美容技術の進歩により、ここ数年で美容に特化した医療機関や美容に関連する広告を記載する医療機関が増えてきています。
医療広告においても、関連する法律に十分注意しながら広告活動を行わなければなりません。 美容医療やそれに関する広告においてはどの様な法律やルールがあるのでしょうか。
今回の記事では医療広告に関する法的な考え方や美容外科の広告におけるビフォーアフターの考え方についてご説明したいと思います。
医療広告における法律的な考え方
美容クリニックなどの医療機関における広告について、化粧品などと同様に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、通称「医薬品医療機器等法(薬機法)」が関わってくると思われる方も多いかもしれません。
しかしながらこの法律の対象は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等の製品が対象となるため、基本的には医療広告は対象外となります。
医療機関における広告については、病院や診療所、助産所の開設、管理、整備の方法を定める医療法が主に関わってきます。
医療法における広告の考え方
医療法において、広告については以下の様に記されています。
第二節 医業、歯科医業又は助産師の業務等の広告 第六条の五 何人も、医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して、文書その他いかなる方法によるを問わず、広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示(以下この節において単に「広告」という。)をする場合には、虚偽の広告をしてはならない。 2 前項に規定する場合には、医療を受ける者による医療に関する適切な選択を阻害することがないよう、広告の内容及び方法が、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。 一 他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告をしないこと。 二 誇大な広告をしないこと。 三 公の秩序又は善良の風俗に反する内容の広告をしないこと。 四 その他医療に関する適切な選択に関し必要な基準として厚生労働省令で定める基準
引用元:医療法
要約すると、医療行為に対して虚偽又は誇大な広告をしてはならず、さらに比較広告に関しても行ってはならないと記されています。
また、医療法における広告可能な内容は厚生労働省で定められているため、化粧品などの広告よりも更に厳しい基準が設けられています。
医療法における広告の基準は多岐にわたるため、現在では「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」が策定され、更新が行われています。
美容外科の広告におけるビフォーアフター
それでは、医療広告ガイドラインでは、どのような広告が禁止されているのでしょうか。
第3 禁止される広告について 1 禁止の対象となる広告の内容 法第6条の5第1項の規定により、患者等に著しく事実に相違する情報を与え、適切な受診機会を喪失させ、不適切な医療を受けさせるおそれがあることから、内容が虚偽にわたる広告は、罰則付きで禁じられている。 同様に、同条第2項の規定により、患者等に対して医療に関する適切な選択に関し必要な基準として、いわゆる比較優良広告、誇大広告の他、公序良俗に反する内容の広告が禁止されている。 また、省令で定められた広告の基準に適合しなければならない。広告の基準としては、患者等の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告及び治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前後の写真等の広告が禁止される。 さらに、同条第3項の規定により、患者等による医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ない場合として省令で定める場合(第5参照)を除いては、広告可能な事項が限定されており、広告可能な事項以外の広告は禁じられている。
出典:医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)
つまり、医療機関を受診する患者様が適切な選択ができるよう、誤認させる恐れがある虚偽や誇大な広告や、体験談、治療前後の写真の広告も禁止となっています。
しかしながら医療広告ガイドラインにおいて、この治療前後の写真の広告の禁止について、以下の様に詳しく記載されています。
(7) 治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等 省令第1条の9第2号に規定する「治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告をしてはならないこと」とは、いわゆるビフォーアフター写真等を意味するものであるが、個々の患者の状態等により当然に治療等の結果は異なるものであることを踏まえ、誤認させるおそれがある写真等については医療広告としては認められない。 また、術前又は術後の写真に通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な説明を付した場合についてはこれに当たらない。 さらに、当該情報の掲載場所については、患者等にとって分かりやすいよう十分に配慮し、例えば、リンクを張った先のページへ掲載したり、利点や長所に関する情報と比べて極端に小さな文字で掲載したりといった形式を採用してはならない。 なお、治療効果に関する事項は広告可能事項ではないため、第5に定める要件を満たした限定解除の対象でない場合については、術前術後の写真等については広告できない。 【具体例】 ・ 術前又は術後(手術以外の処置等を含む。)の写真やイラストのみを示し、説明が不十分なもの
出典:医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)
ここで注目したい点が、「術前又は術後の写真に通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な説明を付した場合についてはこれに当たらない。」の部分です。
この点を踏まえると、治療内容に関する説明や治療の副作用、治療費など詳細を明記すれば、治療前後の写真を広告に載せることは可能と考えられます。
しかしながら、この広告を行う場合は、患者が適切に情報を得られるようにする必要があるため、副作用や治療費などを不明瞭に記載したり、リンク先のページに飛ばすなどを行わないようにしなければなりません。
美容外科の広告における薬機法の注意点
最後に、美容外科の広告における薬機法の注意点についてご説明したいと思います。
先述の通り、薬機法の対象は医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等の製品が対象となります。もし美容皮膚科の広告などで、化粧品の取り扱いがある場合や美容機器の紹介を行う際は薬機法に基づいた表現で行う必要があります。
例えば、「当クリニックの〇〇ローションは若返り効果があります」「院長オススメの△△クリーム」の様な内容を広告した場合、それぞれ「化粧品の効能効果の逸脱表現」、「医師による化粧品の推薦表現」となり、薬機法に抵触してしまいます。
まとめ
今回の記事では医療広告における法律的な考え方や、ビフォーアフター表現についてまとめさせていただきました。
医療広告は医療行為が含まれるため、より多くの関連法規が関わってくるものとなり、広告を行う際は十分注意が必要なものとなります。
美容外科における広告をご検討されている方は、是非この記事を参考にしてみてください。