並行輸入で化粧品を卸し、販売したいときには、「化粧品製造販売業許可申請」や「化粧品製造販売届出」が必要となります。
しかし、この届出は、日本国内での業務についての届出のみです。海外から輸入するにあたり、「化粧品外国製造業者届」または「化粧品外国製造販売業届」を提出しなければなりません。
今回は、「化粧品外国製造業者届」または「化粧品外国製造販売業届」について解説いたします。
化粧品外国製造(販売)業者届とは?
化粧品を並行輸入するときに、「化粧品外国製造業者届」または「化粧品外国製造販売業届」のいずれかを申請しなければなりません。
この届は、国内では輸入業者が、海外では製造業者にて責任の区分を明確にし、消費者が安心・安全に化粧品を利用できるように整備された申請と思われます。名称に「販売」がつく場合とつかない場合及び手続きについてご紹介していきます。
化粧品外国製造業者届、化粧品外国製造販売業者届に関する薬機法
日本国内で並行輸入化粧品を取り扱う場合、輸入元の外国製造業者は、製造所ごと、区分ごとに「化粧品外国製造業者」または「化粧品外国製造販売業者」の認定を受けなければなりません。これは、薬機法第13条の3で定められています。
「化粧品外国製造業者」は、工場のある国から第3国を通さずに日本へ輸入する場合の届出です。一方「化粧品外国製造販売業者」は、工場のある国から第3国を通して日本へ輸入する場合の届出を指します。なお、手続きの流れはどちらも同様です。
医薬品等外国製造業者の認定
第十三条の三 外国において本邦に輸出される医薬品、医薬部外品又は化粧品を製造しようとする者(以下「医薬品等外国製造業者」という。)は、厚生労働大臣の認定を受けることができる。 2 前項の認定は、厚生労働省令で定める区分に従い、製造所ごとに与える。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
医薬品等外国製造業者の保管のみを行う製造所に係る登録
第十三条の三の二 医薬品等外国製造業者は、保管のみを行おうとする製造所について厚生労働大臣の登録を受けることができる。 2 前項の登録については、第十三条の二の二第二項、第三項(同項第一号及び第五号に係る部分に限る。)、第四項及び第五項の規定を準用する。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
化粧品外国製造(販売)業者の登録更新申請について
化粧品外国製造(販売)業者は、「化粧品外国製造(販売)業者届出書」を提出しなければなりません。この登録は、「5年間」の有効期間があり、更新手続きをしなければ、日本への輸出ができなくなります。更新手続きは、「医薬品医療機器法施行規則の様式第21の4」による申請書を独立行政法人医薬品医療機器総合機構へ提出します。更新書類の事務手続きは、2ヶ月ほど要するので、2ヶ月前までには申請をしましょう。
化粧品外国製造(販売)業者の登録更新申請後の処理
「化粧品外国製造(販売)業者届出書」を提出し、更新手続きが終わったら行われるのが、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の審査です。審査内容は、「薬局等構造設備規則 第13条」に則った設備か否かを判断しています。
一般区分の化粧品製造業者の製造所の構造設備
第十三条 施行規則第二十六条第三項第一号の区分の製造業者の製造所の構造設備の基準は、次のとおりとする。 一 当該製造所の製品を製造するのに必要な設備及び器具を備えていること。 二 作業所は、次に定めるところに適合するものであること。 イ 換気が適切であり、かつ、清潔であること。 ロ 常時居住する場所及び不潔な場所から明確に区別されていること。 ハ 作業を行うのに支障のない面積を有すること。 ニ 防じん、防虫及び防そのための構造又は設備を有すること。 ホ 床は、板張り、コンクリート又はこれらに準ずるものであること。 ヘ 廃水及び廃棄物の処理に要する設備又は器具を備えていること。 三 製品、原料及び資材を衛生的に、かつ、安全に貯蔵するために必要な設備を有すること。 四 製品等及び資材の試験検査に必要な設備及び器具を備えていること。ただし、当該製造業者の他の試験検査設備又は他の試験検査機関を利用して自己の責任において当該試験検査を行う場合であつて、支障がないと認められるときは、この限りでない。
出典:薬局等構造設備規則
並行輸入に関する注意事項
並行輸入は、「化粧品製造販売業許可申請」や「化粧品製造販売届出」、「化粧品外国製造業者届」または「化粧品外国製造販売業届」を提出し、許可を得ることで実現します。しかし、それ以外に、条件や品物によっては手続きが必要なものがあります。合わせて確認しておきましょう。なお、下記の詳しい情報は、ミプロ(一般財団法人対日貿易投資交流促進協会)より発行されている「化粧品輸入・販売マニュアル」よりご確認ください。
参考:化粧品輸入・販売マニュアル 一般財団法人対日貿易投資交流促進協会発行
ワシントン条約
化粧品に使われる可能性のある「アロエ」「バニラ」「ジャコウ」は、ワシントン条約により規制対象となります。
ワシントン条約規制対象物の取引に必要な書類
- 輸出国発行のCITES許可書
- 経済産業大臣の輸入承認または事前確認
- 税関申告
化粧品原料を輸入する場合
化粧品の原料は、薬機法の対象物ではありません。薬機法で決められた許可申請は不要となります。また、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)に触れていないかは確認しておいた方がよいでしょう。
化粧品原料を輸入する場合に必要な書類
- 外国製造(販売)業者届
展示会サンプルのため一時的に化粧品を輸入する場合
展示会サンプルのため、販売予定はありません。一時的であれ、化粧品輸入の確認申請を関東信越厚生局または近畿厚生局へ提出します。
輸入確認申請
輸入確認申請は、多数のフォーマットがあるので、関東信越厚生局のサイトよりご確認ください。
化粧品を輸入代行として個人で輸入する場合
「輸入代行」と聞くと、業者申請が必要なのではないか?と思いがちですが、少量であるなど特定のルールに従っていれば、個人輸入の扱いを受けます。
個人輸入と認められるケース
- 消費者が輸入代行業者へ希望の商品を指定
- 消費者から輸入代行業者へ手数料を上乗せして払う
- 輸入代行業者は、外国の販売業者へ送付先リストと代金を送り、発送依頼をする
- 1回の注文が、標準サイズで24個以下である
- 外国の販売業者から消費者へ直接商品を発送する
まとめ
化粧品の並行輸入販売に必要な「外国製造業者届」および「化粧品外国製造販売業届」についてまとめてきました。大切なポイントが4つです。スムーズに並行輸入手続きが進むよう、頭の隅に入れておきましょう。
- 「化粧品外国製造業者」は、工場のある国から直接日本へ輸入する場合の届出
- 「化粧品外国製造販売業者」は、工場のある国から第3国を通して日本へ輸入する場合の届出を指します
- 薬機法で定められている、並行輸入に必要な手続きが終わっても、他の法令も参照すること
- 並行輸入業者でなく、個人輸入代行の場合は業者届を提出する必要はない