKとなります。
化粧品広告での言い換え表現(参考)
化粧品広告で物忘れについて表現する際に認められている言い換え表現をまとめました。これらの表現例を化粧品の広告を作成する際に参考にしてみてください。
物忘れに関する表現を言い換えたい時の具体例
NG:物忘れが治ります
OK:知的な毎日を送りたい方に
NG:認知症予防に
OK:歳を重ねても知的でありたい方に
健康食品での違反事例
健康食品広告での使用がNGとなる内容には次のようなものがあります。
- 医薬品的な効果効能があるような表現(改善、再生、治療)
- 身体機能の変化についての表現(知的健康、認知力、記憶力)
- 特定部位を表す表現(脳、認知機能、自律神経)
- 症状や病名の記載(物忘れ、認知症、更年期障害)
- 用法用量の指定(就寝前に、1日1回飲むだけ)
- 不安を煽る表現(病気の信号ですよ、このままでいいの?)
- 安全性の保証(安心安全、問題なし、副作用の心配なく)
- その製品を使うだけで良いといった表現(病院いらず、何もしなくても)
- 最大級表現(最高、最大、世界初)
- 有名人や専門家が推薦しているとした表現(医師の推薦、芸能人がおすすめ)
- 他社を誹謗中傷するような内容(○○社製品にはない、これまでにない)
健康食品広告での使用が認められる表現
健康食品の広告での使用がOKとなっている表現には次のようなものがあります。
- サポート表現(健康維持のために、美容のために)
- 使用感の表現(もちもち、ふわふわ、食感が良い)
使用には注意が必要となる表現
身体の部位を表すワードに合わせての使用はNGです。
- 若々しさをケア
- 知的に健康対策
- うっかりが気にならなくなった
健康食品広告での言い換え表現例(参考)
健康食品広告で物忘れについて表現する際に認められている言い換え表現をまとめました。
これらの表現例を健康食品の広告を作成する際に参考にしてみてください。
物忘れに関する表現を言い換えたい時の具体例
NG:物忘れが改善
OK:若々しさをケア
NG:記憶力を高める
OK:知的な毎日を送りたい方に
美容機器、雑貨での違反事例
美容機器や雑貨広告での使用がNGとなる内容には次のようなものがあります。
- 医薬品的な効果効能があるような表現(改善、再生、治療)
- 身体機能の変化についての表現(知的健康、記憶力、認知力)
- 特定部位を表す表現(脳、認知機能、自律神経)
- 症状や病名の記載(物忘れ、認知症、ボケ)
- 用法用量の指定(就寝前にお使いください、1日1回必ずご使用ください)
- 不安を煽る表現(このままでいいの?、病気の信号ですよ)
- 安全性の保証(安心安全、大丈夫、副作用の心配なし)
- その製品を使うだけで良いといった表現(使うだけで、病院いらず)
- 最大級表現(最高、最大、最高峰、ナンバーワン)
- 有名人や専門家が推薦しているとした表現(医師推薦、芸能人がおすすめ)
- 他社を誹謗中傷するような内容(○○社製品よりも優れて、これまでにない)
美容機器広告での使用が認められる表現
美容機器や雑貨の広告での使用がOKとなっている表現には次のようなものがあります。
- サポート表現(健康維持のために、美容のために)
- 使用感の表現(軽い、使いやすい、持ち運びに便利)
使用には注意が必要となる表現
身体の部位を表すワードに合わせての使用はNGです。
- 歳を重ねても知的でありたい方に
- うっかりが気になる方に
美容機器、雑貨の広告での言い換え表現(参考)
美容機器、雑貨などの広告で物忘れについて表現する際に認められている言い換え表現をまとめました。これらの表現例を健康食品の広告を作成する際に参考にしてみてください。
物忘れに関する表現を言い換えたい時の具体例
NG:物忘れが治る
OK:歳を重ねても知的でありたい方に
NG:認知症の予防に
OK:知的な毎日を送りたい方に
まとめ
認知や記憶といったワードは、認知機能という身体機能を変化させる効果を暗示させると考えられます。こうした表現は承認されている範囲を超えた効能効果や医薬品と同じような効能効果に該当するため、控えた方が無難です。 また、実際の商品より著しく優良であるかのような広告表示は優良誤認表示として景表法違反にあたります。優良誤認表示は消費者との大きなトラブルに繋がりやすいため、広告制作の際は十分に気を付けましょう。
※違反事例、言い換え表現についてはあくまで参考として捉えてください。表現の違反等の判断については各都道府県の薬務課によって見解が異なりますので、ご理解頂きますようお願いいたします。