コロナ禍により、在宅勤務やマスク着用が一般的となりました。 マスク生活の間にシミ取りをしたり、通勤時間がなくなった分、近所の美容外科クリニックに通ったりなど、美容外科や美容医療クリニックの利用者が急増しているといわれています。
美容外科や美容医療クリニックの選択に欠かせないものとなっているのが、病院やクリニックのホームページや、インターネット上に掲載される広告表示です。
美容医療であっても、医療広告においては薬機法や景表法、医療広告ガイドラインの規制を受けています。 本記事では、美容外科や美容医療クリニックの広告表示で気を付けるべき広告表示規制について解説していきます。
医療広告ガイドライン改正は美容医療のホームページがきっかけ
2018年に改訂された医療広告ガイドラインにおいて、これまで対象ではなかった医療機関のホームページについての規制が盛り込まれました。 また、インターネット上の医療広告が規制に違反した場合の罰則も規定されました。
この医療広告ガイドラインが改正されたきっかけは、美容医療によるトラブルといわれています。 美容外科を始めとする美容医療クリニック関連のウェブサイトで悪質な広告が多数あったため、トラブルや苦情が相次いで発生したのです。
医療広告ガイドライン改正に合わせて、厚生労働省は各自治体と提携して医療広告のネットパトロールも行っています。
限定解除されてもNGとなる表現がある
医療広告について、広告表現が認められている内容は基本的に限定されています。(医師の名前、医療機関の所在地など) しかし、それだけでは患者さんに情報を伝えられない可能性があるため、一定の要件を満たしている場合は広告可能な事項以外についても広告することが可能です。 この仕組みを「限定解除」と呼んでいます。
しかし、限定解除されていたとしても、薬機法、景表法、医療法において常に禁止される表現内容があります。 限定解除されても広告に使用出来ない内容については、次のようなものがあります。
- 誇大広告
- 虚偽広告(内容が虚偽にわたる広告)
- 最高級表現
- 治療の内容や効果に関する利用者の体験談
- 比較優良広告(他の病院やクリニックと比較して優良である旨の広告)
- 価格の安さを強調する表現、無料診断
- 「メディアで紹介された」等の表現
- 治療効果の保証
- ビフォーアフター写真(利用者を誤認させる恐れがある治療前・治療後の写真等)
参考:医療広告ガイドライン
プチ○○はNG広告?
美容外科クリニックの広告には「プチ整形」、「プチ○○」といった表現をよく見かけます。 しかし、医療広告ガイドラインによるとこれらの表現は誇大広告にあてはまり、不適切な広告となる可能性があります。
Q2-4美容医療等の自由診療において、「プチ~」といった短時間で行える、身体への負担が比較的少ない、費用も手軽である、といったような印象を与える表現は、広告可能でしょうか。 A2-4提供する医療の内容等について、事実を不当に誇張した表現や、誤認させるおそれがある表現は、誇大広告に該当する可能性があります。
「プラセンタ注射」広告は限定解除が必要
美容医療クリニックにおいて、プラセンタ注射を使用した医療が存在します。 医療広告ガイドラインによりプラセンタ注射について広告表現する際は、限定解除が可能となる要件を満たしている必要があるとされています。
Q3-25 美容医療におけるプラセンタ注射を用いた施術は、広告可能でしょうか。 A3-25「プラセンタ注射」は、医薬品医療機器等法上、更年期障害、乳汁分泌不全、慢性肝疾患における肝機能の改善の「効能・効果」を目的に用いる場合のみ認められています。承認された「効能・効果」以外の目的での使用については広告できません。ただし、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトについては、広告可能事項の限定解除要件を満たした場合には、広告可能事項の限定を解除可能です
「アンチエイジング」は医療広告に使用できる?
アンチエイジングとは、「加齢に伴う症状の予防と治癒。老化防止。抗加齢。抗老化。」という意味があります。 アンチエイジングという言葉は医療広告に使用できるのでしょうか? 厚生労働省が平成30年に実施した「第4回医療・介護ワーキング・グループ議事概要」よりこのような見解が示されています。
厚生労働省も一律にアンチエイジングという表現について、全て駄目と言っているわけではなく、単にアンチエイジングだということで誘引するようなものは、なかなか認めることができない。しっかりと、条件を満たすものについては、「広告可能な事項」以外のものについても情報として提供していいという取り扱いにしている。
出典:厚生労働省・第4回医療・介護ワーキング・グループ議事概要
また、医療広告ガイドラインにおいて次のように示されています。
医療に関する広告として、医薬品又は医療機器による診断や治療の方法等を広告する際には、医療行為として医薬品等を使用又は処方する旨であれば、医薬品医療機器等法上の広告規制の対象とはならないが、販売または無償での授与をする旨が掲載された広告であれば、医薬品医療機器等法上の広告規制も受けることとなる。
出典:医療広告ガイドライン
つまり、「アンチエイジング」は治療の一環としてなら、薬機法違反にあたる表現を使用しなければ、限定解除の要件を満たしている場合において広告への掲載が認められる可能性が高くなります。 ただし、クリニックでサプリメントを販売する場合は治療目的とはいえないため、アンチエイジングの名称は認められない可能性があります。
医療広告へのアンチエイジング掲載は基本的にNGですが、医療機関のホームページにおいては限定解除をして誤解させないような内容であればOKとなると考えてよいでしょう。
「アンチエイジング」と「エイジングケア」の違い
近年アンチエイジングに代わる表現として、「エイジングケア」「エイジング対策」があります。 「エイジングケア」という表現は薬機法によって認められているため、医療広告にも使用できると考えられています。 しかし、エイジングケアとは基本的には年齢に応じた化粧品などによるケアのことと定められており、肌の症状の改善や治療についての広告表現は認められていません。 あくまで、現在の肌の状態を維持するという表現のみ使用が認められます。
「アンチエイジング」と「エイジングケア」どちらを使う?
美容外科や美容医療クリニックの広告において、アンチエイジングとエイジングケアのどちらの言葉を使うべきなのでしょうか? 病院やクリニックのホームページ以外では、徐々に「アンチエイジング」という表現は使わなくなり、エイジングケアに表現を変更することが多いといわれています。 広告の内容については、治療や医薬品の内容に合わせて柔軟に対応することが求められています。 アンチエイジングとは医療の側面が強い表現であるの対し、エイジングケアは薬機法や景表法の観点から化粧品や医薬部外品に使用する表現と覚えておくと良いでしょう。
まとめ
美容外科や美容医療クリニックのホームページにおいても、法律による規制が厳しくなっています。 医療は人の生命・身体に関わるサービスであり、不当な広告により患者さんが誘引され、悪質なサービスを受けた場合の被害が大きいものと考えられています。 美容外科や美容医療においても、最低限、禁止される広告表現は使用しないよう気をつけてください。
広告表現や広告規制のガイドラインは日々変化していくものです。 医療広告ガイドラインや、薬機法などの関連する法律の知識を定期的にアップデートしておきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。