2020年と2021年、2年続けて薬機法が改正され、罰則の追加や制度が見直されました。
「どこが変わったのか分かりにくい」「どこが広告を扱う上で大事なの?」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。 そこで、2020年と2021年の薬機法改正のポイントについて解説します。
2020年・2021年施行の薬機法改正の理由と概要
2020年・2021年に改正された薬機法ですが、改正の主な理由を以下のように厚生労働省は発表しています。
「国民のニーズに応える優れた医薬品、医療機器等をより安全・迅速・効率的に提供するとともに、住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができる環境を整備する」
なぜこのタイミングで薬機法が改正されたのか気になりますよね。 2014年に薬事法から薬機法へと名称が変わった際に、施行後5年を目安として見直しをすることとされていたため、今回見直され薬機法改正となりました。 以下の4つが今回施行された薬機法改正の概要です。
1.医薬品、医療機器等をより安全・迅速・効率的に提供するための開発から市販後までの制度改善 2.住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができるようにするための薬剤師・薬局のあり方の見直 3.信頼確保のための法令遵守体制等の整備等 4.その他
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等 の一部を改正する法律(令和元年法律第63号)
改正された薬機法が施行される期日は、以下の3回に分かれています。
- 2020年9月1日
- 2021年8月1日
- 2022年12月1日
2020年9月施行の薬機法改正のポイント
2020年に施行される薬機法の改正ポイントは「医療・薬剤師/薬局・服薬」です。 医療に関しては、治験の段階で有効だと思われる医薬品を優先的に承認したり、小児の飲む量も飲む回数の決定等を優先に審査できるように「先駆け審査指定制度」が法制化されました。
また、薬剤師が調剤時以外にも必要に応じて、服薬の把握や指導をすることができるようになったりと、薬剤師の義務や薬局のあり方の見直しがされました。
その他にも、一度対面で処方された調剤と同一内容の処方であれば、テレビ電話等のオンラインで服薬の指導を受けることができるようになったのです。
2021年施行の薬機法改正のポイントは「課徴金制度」
広告を扱っている方にとって、とても重要なのが2021年8月1日に施行になった「課徴金制度」です。
消費者庁の2020年における消費者被害・トラブル額の推計によると、「すぐ痩せます」などの虚偽、誇大広告による被害額は約3.8兆円となっています。 この3.8兆円は、消費者が実際に支払った金額にクレジットカードなどの今後の支払い金額を足したものになり、調査をした時の消費者の回答に基づく結果なので正確な金額とまでは言えませんが、消費者の方が実際に支払った金額なので、膨大な金額のトラブルが起こっていると言えます。
今回の改正の背景には、この被害額だけではなく、薬機法第85条が関係しています。 第85条の現行の罰則は「2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金に処し、またはこれを併科する」とされています。
この罰則だけでは、違法行為によって得られる利益に対して罰金が少ないため改正前の罰則では抑制効果が機能しにくく、健康食品などの薬機法上の業許可を持たない事業者に対しては、許可の取り消しができず抑制効果が得られないという課題点から今回の薬機法改正で課徴金制度へと変わっていったのです。
課徴金は商品の売り上げ額の4.5%
どのくらいの課徴金が課せられるのか気になるところですよね。 違法行為を行なっていた期間中の商品が売り上げ金額の4.5%が課徴金として徴収されます。
ただし、課徴金が225万円以下(違法行為を行なっていた期間中の売り上げ金額が5000万円以下)の場合には、課徴金は免除とされています。
違法行為を自ら厚生労働大臣に報告した場合には減額措置がある
自主的に違反行為を厚生労働大臣に報告した場合には、50%の減額措置があります。 しかし、調査があったことにより、課徴金の納付命令が出ることを予測して自主的に報告するのは対象外です。
薬機法と景品表示法の両方で課徴金を受ける事もある
景品表示法は、品質や規格・価格などを実際よりも優位に見せること不当な表示を禁止している法律です。 場合によって、薬機法と景品表示法は別の法律になるので、両方で課徴金が課せられる事があります。
- 景品表示法の課徴金:総売上の3%
- 薬機法の課徴金:総売上の4.5%
となっています。
この場合、「薬機法と景品表示法の両方の7.5%を払わなければいけないの?」と思いがちですが、差額分の1.5%を追加で納付すればよいということになっています。
課徴金制度はブロガーやインフルエンサーなどの個人も対象になる
課徴金制度の対象は、販売元の事業者だけではなく、虚偽・誇大広告を投稿したブロガーやSNSのインフルエンサーなどの個人も含まれます。
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
上記の第66条に記載があるように、薬機法は『何人も』と誰もが虚偽・誇大広告を記述や流布してはならないと決まっています。 そのため、個人やインフルエンサーも事業者から依頼を受けて虚偽・誇大広告をSNSやインターネット上に投稿した場合には薬機法違反となり、課徴金制度の対象となるのです。
どのような表現が薬機法違反になる?
最後に、どのような表現が薬機法違反になるのか、一部を紹介します。医薬品のような表現はできないので覚えておくと安心です。
- 「便秘に効く」
- 「腸の調子を整える」
- 「デトックスできる」
- 「吸収を高める」
- 「更年期」
- 「疲労回復」
- 「冷え性」
このような表現は医薬品以外できません。また、美容関連の表現も注意が必要です。
- 「アンチエイジング」
- 「肌にハリ・ツヤを与える」
- 「老化防止」
- 「ターンオーバー」
- 「美白」
- 「髪の毛が伸びる」
上記は一例ですが、このように表現をしてしまうと薬機法違反になるので気を付けましょう。
また、「お休み前に」「毎食後スプーンで2杯ずつ」という飲む時間や量の指定は薬機法上できないので、一日2粒飲む健康食品の場合には、必ず『一日2粒目安』と目安という言葉を入れる必要があります。 そして、飲み方も指定する事ができません。「粉で飲みにくいので、牛乳と一緒に飲むとおいしく飲めます。」というように、おいしい飲み方は紹介することはできるので、そのような紹介に留めるなど注意をしましょう。
個人の体験談(お客様の声)も要注意
個人の体験談やお客様の声も広告とみなされるので注意が必要です。 薬機法は、医薬品の効能や効果をうかがわせるわせることはできないので、体験談でその内容を記載してしまうと、薬機法違反になります。 以下のような体験談は、薬機法違反となるので記載や投稿は出来ません。
- 「子供のアトピー性皮膚炎がひどく悩んでいましたが、この飲み物を飲み始めてからきれいになりました。」
- 「肌荒れが酷かったのですが、友人に勧められて飲み始めたところ、嘘みたいに肌荒れがなくなりました。」
そうなると、どのような体験談やお客様の声がOKなのか気になりますよね。 薬機法上、使用感や広告に当たらない感想であれば問題はありません。 例えば、「すっきりしていてとても飲みやすい」という使用感や「粒が小粒で簡単に飲めました」などの広告に当たらあい表現は問題がないということになります。
体験談やお客様の声はそのまま載せてしまいがちなので注意しつつ、薬機法違反にならないように書き換えるようにしましょう。