昨今の健康ブームで、新規で健康食品事業を始めようと画策している方も多いのではないでしょうか。しかし健康食品の開発・販売には様々な許可や資格、知識が必要となります。そのほか売上を伸ばすためには市場のマーケティング、パッケージデザインなどの販売促進も必須となり、それらを個人・自社で行おうとすると莫大な時間・コストがかかります。
そのため許可取得・製造・販売、全てを一括で委託することで、少ない手間と低いコストで健康食品事業を開始できる健康食品OEMに注目が集まっています。さらに健康食品OEMはすでに知名度のある商品の類似品が作れるため、新規参入でも一定の売上が見込むことが出来ることもメリットのひとつです。今回の記事ではその健康食品OEM市場規模やその動向を紹介します。
コロナ禍での巣ごもり需要・海外からの受注により健康食品OEM市場は回復・拡大傾向
健康食品受託製造(OEM)市場規模は2019年度1,554億円(前年度比3.2%減)、2020年度は1,566億円(同0.8%増)を見込む。 2019年度に縮小に転じたものの、2020年度は再び拡大に転じる見込みで、長期トレンドでは拡大基調を辿る見通しである。
出典:日本経済新聞
2020年の新型コロナウイルスの発生直後は訪日外国人観光客需要の減少、健康食品開発・販売会社の新商品発売や既存商品のリニューアルが延期になったことから市場規模は縮小傾向にありました。2020年度に入ってからは引き続き訪日外国人観光客需要の減少や、外出自粛によりオフライン店舗での売上が下がった影響がありました。その一方で健康志向の高まりを受けオンライン販売による免疫関連商品やコロナ太りを解消するダイエット関連商品の売上が伸び、市場は好転しました。
今後もコロナウイルスによる巣ごもり需要(ストレスケアや免疫向上、ダイエット関連の機能性表示食品)は売上の拡大が見込まれています。また東南アジアを中心とした海外からの受注、それに関連する健康食品OEM企業の売上が大きく伸び、今後の健康食品OEM市場は海外が大きなカギを握ると言われています。
売上を伸ばしている健康食品OEM企業の戦略
OEM企業のうち、特に好調に推移しているのは三生医薬や東洋新薬、アリメント工業、富士カプセルなどの大手企業が中心です。既存顧客からの売上のほか、設備投資や独自原料・技術研究開発を強化することにより、受注を伸ばすことに成功しているためです。また書類作成などのトータルサポート体制など「製造面以外のサービス」を充実させ新規の受注獲得を狙う戦略が多くみられました。
製造面以外のサービスの例
- 原料の選定や製品の形状などの商品企画
- 許可申請書類の作成サポート
- 市場のマーケティング
- 製造ロットや概算見積もり
- パッケージデザイン
- サンプル品の提示
- 宣伝資材の作成・提供などの販売促進
- 勉強会や説明会での講師の派遣
こうした「製造面以外のサービス」を充実させ、他社との差別化を図る企業はますます増えていく事が予想されます。
健康食品OEM業界の動向
コロナウイルスの影響で一時縮小した市場も、巣ごもり需要・海外からの受注により健康食品市場は回復・拡大傾向にあります。しかしコロナウイルス感染拡大による市場やニーズの変化、海外からの需要が増えているなど、近年健康食品OEMを取り巻く環境は大きく変化しており、対応が急がれます。
以下で健康食品OEM業界の動向をまとめました。
独自の原料や技術の開発
健康食品の原料や形状は多岐にわたり、多くの企業は様々な顧客のニーズに応えるため独自技術の開発を進めています。また小ロットでの製造や包装資材、サポート体制で他社との差別化を図る企業も見られます。
海外輸出の準備(認証の取得など)
海外での日本製健康食品の需要拡大していますが、日本と海外では健康食品を販売する際の取り決めや、食品と医療品の線引き、必要な許可などに大きな違いがあります。そのため海外輸出に対応した認証の取得や社員の教育をすすめる企業が多くみられます。
人材不足解消のため機械・自動化の導入
AFC-HDアムスライフサイエンスやバイホロン、日本タブレットなどが積極的に取り組んでいます。また機械化・自動化により人材不足解消だけでなく、健康食品の品質を一定に保つことができるという効果も期待できます。
近年の市場動向に対応した組織・社員改革
アピやアリメント工業などが研究部署を強化しているほか、三生医薬や日本タブレットは社内横断部署の設立を進めています。さらに日興薬品工業や大同薬品工業、日成興産は営業社員のマルチ化により研究面や営業面の強化を図るなど、社員・組織を昨今の市場に合わせ改革する動きが広まっています。
健康食品OEM業界の課題
新型コロナウイルスの影響を受け一時停滞するも、近年好調に売上げを伸ばしている健康食品OEM業界。さらに今後は海外からの需要拡大も見込まれますが、業界にはどんな課題があるのでしょうか。以下で今後の健康食品OEM業界の課題をまとめました。
海外需要への対応
新型コロナウイルスの流行により一時は停滞した海外需要ですが、現在は中国や東南アジアを中心とした海外からの需要が高まっています。今後健康食品OEM市場が売上を伸ばすには越境ECなどを利用した海外展開が必須であり、認証の取得や社員の教育などの準備が課題となります。
独自性の確立
異業種から健康食品市場に参入する企業が増えている今、新規の受注を獲得するには、他社との差別化を図らねばなりません。具体的には原料や技術の開発、より手厚いサポート体制など、様々な顧客のニーズに対応できる独自性の確立が必要となってきます。また昨今の健康食品は商品だけではなく包装資材も重視されるようになっており、それぞれの包装資材の特性を理解し多くの提案ができることも強みになります。
人材不足への対応
市場の拡大が進む健康食品OEM市場で人材不足は大きな課題です。人材の不足により十分なサービスが提供できないことは新規の受注量だけでなく、既存顧客の囲い込みにも大きな影響を及ぼします。人材不足を解消するため、機械化・自動化が必須になるほか、社員の教育も進めていかねばなりません。
インターネット販売への対応
コロナ禍でオフライン店舗の売上が減少する中、外出自粛の影響でインターネット販売の売上が急増しています。今後の健康食品市場は店舗以外の販路開拓が必須であり、国内だけでなく海外も含めたインターネット販売サポートの需要の急増が見込まれます。また店舗販売とインターネット販売では必要な許可が違ってくるため、インターネット販売に対応できる許可の取得は必須となってきます。
健康OEM市場の将来性
日本の健康食品は国内でも人気がありますが、海外からの注目が高まっています。特に中国、東南アジア各国からの需要や、海外企業の日本法人や仲介人を経由した輸出拡大、越境ECを利用した海外販路拡大への期待が高まっています。さらに健康食品市場は海外からの需要だけでなく、国内でのインバウンド需要やアウトバウンド需要も含めて増加していくと予想されます。異業種ブランドメーカーの新規参入や海外の日本製健康食品への需要拡大を受け、市場はますます成長していくことが予想され、健康食品OEMの未来は将来的にも明るいと言えます。
しかし健康食品販売には様々な許可や資格、知識が必要となるほか、商品開発から販売促進まで多くの手間やコストがかかります。そのため健康食品OEMを始める際は、許可取得・書類作成やパッケージデザイン、販売促進など製造以外のサポートが充実している企業を選ぶことが賢い選択と言えます。