新型コロナウイルスが流行し、自宅で過ごす時間が増えたことで家庭用の美顔器などの美容機器の売り上げが大きく上がっているようです。 また、最近はでは女性だけでなく男性も美顔器などの美容機器を使う人が増えているようです。
ただ、悪質な美容機器や美容機器広告も多く、消費生活センターに苦情も寄せられています。 このため、美容機器の広告制作の際は、薬機法によるルールに気を付ける必要があります。 医療広告の表現内容において、美容機器と医療機器の違いについて知っておくことはとても重要です。
本記事では、美容機器広告制作の注意点について解説していきます。
美容機器とは?
美容機器とは、美容目的で使用される電化製品を指します。美容機器には、次のようなものがあります。
顔全体に使う物
- 美顔器
- 洗顔ブラシ
全身に使う物
- マッサージ用のローラー
- 家庭用日焼け機
目元に使う物
- まつ毛カーラー
- 目元用マッサージ器
足に使う物
フットバス
フットスパ
爪に使う物
- 爪磨き機
頭皮に使う物
- 超音波頭皮ケアブラシ
なお、身体の構造に影響を与えるものは美容機器ではなく医療機器に該当します。
美容機器と医療機器の違い
人の身体機能や構造に影響を及ぼし、病気の予防や治療に使う物を医療機器と呼びます。 美容関連でいうと、次のような効果のある機器は美容機器ではなく医療機器になります。
- シミ、ソバカスの除去
- 新陳代謝促進
- 脂肪燃焼
これらの表現は医療機器の広告でしか使用できません。薬機法によって、疾病の予防や治療、身体機能向上などの表現は医療機器にしか使用が認められていません。 したがって、美容機器の広告でこのような表現を使用することは薬機法違反にあたります。
美容機器の広告規制に関する法律やガイドライン
薬機法の他にも、美容機器の広告制作に関わる法律には次のようなものがあります。
- 医療法
- 健康増進法
- 景品表示法
- 特定商取引法
他にも、一般社団法人 日本ホームヘルス機器協会から、家庭向け美容・健康関連機器適正広告表示ガイドが出ているので合わせて確認しましょう。また、医療機器の広告規制に関しては医薬品等適正広告基準についても理解しておきましょう。
美顔器、美容機器の広告に使用できる効能効果
美容機器の広告で効能効果を表現したいときは、化粧品で認められている56の効能効果と同程度の範囲の表現に留めなければなりません。 化粧品で認められている56の効能効果のうち、主に肌(美顔器)に関するものはこちらになります。
- (汚れを落とすことにより)皮膚を清浄にする
- 肌を整える
- 肌のキメを整える
- 皮膚を健やかに保つ
- 肌荒れを防ぐ
- 肌をひきしめる
- 皮膚にうるおいを与える
- 皮膚の水分、油分を補い保つ
- 皮膚の柔軟性を保つ
- 皮膚を保護する
- 皮膚の乾燥を防ぐ
- 肌をやわらげる
- 肌にハリを与える
- 肌にツヤを与える
- 肌を滑らかにする
「フェイスラインが引き上がる」「シミ、ソバカスを除去する」といった、顔の形や肌機能に影響を及ぼすと思われるような表現は「医療機器」にあてはまる表現となるため、美顔器の広告には使用すると薬機法違反となります。他にも、美容機器の広告での次のような症状が治るような表現は薬機法違反となります。
- たるみ
- ほうれい線
- シワ
- 毛穴の開き
これらの表現を薬機法違反とならないように言い換えたいときは、「フェイスラインに沿って上へ引き上げるようにお使いください」など使用方法としての表現にするやり方や、「自宅でエステ級のケア」などイメージ戦略を使うやり方が多いようです。
「肌への浸透」を表現したいときは
美容機器の広告で肌への浸透を表現したいときは、こちらも化粧品広告と同じように「角質層まで」の表現とするように定められています。 そのため、「美顔器の作用で肌の奥にぐんぐん入っていきます」という表現はNGとなる可能性があります。 また、「○○イオン導入」などでよく使用される「導入」という表現は、行政により過剰な浸透表現として指導を受けた事例があります。最近は「導入」を「ブースター」「誘導」という表現に言い換えていることが増えているようです。
美容機器の乱用を促す表現はNG
美容機器の広告において、長時間の使用や乱用を促す表現は認められません。
美容・健康関連機器について、乱用助長を促すおそれのある広告表現はしない。長時間使い続けることによる火傷等の副作用を発生させることがないよう注意する。
乱用を促す表現には次のようなものがあります。
- 長時間使用しても問題ありません。
- 使用すればするほど効果があります。
- 使用方法や使用時間を守るような広告表現を心がけましょう。
禁忌事項、使用上の注意を表示しましょう
美容機器は使い方を誤ると身体にトラブルが生じる場合があります。美容機器による事故を防ぐため、一般の人々が購入する前に分かりやすいよう禁忌事項や使用上の注意を必ず掲載しましょう。
使用する機器特有の注意すべき事項又は疾患名を記載する。
禁忌事項や使用上の注意点の具体例は次のものがあります。
- 皮膚疾患のある部位への使用はしない
- 心疾患等の人は使用しない
- ペースメーカーを装着している人は使用しない
- 悪性腫瘍のある人は使用しない
不安を与えるような表現は薬機法違反
美容機器を購入させたいからといって、一般の人々に対して不安を与えるような表現は薬機法違反となるため使用できません。 不安を与える表現としてNGとなる具体例は次のようなものがあります。
- 「あなたの肌は、ほうっておいたら老化がひどくなる」
- 「あなたの肌は、こんな状態ではないですか?」(老化の進んだ写真掲載)
- 徐々に年老いていく顔写真を誇張して掲載している。
また、客観的根拠のないビフォーアフターの写真や体験談を掲載することも禁止されています。
特許による効果の保証はNG
美容機器が特許を取得している場合でも、そのことを効果の保証として広告に表現することは認められません。 「この製品は特許を取得しているので、高い効果があります!」といった表現は不適切な広告とみなされます。 美容機器の特許についてはその美容機器の製造や、製造方法の範囲までに留めておくと広告としての使用が認められます。
薬機法違反には行政処分や刑事罰が科される可能性も
薬機法に違反すると行政処分だけでなく刑事罰に問われる可能性があるため細心の注意を払いましょう。 美容機器の広告が薬機法違反となった場合、都道府県の担当課から広告の変更や改善を求められます。 更に、行政処分、立ち入り検査を行う場合もあります。 薬事法違反の罰則として、個人には2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、法人には200万円以下の罰金が科されることがあります。
また、他にも景表法や健康増進法に違反した場合も刑事罰があるため注意が必要です。 法令違反とならないよう、広告制作で気になる点がある場合は弁護士等に相談しましょう。
まとめ
コロナ禍によって美容機器市場が拡大しているといわれています。 ただ、美容機器と医療機器の違いは大きな問題です。 美容機器を医療機器と同じような効果効能があるように広告表現を行うことは、苦情やトラブルの原因となる他、身体に重大な障害を残す事故に繋がる可能性があります。 法律による規制や安全面へのリスクもあるため、美容機器と医療機器の違いはしっかり理解しておきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。