健康食品を扱う上で、消費者にとって国の許可を得ている食品であるのか否かは、安心や信頼を得る上でとても大切な事項です。また、その宣伝の仕方や、具体的にどのような健康食品が国の許可を得る事が出来るのか、などの知識も健康食品を開発する上で大変重要です。まず、食品の分類についてお話しします。
食品の分類について
食品は、主に「特定用途食品」「保健機能食品」「その他の食品」という3つのカテゴリーに分類されます。そのなかでも今回は、保健機能食品の中に分類される、特定保健用食品と栄養機能食品についてお話していきます。
保健機能食品とは
まず、保健機能食品に分類される食品とは、病気にかかっていない人を対象とした食品で、病気の治療や予防のために摂取するものではないということが前提となってきます。そして、国が定めた安全性や有効性に関する基準に従って、食品の機能が表示されている食品です。要するに、特定保健用食品、栄養機能食品は、どちらもその食品が健康の維持、増進のために一定の効果があることを表示されている食品であり、あくまでも病気の予防や治療を目的としてない食品である、ということです。
では、いよいよ、今回のテーマであるこの特定保健用食品と栄養機能食品の違いを見ていきます。
特定保健用食品とは
これは、良く耳にする「トクホ」と言われている食品で、必ず国の認可を得たマークが表示されており、健康増進法と食品表示法により規定されています。特定保健用食品は、体の生理学的機能などに影響を与える保健効能成分(関与成分)を含み、その摂取により、健康の維持、増進が期待できる旨の表示ができる食品です。特定保健用食品として販売するには、食品ごとに食品の有効性や安全性について国の審査を受け、許可を得なければならない、と健康増進法第43条第1項で述べられています。
要するに特定保健用食品は、製造会社で実験や研究を重ね、その効果があった事を証明していることを踏まえて、その科学的根拠のもと、国に申請し許可がおりている食品だということです。また、錠剤やカプセルも対象となります。許可されている表示の例としては、「〇〇には、Aが含まれているため、Bの効果が期待出来ます。●●●の気になる方に適しています。」
などと表記されています。
商品例
- おなかの調子を整える食品
(例:ビフィズス菌、オリゴ糖類、乳酸菌、ヨーグルト、ファイバーなど)
- コレステロールが高めの方に適する食品
(例:油、豆乳飲料、お茶、大豆タンパクで出来た製品など)
- 血圧が高めの方に適する食品
(例:お茶、清涼飲料水、野菜ジュース、錠剤など)
- 骨の健康維持に役立つ食品
(例:スキムミルク、ソーセージ、お茶など)
- 歯や歯ぐきの健康が気になる方の食品
(例:キシリトールガム、タブレットなど)
- 血糖値が気になる方に適する食品
(例:味噌、お吸い物、お茶、ファイバーなど)
- 血中中性脂肪が気になる方に適する食品
(例:お茶、炭酸飲料、ソーセージなど)
- 体脂肪が気になる方に適する食品
(例:お茶、コーヒーなど)
- カルシウム等の吸収を高める食品
(例:豆乳飲料、ふりかけ、カルシウムなど)
- 肌の水分を逃しにくい食品
(例:粉末清涼飲料水、錠剤など)
栄養機能食品とは
これは、保健機能食品の中でも、特に栄養バランスが気になる方を対象とした食品で、食品表示法により規程されています。要するに、普段の食事の中で、1日の必要量を満たす事が難しい栄養成分(ビタミン、ミネラルなど)の補給を目的とした食品となります。製造会社は、既に科学的な根拠が認められている栄養成分がその食品の中に一定の基準量を含んでいれば、届け出や許可なく、国が定めた表現によって、機能を表示することが出来ます。栄養機能食品として販売するためには、一日当たりの摂取目安量に含まれる当該栄養成分量が、定められた上・下限値の範囲内にある必要があるほか、基準で定められた当該栄養成分の機能だけでなく注意喚起表示等も表示する必要がある、ということが、食品表示基準第7条及び第21条で述べられています。
許可されている表示の例として、「この食品には、Aが入っています。Aは〇〇〇の健康維持に役立ちます。」などのように表記されます。栄養機能食品として表示出来る栄養成分は、以下のものだけに限定されます。
- ミネラル類:亜鉛、カリウム、カルシウム、鉄、銅、マグネシウム (6種類)
- ビタミン類:ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、葉酸 (13種類)
- 脂肪酸 :n −3系脂肪酸 (1種類)
商品例
- 各栄養素のサプリメント類
- ウエハース、クッキー、煎餅などのお菓子
- お茶、ジュース、清涼飲料水などのドリンク
- ヨーグルト、飲むヨーグルトなどの乳飲料
- コーンフレーク、グラノーラ、シリアルなど
- バーなどの健康補助食品
- タブレット、チコレート、キャンディーなど
広告を出す際のポイント
表示すべきポイント
特定保健用食品
- 特定保健用食品であること。
- 健康の維持増進の役立つ、又は適する旨を表示(疾病リスクの低減に役立つ旨を含む)例:糖の吸収を穏やかにします。
- 1日あたりの摂取目安量
- 摂取する上での注意事項
- 消費者庁長官から許可されたものであるマークを表示
栄養機能食品
- 栄養機能食品である事
- 栄養成分の機能の表示(国が定める定形分)例:カルシウムは骨や歯の形成に必要な栄養素です。
- 1日あたりの摂取目安量
- 摂取する上での注意事項
- 消費者庁長官による個別審査を受けたものでは無い旨を表示
注意事項
特定保健用食品、栄養機能食品のいずれも、法律で定められている機能を表現する事が出来ますが、表現可能な範囲を誇大に表示したり、一部分を抜粋して使用することはできません。
誇大表示の例:
- 最高のダイエット食品
健康への効果は個人差があります。無数にある商品の中で最高に効果があることを立証することは一般的には困難であり、このような表示は、消費者に誤認を与えます。
- 効果のあった体験談の抜粋
体験談はあくまで個人の感想であり、都合の良い箇所のみ抜粋して掲載されている場合があります。効果を保証する科学的根拠がない場合もあるので注意が必要です。
商品表示の例:カルシウム入りのウエハース(栄養機能食品)
⭕️正解の表示例 →「このウエハースにはカルシウムは入っています。カルシウムは骨や歯の形成に必要な栄養素です。」
✖️不正解の表示例 →「このウエハースは、骨や歯の形成を促します。」
以上のように、
特定保健用食品であれば承認された表示を守る必要があります。
栄養機能食品であれば、可能表示の範囲で適切に表現することが必要になります。
しかし、その内容を逸脱すると違反となってしまうため、十分に注意して広告表現をする必要があります。
特定保健用食品と栄養機能食品の違いのまとめ
- 特定保健用食品、栄養機能食品はどちらも、病気にかかっていない人を対象に、健康の維持増進を目的としており、一定の効果がある事が表示されている食品です(保健機能食品のカテゴリーに含む)。
- 特定保健用食品は国から個別の許可を得ており、栄養機能食品は個別の許可を得ていない食品です。
- 特定保健用食品は、食品ごとに、科学的根拠を実証した上で、国に届出を出して許可を得ている食品で、栄養機能食品は、既に科学的根拠のある栄養成分がその商品に一定量含んでいれば、届出や許可なく販売できる食品です。
- 特定保健用食品、栄養機能食品のいづれに関しても、国の定める食品表示を守る必要があり、誇大広告や、消費者に勘違いを招く表現での広告は法律で禁じられています。