春や秋に多くの人を苦しめる花粉症。 最近では研究も進み症状の悪化要因や発症するまでのメカニズムなども解明されてきましたが、それでも多くの人にとって悩みの種であることに変わりはありません。
そのため医薬品以外でも花粉症に効果のある化粧品・健康食品の市場でのニーズは非常に高く、積極的にPRしていきたいところかと思います。 ですが、気を付けなければいけないのが法律上の縛りですよね。なんと化粧品や健康食品の広告で「花粉症」という表現は使用することはできないのです。
そこで今回は化粧品・健康食品の広告で使用できない表現について説明していきます。
法律上の定義
商品パッケージの記載や広告を行う際は様々な法律によって表現が適切かどうか判断する必要があります。 主にかかわってくる法律は薬機法、健康増進法、景品表示法などかと思います。それではこれらの法律で関係のある項目を確認していきましょう。
医薬品の定義
第二条 この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。 一 日本薬局方に収められている物 二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)及びこれを記録した記録媒体をいう。以下同じ。)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。) 三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
病気の診断・予防・治療を目的としたものが医薬品に該当します。そのため、何かしらの疾患に対しての効果効能をパッケージなどに記載していればそれは医薬品になってしまいます。(もちろん医薬品として販売するにあたっては有効性・安全性・品質を証明し、厚生労働省に承認の申請をし、薬事・食品衛生審議会や厚生労働大臣の審査を受ける必要があります)
化粧品の定義
第二条 3 この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
人への作用が緩和で髪や爪、皮膚などの保護を目的とするものが化粧品に該当します。ちなみに、薬用化粧品は医薬部外品に該当するので化粧品とはまた別物になります。
健康食品の定義
いわゆる「健康食品」と呼ばれるものについては、法律上の定義は無く、医薬品以外で経口的に摂取される、健康の維持・増進に特別に役立つことをうたって販売されたり、そのような効果を期待して摂られている食品全般を指しているものです。 そのうち、国の制度としては、国が定めた安全性や有効性に関する基準等を満たした「保健機能食品制度」があります。
健康食品は保健機能食品といわゆる健康食品の二種類に分類することができます。また、健康増進法によって乳児、幼児、妊産婦、病者などの発育、健康の保持・回復など特別な用途で使用できる特別用途食品というものもあります。
法律上の表現禁止事項
次にパッケージや広告でどういった表現が禁止されているのか確認していきましょう。
薬機法上での表示禁止事項
(誇大広告等) 第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。 2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。 3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
何人も医薬品的な効果効能についての内容を記事や広告で表現してはならないとされています。そのためネットの広告などでよく見る「個人の感想です」という表現も効果効能について触れていれば違法になってしまいます。
健康増進法での表示禁止事項
(誇大表示の禁止) 第六十五条 何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項(次条第三項において「健康保持増進効果等」という。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。 2 内閣総理大臣は、前項の内閣府令を制定し、又は改廃しようとするときは、あらかじめ、厚生労働大臣に協議しなければならない。
出典:健康増進法
根拠が明確でない効果効能については表現してはならないとされています。ただ、一部の許可された健康の保持増進効果についてはパッケージや広告で表現することが可能となっています。この許可された効果とは、特別用途食品(特定保健用食品・機能性表示食品・栄養機能食品など)に関する効果のことです。
景品表示法上での表示禁止事項
(不当な表示の禁止) 第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示 をしてはならない。 一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優 良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給し ている他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一 般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの 二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似 の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利である と一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的 な選択を阻害するおそれがあると認められるもの 三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認される おそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害 するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
となっており、他製品との優劣をつけるような表現は禁止されています。つまり、パッケージや広告で「NO.1」や「これが一番」などの表現、他の製品との成分量比較などを記載すること違法です。上記の禁止事項の内容をまとめ、化粧品や健康食品で共通して行えない表示は以下の通りです。
- 疾患の予防や治療効果はNG
- 根拠が明確ではない効能効果はNG
- 他製品との比較はNG
また、健康食品に関しては保健機能食品制度で許可された効果効能の表記が可能です。
NGな広告表現の具体例
花粉症などに関わる表現でNGな具体例は下記のとおりです。
「抗ガン作用・抗アレルギー作用・コレステロール低下作用・血糖上昇抑制作用」 「アレルギーを引き起こす大元であるIgE抗体の産生をブロック」 「かゆみやくしゃみの元であるヒスタミンを抑制」 「花粉症でお困りの方にどうぞ」 「海外では医薬品として許可されており」
また、東京都福祉保健局HPの「健康食品の花粉症への効果表現について」では
花粉症への効果は、医薬品的な効能効果の標ぼうに該当します。上記の例では、「花粉症」という言葉は出てきませんが、「花粉の季節はつらい」などの表現により、花粉症に対する効果を暗示する標ぼうとなっています。よって、全体的にみると、「医薬品的」な効能を標ぼうしていることになります。
となっており以下の表現はNGとなってしまいます。
- 医薬品的効果効能を明示・暗示する内容はNG
- 特定の疾患を標榜する内容はNG
「花粉症」関係の広告をしたい場合
結論から言うと様々な法律上の制限があり「花粉症」と表現することは不可能かと思います。ですが、花粉症に関わる内容で表現可能な内容もあるので紹介していきます。
化粧品では
花粉症やその症状の対策として広告などで表現したい場合は以下の手段があると思います。
- 遠回しな表現
- 物理的効果として表現(エビデンスが必要)
ただ、遠回しな表現の場合は程度によっては暗示していると解釈される可能性が高いです。そのため、物理的効果を根拠とした表現が望ましいかと思われます。
物理的効果の具体例としては、イオンや静電気を利用して花粉が体につかないようにするなどの商品が挙げられます。もちろんエビデンスがないと景品表示法上NGになってしまうので、効果については実証する必要があります。
健康食品では
花粉症の症状や対策として広告などで表現する場合は以下の手段があります。
- 特定保健用食品として国に承認を求める
- 機能性表示食品として消費者庁長官に届け出を行う
商品を作るにあたり特定保健用食品よりも機能性表示食品の方が敷居は低いですし、いくつかの花粉症関連の機能性表示食品が販売されています。 ただ、表記は「花粉などによる鼻の不快感の軽減」となっており「花粉症に対して」などの直接的な評価は行えません。
まとめ
本記事では「花粉症」の表現について化粧品・健康食品で使用できる物とできない物について、根拠となっている法律を引用しながら紹介させていただきました。 広告などの表現については様々な法律が関係しており正確な判断が難しい場面も多くあるとは思いますが、本記事が少しでも皆様の参考になれば嬉しいです。