毎日を健康に過ごすために、様々なヘルスケアアプリが、誕生しています。
身近なもので、ダイエットやエクササイズ、歩数計アプリなど、健康管理に役立つアプリが、数多く存在します。 「自社のヘルスケアアプリは、健康増進が目的であり、医療分野には及ばないので法律は意識しなくてよい」という考え方は、非常に危険です。 サービス内容が一般利用者向けであったとしても、その内容次第では薬機法上の問題として該当する可能性があるからです。
本記事では、ヘルスケアアプリを開発する際に関係する薬機法について触れさせていただきます。
薬事法から薬機法へ
過去に薬事法という名前の法律を耳にしたことがある方は、多いのではないでしょうか。
健康食品やスキンケア用品を販売する際の効果効能を規制する法律をイメージする方が多いと思いますが、実は、規制対象には、サプリメントや薬用化粧品などの身体に直接関係するものの他に医療機器も含まれています。
医療機器には、実際に人が操作することで作動し役割を果たす機器もあれば、プログラムによってコントロールされるものもあります。 旧薬事法においては、そのプロググラム単体では、規制の対象とはなることはありませんでした。 ヘルスケア用のスマホアプリを開発した際には、スマートフォンに組み込んだ形で開発し販売しているわけではないので、薬事法上、医療機器には当たらず、規制対象にはなりませんでした。
ところが、昨今のIT技術の発達により、スマートフォン上において、アプリの形態で使用される医療用プログラムが世の中に登場することになり、人や動物の病気の診断、治療、予防を目的に活用され、これらが身体の構造や機能に影響を及ぼす可能性が生じてきたのです。
医療用プログラムが何かしらのトラブルにより、身体機能や人の生命に悪影響を与える可能性も考えられ、ハードウェアとセットで製造・販売されないという理由で規制の対象にならないのは、危険であると判断し、プログラム単体でも規制の対象とする「薬機法」への改正に至りました。
医療機器の定義
薬機法とは、正式名称「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、医薬品や医療機器について定めた法律です。
一般的なヘルスケアアプリは、私達の体重や身長、血圧、歩数、睡眠時間など、身体や健康に関するあらゆる情報を記録できるサービスです。 健康管理の他にも、ダイエットやウェイトトレーニングに活用でき、非常に便利な機能ですが、ヘルスケアアプリには、法律上医療機器に該当するものと、該当しないものが存在します。
そもそも、医療機器とは人や動物の疾病の診断や予防などに使用し、人や動物の身体の構造もしくは機能に対して影響を及ぼすことを目的としている機器を指します。
開発されたヘルスケアアプリの機能が人体に直接影響を及ぶす場合、医療機器に該当することになります。
ヘルスケアアプリは医療機器に該当する?
医療機器に該当するかの具体的な判断基準は以下のとおりです。
- 人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること
- 人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている
特に、ヘルスケアアプリにおける判断のポイントは以下の2点です。
- プログラム医療機器により得られた結果の重要性に鑑みて疾病の治療、診断等にどの程度寄与するのか。
- プログラム医療機器の機能の障害等が生じた場合において人の生命及び健康に影響を与えるおそれ(不具合があった場合のリスク)を含めた総合的なリスクの蓋然性がどの程度あるか。
例えば、開発したヘルスケアアプリにおいて、利用者自身の身長・その日の体重や日々の食事メニューの記録を行い、そのデータをもとにダイエットや筋肉強化のための食事や生活習慣に関するアドバイスが表示されるようなアプリサービスを展開したとしましょう。 この場合、薬機法上の医療機器に該当する否か、どのような点に注意すべきでしょうか?
このアプリ内でユーザーの食事に関するアドバイスが表示される点において、このアドバイスが、疾病の治療や予防を目的としていると判断される場合に、薬機法上の医療機器に該当する可能性が出てきます。
さらに、表現する内容にも注意が必要となります。 具体的には、アプリサービス内において「何かしらの疾病を改善する・予防する」ような表現がなされた場合や、具体的な病名を上げて予防になる内容の表現がなされた場合には、該当する可能性があります。
医療機器としてリリースしたい場合を除いては、アプリ利用者に誤解を与えないために「当アプリは疾病の診断、治療、予防を目的としていない」旨の記載、表示を行うことが望ましいでしょう。
医療機器に該当しないヘルスケアアプリ
比較的身近な、体重記録アプリや歩数計アプリ、睡眠時間、血圧等の記録をグラフ化するアプリなど、いわゆる日常的な健康管理のために用いられるようなアプリは、薬機法上の健康管理用プログラムに該当し医療機器には当たりません。 他にも以下の様な健康プログラムは、医療機器に該当しないでしょう。
- 自身の服薬履歴管理や母子の健康履歴管理を目的とした、お薬手帳や母子手帳の情報などを記録するプログラム
- スマートフォン端末に内蔵されたセンサ等を利用して、自身の健康情報を検知し、生活環境を改善することを目的として家電機器などをコントロールするプログラム
- スマートフォン内蔵のセンサ等を利用して歩数等を検知し、体調管理や体力の強化を図ることを目的として生活習慣を改善するメニューの提案や実施状況に応じた助言を行うプログラム
これらの具体例を見てみると、個人の日常の健康管理や生活習慣の見直し程度の度合いであれば、医療機器に該当する可能性は低いことがわかります。 つまり、一般向け健康プログラムに留められているか否かがポイントになると考えます。
一方で、例えば、血圧等のデータが専用の測定器から送信されて、これらのデータをもとにアプリ内にて、疾病の診断などを導き出してしまう場合、医療機器で得られたデータを加工・処理し、診断又は治療に用いるための指標、画像、グラフ等を作成するプログラムであると判断されて、医療機器に該当する可能性が出てきます。
まとめ
現在、多くの方がスマートフォンを利用する世の中にあり、スマートフォンのアプリで健康管理をしたいと考える方はこれからもさらに増えていくでしょう。
また、アップルウォッチのようなウェアラブルデバイスには利用者の健康に役立つアプリケーションが搭載されていることが多いです。 そのような状況で、開発しようとするヘルスケアアプリが医療機器にあたる場合は多数の手続が必要となります。
上記で触れた内容を薬機法と照らしわせて、調査することが重要となるでしょう。