入浴剤、バスソルト市場は、400億円以上と言われ、その形態や効果効能、香りなどバラエティに富んだ商品が多数展開されており、年々その需要が高まっています。
特に冬の季節には、ドラッグストアーやスーパー、ホームセンターなど各社販売強化を行い、市場全体の販売指数も急上昇します。入浴剤部門は、効果的な広告や商品展開により多くの売上が見込めるカテゴリーとなるでしょう。
これらの商材を広告上、商品特徴を効果的に、且つ魅力的に表現するためには、薬機法に基づいた規制内容を踏まえて広告を打ち出す必要があります。
今回は、入浴剤、バスソルトの広告表現において、注意すべき点を薬機法を基準に解説していきます。
薬機法とは
まず、薬機法について簡単にご説明したいと思います。
薬機法は、2014年(平成26年)11月に従来の薬事法の改正と共に名称変更し施行された法律です。 正式名称を、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といい、医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品における、品質や有効性、安全性を確保することなどにより、保健衛生の向上を図ることを目的としています。
薬機法における広告規制
薬機法においては化粧品等の広告も規制対象となります。 広告とは下記の3要件を満たすものが該当するため、要件を満たしていれば広告を意図していない場合でも規制の対象になるため注意が必要です。
顧客を誘引する(顧客の購入意欲をさせる)意図が明確であること 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること 一般人が認知できる状態であること
薬機法における広告規制は薬機法第66条として下記の様に定められています。
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。 2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。 3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
つまり、化粧品の広告においては虚偽や誇大な表現、効能効果の保証表現などをしてはいけないとされています。 上記の薬機法第66条の規定は、同規定を更に細かく具体化させた「医薬品等適正広告基準」の内容も対象となるため、規制される内容は多岐に渡ります。 さらに、「何人も」という記載があることから、広告主である販売元だけでなく、広告代理店やアフィリエイトサイト、SNSなど幅広く対象となるため、広告作成を行う際は十分に注意する必要があります。
入浴剤・バスソルトの分類
入浴剤を分類すると「化粧品」「医薬部外品」「雑品」に分けることができます。
化粧品
「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、または皮膚もしくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう」とされており、入浴剤の広告表現においてもこの範囲を超えて表現することはできません。
例えば、表示できる効能としては「皮膚のよごれをおとすことにより、皮膚を清浄にする」「皮膚をすこやかに保つ」「皮膚にうるおいを与える」などの化粧品の効能に留める必要があります。
医薬部外品
一定の承認基準が定められており、配合すべき成分の種類や割合なども規定されています。承認されないと医薬部外品として認められません。また、入浴剤の場合剤形は、散剤、顆粒剤、錠剤、軟カプセル剤、液剤等が認められています。保管上の注意を必ず表示する義務もあります。
雑品
人体への効能効果は一切謳えません。「お湯の色を楽しむ」や「香りを楽しむ」くらいしか表現できないと考えたほうがよいでしょう。香りを強調した場合は、香りの効果として「〜の香りで気分リフレッシュ」程度に留める必要があります。 また、雑品は保証表現をNGとするルールは存在しません。この部分は、化粧品と比べて雑品の方が表現の幅を広くすることが可能でしょう。
例えば使用前後の状態を表現したり、医師の推薦などは、化粧品では保証表現として規制対象になりますが、雑品は問題ありません。
効能表現に関しては、やはり雑品の方が制限されることとなりますが、表現方法を工夫することで雑品の入浴剤も人体に対する効能効果を幅広く表現できるでしょう。
一方化粧品は、「保湿力が抜群に高い」や「安全な成分」のような、効能及び安全性の保証表現はできないので注意が必要です。
入浴剤とバスソルトの違いとは
入浴剤もバスソルトも湯船に入れて使用するものですが、その違いを区別するものは、バスソルトは化粧品か雑品に分類される点です。一般的に入浴剤は、温泉成分から製造された無機塩類化合物を配合した医薬部外品に該当します。
入浴剤・バスソルトで血行促進効果は謳える?
結論からいうと表題のような効果は、謳えません。薬機法上NG表現となります。 一見、入浴による血行促進効果などは、たびたび耳にしたことがあるフレーズだと思いますが、人体への作用が緩和な温浴効果はOKですが、治療、予防に関するワードはNGとなります。
例えば
- 血行促進用薬用入浴剤
- 温浴効果による血行促進できる薬用入浴剤
- 肩こりや腰痛の改善
- 肩こりや腰痛の緩解に効果
- 荒れ性やにきびの改善に
- 荒れ性、にきびでお困りの方におすすめ
- 疲労を回復させて筋肉の痛みに効果的
これらはの表現はすべて不可となります。
また、「有効成分(生薬、炭酸ガス等)が血行促進、新陳代謝を活発化」などの効能効果が有効成分の直接作用であるとする表現は認められませんので注意が必要です。
OK表現は?
商品の魅力を伝えるためには、どのような表現が認められるでしょうか。
- 清浄効果を高める酵素が配合
- 酵素の働きで全身の皮膚を清浄する
- たんぱく質分解酵素が清浄効果を高め、お肌を清潔にします
- 有効成分が温浴効果を高め、血行を促進する
- しっとり滑らかな湯上がり感
- 健康入浴、入浴剤のお風呂に入って毎日健康
これらの表現に加え、気分を表すフレーズや「温浴効果」「入浴効果」とするなどの言い換えも効果的です。
また、化粧品の場合は、人体に対する効能効果を表現することができます。例えば「肌が潤う」などの化粧品としての効能などは、もちろん表現きますし、温浴効果については「温浴効果で体を温める」などは、法律上問題ありません。
まとめ
広告表現が規制対象となるとコスト面、企業の信用面において大きな損失となる可能性があります。
入浴剤、バスソルトにおいて各分類毎に認められる表現が異なりますので、
それらを踏まえ、薬機法上の規制と照らし合わせ慎重な広告表現を選択する必要があるでしょう。