女性の多くの方が悩んでいるむくみ。 むくみに関する商品の広告において、「むくみを改善」をダイレクトに訴求したいですよね。
しかし、むくみ表現については薬機法もしくは景品表示法で違反となるケースがあります。
本記事では「むくみを改善する」という表現について解説していきます。
薬機法と景品表示法
薬機法も景品表示法も誇大・虚偽広告を禁止している法律です。広告を出す上で必ず意識しなければならない法律が薬機法と景品表示法となります。
薬機法とは?
薬機法は、以下の5つの品質・安全性・有効性の確保を目的とした法律です。
- 医薬品
- 化粧品
- 医薬部外品
- 医療機器
- 再生医療等機器
医薬品以外の化粧品や医薬部外品などにおいて「医薬品と誤解を与える表現」を禁止しているのです。 例えば、「ニキビが治る」と化粧品で表現をした場合、薬機法違反とされます。なぜなら、ニキビを治せるのは医薬品だけと考えられているからです。 これは、「疾病の治療や予防に医薬品が使われる」という医薬品の定義が関係しています。ニキビやその他の疾病の治療は医薬品だけができるということなのです。
医薬品以外の化粧品・医薬部外品・医療機器・再生医療等機器においては、医薬品と誤解を与える表現はしないようにしましょう。
薬機法における広告
薬機法では、広告について以下のように定めています。
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。 2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。 3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
薬機法では、誇大・虚偽広告を禁止しています。誇大広告とは、実際の商品よりも良く見せている広告で、虚偽広告は事実と異なる表示をしている広告のことを指します。広告における薬機法において、注意が必要なのが「何人も」対象となるという点です。 誰もが薬機法の対象となり、誇大・虚偽広告を禁止しているので注意しましょう。
景品表示法とは?
景品表示法は、「不当景品類及び不当表示防止法」が正式名称の法律です。不当な景品・表示における消費者の誘引を防止しており、消費者の利益を保護しています。 景品表示法における不当な表示とは、以下の3つです。
- 優良誤認 品質や規格、成分、得られる効果など、実際のものよりも「すごくいい」と思わせてしまう表示のこと
- 有利誤認 価格などの条件において、実際のものより安く見せるなど「お買い得!」となる表示のこと
- その他内閣総理大臣が指定しているもの
広告表示において、優良誤認と有利誤認に注意する必要があります。薬機法では違反とならなくても、景品表示法で違反となるケースも多いので、景品表示法にも注意が必要なのです。
違反をすると?
どちらも違反をすると行政処分だけではなく、WEB上に事業者名や違反内容が掲載されます。消費者や社会的信頼を失うだけではなく、その他にも「課徴金の納付命令」が出されることもあります。薬機法では、課徴金に関して以下のように制定されています。
第七十五条の五の二 第六十六条第一項の規定に違反する行為(以下「課徴金対象行為」という。)をした者(以下「課徴金対象行為者」という。)があるときは、厚生労働大臣は、当該課徴金対象行為者に対し、課徴金対象期間に取引をした課徴金対象行為に係る医薬品等の対価の額の合計額(次条及び第七十五条の五の五第八項において「対価合計額」という。)に百分の四・五を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。 第一項の規定により計算した課徴金の額が二百二十五万円未満であるときは、課徴金の納付を命ずることができない。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
薬機法は総売上の4.5%の課徴金が課せられることがあります。課徴金の売り上げが225万円以下である場合には課徴金の対象とはなりません。景品表示法では、課徴金について以下のように制定されています。
第八条 事業者が、第五条の規定に違反する行為(同条第三号に該当する表示に係るものを除く。以下「課徴金対象行為」という。)をしたときは、内閣総理大臣は、当該事業者に対し、当該課徴金対象行 為に係る課徴金対象期間に取引をした当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の政令で定める方法に より算定した売上額に百分の三を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じな ければならない。ただし、当該事業者が当該課徴金対象行為をした期間を通じて当該課徴金対象行為に 係る表示が次の各号のいずれかに該当することを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠つ た者でないと認められるとき、又はその額が百五十万円未満であるときは、その納付を命ずることができない。
景品表示法では、総売上の3%の課徴金が課せら、150万円未満であれば課徴金の対象外となります。また、近年では薬機法もしくは景品表示法のどちらかの違反が多いですが、薬機法と景品表示法どちらも違反となり、両方から課徴金の納付命令が出ることもあり得ます。 薬機法と景品表示法の両方で課徴金の納付命令が出されたときには、合わせて7.5%納付しなければいけないということではありません。 薬機法と景品表示法の差額の1.5%分に景品表示法の3%を出した4.5%分を納付する形となります。
行政処分だけではなく、課徴金も課せられることがあるので前もって違反しないようにすることが大切です。
化粧品でむくみという広告表現はOK?
化粧品において、「むくみを改善」などとむくみに関する表現をすることはできません。 化粧品で謳える効能効果は56個と薬機法で決められています。 その範囲にむくみに関する表現は入っていないため、化粧品ではむくみという言葉を使うことができないのです。
しかし、論理的な理由付けがある場合には、むくみの改善を謳うことができます。それは「マッサージによるむくみの改善」です。 マッサージによって血行促進させることに関して表現ができるので、「むくみを取る」なども表現をすることができます。
化粧品でのむくみの改善は、以下のように「マッサージによるもの」という表現をするようにしましょう。
- マッサージの効果でむくみを改善させ…
- むくみを改善(※) ※マッサージの効果による
※印を使って表現する場合には、「むくみを改善」の言葉の近くに「※マッサージの効果による」と表現をするようにしましょう。マッサージの仕方の画像を挿入するのもおすすめです。
また、むくみの言い換え表現として、「疲れ」が浮かぶ方が多いと思います。 「疲れ」も薬機法上使えない表現となるので、他の言葉で疲れをイメージさせる表現をするようにしましょう。
健康食品でむくみに関する広告表現はできる?
健康食品では、化粧品と違ってどんな場合でもむくみに関して表現することはできません。 健康食品は、身体に良いとされる食品として考えられているため、「むくみを改善させ…」などと謳うことはできないのです。
健康食品におけるむくみの改善表現は、薬機法と景品表示法だけではなく、健康増進法の違反表現となるので注意しましょう。
薬機法と健康増進法におけるむくみについて詳しく解説します。
「むくみの改善」は薬機法上NG
健康食品は薬機法とは直接関係がありません。しかし、医薬品のような表現をすると薬機法違反となるのです。 今回解説している「むくみの改善」は、医薬品のような表現となるため謳うことができません。 健康食品において医薬品のような表現をすると、医薬品として承認・許可を得ていない未承認医薬品とみなされ薬機法に抵触するのです。 東京都保健福祉局では、以下のように健康食品について謳っています。
いわゆる健康食品には、医薬品と誤認されるような効能効果を表示・広告することはできません。 いわゆる健康食品は、医薬品と違い、病気の治療・予防を目的とするものではありません。病気の治療や予防に役立つことを説明したりほのめかしたりする表示や広告を行っている製品は、「医薬品」と判断します。外国語で記載されていても取り扱いは同じです。疾病の治療や予防効果の表示・広告は、医薬品としての承認を取得して初めて可能になるものなのです。いわゆる健康食品には、栄養補給や健康の維持など一般的な食品の範囲の目的しか持たせることができません。
上記のように、健康食品では医薬品のような使い方を謳うことができません。 血行促進は身体の機能の変化や増強に当たり、医薬品で表現できる内容となるため薬機法違反となるのです。
「むくみの改善」は健康増進法でもNG
「むくみの改善」は健康増進法でも謳うことが禁止されています。 健康増進法は、健康の保持増進効果に関して誇大・虚偽広告を禁止している法律です。 健康の保持増進効果については、以下のように考えられています。
「健康保持増進効果等」の定義 ①健康の保持増進の効果 同項は、「健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項」について、虚偽誇大広告等の禁止を規定しているが、このうち、「健康の保持増進 の効果」とは、健康状態の改善又は健康状態の維持の効果であり、具体的な例示としては、次に掲げるものが該当する。 ア 疾病の治療又は予防を目的とする効果 イ 身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効果 ウ 特定の保健の用途に適する旨の効果 エ 栄養成分の効果
出典:食品として販売に供する物に関して行う健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告 等の禁止及び広告等適正化のための監視指導等に関する指針(ガイドライン)
「むくみの改善」は、アの疾病の治療と予防を目的とする効果に当たるため、表現をすることができません。 健康食品において、むくみに関する表現は使わないようにしましょう。
体を温めることでむくみに言及するのはOKの場合もある
健康食品では、むくみに関して表現をすることができません。
しかし、体に良いお茶や紅茶などの温かい飲み物に関する商品であれば、原因などを紹介する場面で冷えに関する表現を使うこともできます。 温かい飲み物で体を温めることにより改善されるという表現は使うことができる可能性がありますが、違反かどうかの判断は各都道府県に委ねられるため、場合によっては違反となるケースもあります。
美容機器・雑貨でむくみに関する広告表現はOK?
美容機器では、「むくみの改善」と表現はできません。 美容機器で謳える効能効果は以下のように定められています。
美容・健康関連機器による作用又は効果が事実であることが前提となる。表現できる範囲は、概ね化粧品の効能・効果の範囲とする。家庭用EMS機器については、経皮的電気刺激による筋肉運動の範囲とする。 事実であっても、医薬品等の効能・効果の範囲の訴求はしてはならない。
美容機器に関しては、化粧品の効能効果と同じなので、基本的には表現をすることはできません。 その他にも、以下のように美容機器について定められています。
「医薬品等適正広告基準」に基づいた医療機器的効果の表現はできない。 医師又は歯科医師の治療若しくは医薬品又は医療機器でなければ一般的に治癒が期待できない疾患について、美容・健康関連機器を使用することで改善等が期待できるよ うな広告はしない。 【使用できない用語】 「腰痛が良くなる」「慢性病に効果がある」「疲れが取れる」「肩こりに良い」「癌に効果がある」「よく眠れる」「便秘に良い」「血行に良い」「血行が良くなる」「高血圧」「低血圧」「アトピー性皮膚炎」「痩せることができる」「脂肪が減る」「マッサージ効果がある」等々
美容機器では、むくみだけではなくマッサージ効果も表現をすることができません。美容機器でマッサージ効果を表現できるのは、「医療機器」のみとなります。 美容機器でマッサージ効果を謳いたい場合、医療機器として認証を得る必要があります。
併用する化粧品でのマッサージ効果によるむくみの改善は、美容機器では表現できないので注意しましょう。
雑貨に当たる健康器具は、以下のように謳える効能効果が定められています。
1 単に突起物やてこ等を応用し背筋等にあてて指圧する器具類(電動式のものは除く。)は、次に掲げる範囲の効能、効果のみを標傍する場合に限り医療用具に該当しないものとして取扱うこととすること。従つて、今後これらの器具類については、薬事法の規定に基づく製造の承 認、許可等を必要としないものであること。ただし、次に掲げる範囲以外の効能、効果を標傍 した場合は無承認、無許可の医療用具に該当するのでこの点十分留意され、製造業者等に周知 徹底されたいこと。
(1) あんま、指圧の代用(読みかえはしない。) (2) 健康によい (3) 血行をよくする (4) 筋肉の疲れをとる (5) 筋肉のこりをほぐす
指圧代用器と呼ばれる電動式ではないマッサージ器具であれば、血行や疲れを謳うことができるのでむくみをイメージしてもらうことができます。
指圧代用器以外では、謳うことができないので注意しましょう。
むくみに関する言い換え表現
むくみは直接謳えないことの方が多いです。直接表現できないときには、その場面をイメージしてもらうことができる表現を使いましょう。 むくみに関しては、以下のように言い換えをすることができます。
- おやすみ前のリフレッシュに
- 忙しい毎日に
- 毎朝のスッキリ
- 翌朝スッキリ
- スッキリした毎日を送られる
- 女性のためのアイテム
疲れも表現をすることができないので、スッキリする感じやリフレッシュで表現をするようにするのがおすすめです。
まとめ
化粧品、健康食品、美容機器・雑貨での「むくみの改善」について解説しました。 むくみに関しては、化粧品を使用するときのマッサージ効果によるもの、雑貨の指圧代用器であれば表現をすることができます。しかし、化粧品の効能効果が謳えるとされる美容機器では、マッサージ効果に関して謳うことはできません。混同しないように気をつけましょう。
むくみ改善の表現は、薬機法だけではなく景品表示法の違反ともなり得るので、十分注意する必要があります。
※違反事例、言い換え表現についてはあくまで参考として捉えてください。表現の違反等の判断については各都道府県の薬務課によって見解が異なりますので、ご理解頂きますようお願いいたします。