医薬品や医薬部外品、化粧品などは人の身体に大きな影響を与えます。 また、それらを宣伝する広告も、私たちの健康に与える影響は大きいといえます。
薬機法では、誇大広告の禁止や特定疾病用医薬品の広告の制限など、厳しい制限が必要になります。 薬機法の規定を超えた医薬品の使い方やあまりにも大げさな広告は薬機法違反とされ、逮捕される事例も存在します。
本記事では、近年で薬機法違反にあたるとされ、ニュースにもなった事例をいくつか紹介しています。
薬事法違反には、重い罰則が定められています。 医薬品や医薬部外品、化粧品の販売方法や広告表現で薬事法違反とならないよう、注意しましょう。
実際に薬機法違反でニュースになった事例
事例 1:「ヒルドイド」の美容目的の使用
2017年、保湿剤「ヒルドイド」を美容目的で使用すること広告表現が薬機法違反にあたるとされ注意喚起となった事例です。
ヒルドイドは乾皮症などに処方される保湿剤ですが、美容目的での使用を推奨していると思われるような記事がインターネットや一部雑誌に掲載されていました。 ヒルドイドなどのヘパリン類似物質製剤は、本来は肌の乾燥の治療に使われる医薬品です
しかし、一部のインターネットサイトでは、「医者も認める魔法の美肌クリーム」、「究極のアンチエイジングクリーム」などの広告表現がされていました。 この広告の掲載を知ったヒルドイドの製造販売をするマルホ株式会社(大阪府)は、処方製剤のヒルドイドを化粧品のように紹介することは薬機法の違反に当たる可能性が高いとの注意喚起を行いました。
マルホ株式会社では、医師が必要な患者さんに対して処方しているヒルドイドについて、「患者さんが自己判断で治療以外の目的で使用することは、適切な効果が見込めないだけでなく、思わぬ副作用が発言するリスクがある」としました。 また、今後も美容目的での使用を推奨するような広告表現について厳しい対応をすると発表しています。
同年9月には、健康保険連合組合会がヒルドイドなどの保湿剤をスキンケアクリーム代わりに処方してもらうことがSNS上で流行していることが高いと報告しました。(政府立案に資するレセプト分析に関する調査研究Ⅲより) 健康保険連合組合会ではこの流行を大きな問題としており、「ヒルドイドなどの処方そのものを保険適応外とすることも検討すべきである」とも発言しています。
ヒルドイドを化粧品として扱うことは、自分の健康被害だけでなく、実際に皮膚の病気でヒルドイドの処方が必要な人も保険適応になるなどの大きな影響のある問題になっているのです。
事例 2:「コロナ対策」を謳った化粧品の販売
2021年2月、愛知県警はフリーマーケットサイトで石鹸などを販売していた女性を薬機法違反・商標法違反の疑いで書類送検しました。 この女性は「シャネル」などの高級ブランドに似せたロゴを使用した石鹸を製造・販売しただけでなく、「コロナ対策」を謳って販売をしていました。 新型コロナウイルスの世界的な流行の中、コロナに対する効能効果を表示した医薬品や化粧品が違法に販売される事例が増えているといわれます。
事例 3:「コロナに効く」と謳った健康食品も薬機法処分の対象
2020年9月、神奈川県警はフリーマーケットサイトでビタミン配合のサプリメントを販売していた2名を薬機法違反の疑いで書類送検しました。 このサプリメントは、コロナウィルスに対する効能効果を表示していたため、虚偽の広告に当たるとされ、薬機法違反となります。
この時、フリーマーケットサイトの売り上げは数千円~数万円程度でしたが、仮に売り上げが少額であっても薬機法違反による書類送検となりました。
2020年に全国で検挙された薬事法違反についての事件は前年より15件増加の63件だったと発表(警察庁の集計より)されていますが、これらのうち、新型コロナに対する効能効果を広告で歌っている薬機法違反事件は14件に上ったといいます。
実際に、薬機法違反となった新型コロナウィルスについての広告表現は次のようなものがあります。
- 新型コロナウイルス対策
- ウイルスの増殖を抑制
YouTubeの不適切な広告も薬機法違反に
2020年、Googleは「薬機法違反などのポリシー違反に当たるYouTube広告を大量に削除した。」と報告しました。 ポリシー違反に当たるとされた広告の数は、2020年6月以降で55万件にも上るということです。
近年、YouTubeの宣伝効果は日に日に強くなっているとされています。 買い物でどの商品を選ぼうか、という選択だけでなく、医療や健康について分からないことをYouTubeの解説動画を見ることで解決しようとする人も多くなっていると感じます。 さらに、ユーチューブ上には膨大な広告が存在するため、Googleが不適切な広告を全て削除することは難しく、現在も、科学的根拠の明らかでない怪しげな医薬品・化粧品やその広告は数多く出回っていると言われています。
GoogleやYouTube動画に頼りきりになるのではなく、自分自身で、自分の健康を守る姿勢が必要と考えられています。
そして、薬機法違反に当たるような不適切な医薬品を購入することで健康被害を受ける恐れや、必要な治療や医療機関への受診が遅れてしまう可能性があるため、注意が必要です。
薬機法違反には厳しい罰則
医薬品や医薬部外品、化粧品の販売において、虚偽の広告や誇大広告の表示は薬機法によって禁止されています。 これらの規定を違反した広告を使用した場合は、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはその両方を科すると定められています。(薬機法第85条より)
医薬品や医薬部外品、化粧品の販売業者だけでなく、一般の個人が出品するフリーマーケットサイトでも薬機法の取り締まり対象となります。 もし、化粧品などの出品を考えている場合は、出品方法や広告内容が薬機法に違反していないか、注意しましょう。
医薬品の販売については、医薬品販売業の許可を受ける必要があり、許可を得ずに販売した場合は薬機法違反となります。また、医薬品販売の勧誘を行うことも薬機法違反となります。
トラブルに巻き込まれたら
もし、医薬品や医薬部外品、化粧品を購入して健康被害を受けた、怪しげな広告や勧誘を受けた場合は苦情相談窓口に相談しましょう。 苦情相談窓口は、公的機関や民間団体、医薬品の販売企業・製造企業に設置されています。
トラブルに悩んだ場合は、これらの機関や団体に相談しましょう。
苦情相談窓口の設置期間・団体
- 行政庁の薬務主管課
- 各自治体の保健所
- 薬事監視事務所
- (独)消費者生活センター
- 各地区の消費生活センター
- 購入した医薬品の製造・販売企業のお客様窓口
まとめ
医薬品や医薬部外品、化粧品やその広告には薬機法によって厳しい制限が設けられています。
新型コロナの流行で、人々の不安に付け込んで悪質な医薬品販売が増えてきているといわれています。 医薬品の販売や広告制作に関わる場合は、今後一層、薬機法の正しい理解が必要になるでしょう。
最後までお読み頂きありがとうございました。