テレビショッピング等で、芸能人や著名人の写真を出して「私も利用しています」といった表現を使っている広告をよく見かけます。 他にも広告表現としてよく見かけるものとして、「○○医師も絶賛!」といった専門家のコメントを掲載していることがあります。
しかし、医療広告において、「芸能人や著名人も当院を利用しています」「専門家も推薦しています」という表現はNGです。芸能人、著名人の来院情報や写真、体験談を掲載することは薬機法や医療法に基づく医療広告ガイドラインに違反します。
その広告を見た一般の人々が、その製品のイメージを過大に膨らませてしまう可能性がある広告は不適切とされているため、注意しましょう。
医療広告ガイドラインによる規制の対象
医療広告ガイドラインでは、医療広告にあてはまるものは規制の対象と定めています。 次の項目がいずれもあてはまるものは医療広告とされます。
- 患者さんを誘引する意図があること(誘因性)
- 医師や医療機関名が特定可能であること(特定性)
具体的な例としては、次のようなものが挙げられます。
- チラシ、パンフレット
- ポスター、看板
- 新聞、雑誌
- インターネット上の広告
参考:医療広告ガイドライン
一方、医療広告に該当しないものには次のようなものが挙げられます。
- 学術論文、学術発表
- 患者さんが自ら掲載する体験談
- 院内掲示、院内で配布するパンフレット
- 医療機関の職員募集に関する広告
参考:医療広告ガイドライン
芸能人、有名人の来院の強調は比較優良広告に該当する
芸能人や著名人の来院を強調するのは医療広告ガイドラインによって禁止されている比較優良広告にあたる可能性があります。
著名人との関連性を強調するなど、患者等に対して他の医療機関より著しく優れているとの誤認を与える恐れがある表現は、患者等を不当に誘引する恐れがあることから、比較優良広告として取り扱うこと。
出典:医療広告ガイドライン
比較優良広告が禁止されている理由は、他の医療機関より優れていると一般の人々に誤解を招く表現とされているためです。また、「芸能プロダクションと提携」といった表現も比較優良広告に該当するため、NGとなります。
芸能人、著名人のブログやSNSでの「ステマ」もNG
来院した芸能人や著名人の写真などを、病院やクリニックがホームページやSNS(TwitterやInstagramなど)に掲載することは医療広告ガイドラインに違反する恐れがあります。 また、芸能人や著名人が、自分のブログやSNS(TwitterやInstagramなど)で病院やクリニックが特定されるように治療を勧める内容の体験談を記載していることもあります。 このとき、病院やクリニックから広告料を受け取ったり、宣伝を依頼されて記載している場合は医療広告ガイドラインに違反している恐れがあります。
これはステルスマーケティング(ステマ)と呼ばれる広告の手法にあてはまる可能性があり、薬機法や医療広告ガイドラインの規制の対象となります。
「医師の推薦」表記は薬機法違反
医薬品等の広告において、「医師の○○先生が推薦」といった表現はNGとなります。 これは、薬機法第66条において誇大広告にあてはまるため、薬機法違反となるためです。
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。 2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解される恐れがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
化粧品広告においても医薬関係者との関連強調はNG
化粧品広告においても、医療、薬学美容関係者や団体との関連を強調するような表現は認められていません。 これは化粧品等の適正広告ガイドラインにより定められています。
医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所、薬局その他化粧品等の効能効果に関し、世人の認 識に相当の影響を与える公務所、学校又は学会を含む団体が指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告を行ってはならない。ただし、公衆衛生の維持増進のため公務所又は これに準ずるものが指定等をしている事実を広告することが必要な場合等特別の場合はこの限りでない。なお、美容ライター、美容家(専門家、研究家等を謳う著名人を包含する)が、広告(推薦)する行為について直ちに違反とする趣旨ではないが、化粧品等の効能効果に関し、世人の認識に相当の影響を与えると考えられる場合には本項に抵触するおそれがあるので注意すること。
化粧品等の推薦が事実であってもNGとなるので注意
化粧品等の適正広告ガイドラインにより、医学、薬学、美容関係による化粧品等の推薦は、例えその内容が事実であっても不適切な広告とされています。 これは、専門家による推薦が一般の人々に与える大きいことが理由となっています。
医薬関係者等による化粧品等の推せん広告は、一般消費者の化粧品等に係る認識に与える 影響が大きいことから、例え、事実であったとしても不適当とする趣旨である。「公認」には、法による承認及び許可等も含まれる。 なお、本項は美容師等が店頭販売において化粧品等の使用方法の実演を行う場合等を禁止する趣旨ではない。
化粧品等の推薦が嘘なら薬機法違反に
化粧品等の広告において、専門家の名前を勝手に使って嘘の推薦分を記載した場合、虚偽広告に該当するため薬機法違反となります。
推せん等の行為が事実でない場合、推せん等の行為が事実でない場合は、医薬品医療機器等法第66条第2項に抵触する。
「血液クレンジング」提供のクリニックが医療広告ガイドライン違反となった事例
血液クレンジングを提供するクリニックのホームページが、厚生労働省により医療広告ガイドラインに違反しているとされた事例がありました。 このクリニックでは「ご来院情報」として、政治家やタレント等の多数の有名人や芸能人の写真を掲載し、「高い信頼を得ています」と表示していたとのことです。 また、血液クレンジングを行っている別のクリニックでも、漫画家に血液クレンジングを体験してもらい、疲労回復などの効果を強調する漫画をクリニックのホームページに掲載したという事例もみられました。
「医学の専門家も絶賛!」は本当?
○○医師が絶賛していることが事実だとして、○○医師はどういった人物なのでしょうか。 また、○○学会が勧めていたとして、○○学会はどのような組織なのでしょうか。 広告宣伝に使用される人物が必ずしもその分野の専門家とは限りません。 その1人の人物だけが「この製品は素晴らしい」と言っていたとしても、他の医師もそう言っているとは限らないのです。 こうした面でも、専門家の推薦や関連を強調する広告表現は不適切と考えられています。
まとめ
「あの芸能人もこれを愛用しています」という表現は、確かにそうかもしれません。 しかし、その製品を使用したからと言ってその芸能人のように綺麗になったり健康になったりするとは限らないのです。 医療広告については、不当な広告によって一般の人々の健康や命に被害が及ばないように厳しい規制が設けられています。
広告制作に関わる人は、広告を作成するにあたって表現内容が各法律やガイドラインに違反していないか十分注意することが必要です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。