様々な商品の広告には、「お客様の声」や使用者の体験談が掲載されていることがよくあります。 商品使用者の体験談は、消費者にその商品を使った時をイメージしてもらうための重要な手法です。また、消費者への訴求力の高さも魅力です。 体験談を読んで購入を決める、という人も少なくありません。
しかし、化粧品・健康食品・医療機器の「お客様の声」や「体験談」の表現には様々な法律により厳しい規制が設けられています。
本記事では、「お客様の声」「体験談」を使った広告を作る上での注意点を解説していきます。 過激な表現の体験談を広告に使ってしまわないよう、しっかり気を付けましょう。
薬機法・景表法・医薬品等適正広告基準が重要
化粧品・健康食品・美容機器に対する「お客様の声」や「体験談」も、薬機法において「広告」であるとされます。薬機法により、使用体験談で禁止されている表現が数多く定められており、薬機法を正しく理解する必要があります。 また、使用体験談には景品表示法が大きく関わってきます。 景品表示法は、商品広告の合理的・科学的根拠を求めています。根拠が科学的に立証できない広告や体験談は景表法違反となる可能性があるため、注意が必要です。
さらに、医薬品等適正広告基準により、使用体験談で表現できる内容が定められています。しっかりチェックしておきましょう。
使用体験談で効能効果を謳う表現はNG
- この商品で糖尿病が治った!
- この食品で子どものアトピーがなくなりました。
- 認知症が改善しました。
こうした内容の体験談がお客様から手紙で届いたとしても、それを広告に使用することはできません。 たとえお客様の声が事実だとしても、医薬品としての効能効果があるような体験談の掲載は薬機法違反となります。その人の体験が事実であっても、全ての人に同じ効果があるとは限らないためです。
消費者個人が自身のブログやSNS(Twitter、Instagramなど)であくまで個人の感想を掲載するだけにとどまる場合は、広告とはみなされないのでOKです。 しかしアフェリエイト等の報酬を貰う目的である場合はNGの表現となります。
効能効果の表現はNG
化粧品広告では、薬機法上標榜可能な効能効果は56項目に限定されています。 ただし、使用体験談の中では、たとえ項目内に収まっていても、効能効果に触れる記載はそれが事実であったとしても禁止されています。これは消費者に効能効果を確実であるという誤った認識を与えてしまう可能性があるためです。 例えば、商品説明の中で、次のような表現は事実である限りOKです。
- 肌のキメが整う
- 日焼けによるシミ・そばかすを防ぐ
しかし、この内容を体験談として掲載することはNGとなります。
NG表現の具体例
- この商品を使用するようになって、肌のキメが整いました。
- このクリームを使ったら、シミやそばかすを防ぐことができます!
この体験談は、効能効果・安全性が誰にも当てはまると誤解させるものとされ、NGとなります。 「私にも効くのかな?」と思わせるような体験談の記載は、それが事実であったとしても認められていません。
過度な内容の表現はNG
たとえ使用感であっても過度な内容の表現は認められません。化粧品・健康食品・医療機器は、劇的な変化があるものではありません。 そのため、次のようなワードは過度な表現となるため、避けた方が良いでしょう。
- 治った
- 効いた
- 良くなった
こうしたワードは、次のような曖昧な表現に言い換えて、効果を言い切らないことが求められます。
OK表現の具体例
- 体力維持
- 健康向上
不正に得た体験談はNG
自社によって都合の良い体験談のみを抜粋して掲載することは認められていません。 その製品を買えば、誰にでもその体験談通りの実感が得られるといった誤った認識をさせるような行為はNGとされています。 また、体験談などを社内など身内の人達で作成し、あたかもお客様からの体験談のように見せることは認められていません。化粧品・健康食品・美容機器の広告表現で、虚偽の体験談を載せることは薬機法違反となります。
また、インフルエンサーが広告であることを知らせずに商品の体験談を自身のSNS(TwitterやInstagramなど)に載せることは薬機法違反にあたります。こうした事例も、不正利用に当てはまるので注意が必要です。
科学的・合理的な根拠がない体験談はNG
「お客様の声」や「使用体験談」の中で、科学的・合理的な根拠がない表現をしているものは広告に使用できません。消費者に対して医薬品等の効能効果や安全性について誤った認識を与える可能性があるためです。 体験談について、次のような表現には注意が必要です。
NG表現の具体例
- 世界最高品質の成分
- 失敗ゼロ
- 誰でも
これらのことを、科学的根拠があることを立証しなければならなくなります。合理的な根拠が示せない場合、虚偽の広告表現とされてNGと判断されます。
使用感の表現はOK
医薬品等適正広告基準により、「使用感を説明する場合」とあるように、使用感を表現しているものであればOKです。
- クリームがのばしやすく、使いやすいです。
- 匂いもなく、沢山塗っても気になりません。
- 香りが好きです。
- スッキリしていて飲みやすいです。
- 小粒なので簡単に飲めました。
このようなものが、実際のお客様の声として寄せられているのであれば、表現が過度なものでなければ広告での使用が認められています。
健康食品でも注意!医薬品ではなく「食品」
サプリメントなどの健康食品の使用体験談で、効能効果を表現しているものは広告表現に使用できません。具体的な例としては、次のようなものがあります。
- 血液検査の数値が良くなりました。
- 飲むだけでダイエットができた。
- 宿便が出た
これらの体験談は、医薬品であるかのような効能効果を表現しているのでNGです。健康食品の広告表現において、効果効能を謳ったものは使わないようにしましょう。 また、「1ヶ月で10㎏痩せた!」などの大きな数字を使った体験談は、景品表示法違反に該当する可能性があるため注意しましょう。
「あくまで個人の感想です」はフォローにはならない
通販番組などで、「あくまで個人の感想です」と小さく書かれている広告はよく見られます。 実際のところ、説明文を付けたからといってもNG表現のフォローにはなっていないので気を付けましょう。このような注意書きがあったとしても、虚偽の表現があればそのまま虚偽の広告表現とみなされるので気を付けましょう。 「あくまで個人の感想」が認められるのは、消費者個人が報酬を貰っている訳ではなく、あくまで個人の感想としてブログやSNS(Twitter、Instagramなど)に投稿する場合です。 個人のブログやSNS(Twitter、Instagramなど)であっても、アフェリエイト等の報酬を貰っている場合は救済にあたらないので注意が必要です。
まとめ
体験談は、実際に体験したことだから全部広告に使って良い、というものではありません。
使用体験談による使用感などの表現は認められています。しかし、いかに効能効果に触れずに商品の魅力を伝えるかが重要になるため、広告制作でも難しいところといわれます。 体験談を広告に使うときは、厚生労働省のガイドラインを確認し、薬機法に精通している専門家から指導を受けておくと安心です。
薬機法違反となる危険な広告を作ってしまわないように、体験談の使い方には十分気を付けましょう。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。