近年男性化粧品市場は、1200億円規模にまで成長し、女性だけではなく男性の化粧品への関心が高まっており、コロナ禍になりその需要は一層増えています。
テレワークの普及により、画面に映る自身の顔や表情に意識が向き「メンズコスメ」の利用者が一気に上昇しました。またコロナ禍から外出や飲み会にお金をかける機会が減り、美意識の高い男性から一般男性まで幅広い層がメンズコスメへの消費を高めています。
このような背景を受けて男性化粧品への新規参入企業や新商品の販売に力を入れる企業が増えています。 そこで今回は、男性化粧品の広告上の規制について薬機法を基に解説していきます。
薬機法とは
まず、薬機法について簡単にご説明したいと思います。
薬機法は、2014年(平成26年)11月に従来の薬事法の改正と共に名称変更し施行された法律です。 正式名称を、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といい、医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品における、品質や有効性、安全性を確保することなどにより、保健衛生の向上を図ることを目的としています。
薬機法における広告規制
薬機法においては化粧品等の広告も規制対象となります。 広告とは下記の3要件を満たすものが該当するため、要件を満たしていれば広告を意図していない場合でも規制の対象になるため注意が必要です。
顧客を誘引する(顧客の購入意欲をさせる)意図が明確であること 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること 一般人が認知できる状態であること
薬機法における広告規制は薬機法第66条として下記の様に定められています。
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。 2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。 3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
つまり、化粧品の広告においては虚偽や誇大な表現、効能効果の保証表現などをしてはいけないとされています。 上記の薬機法第66条の規定は、同規定を更に細かく具体化させた「医薬品等適正広告基準」の内容も対象となるため、規制される内容は多岐に渡ります。 さらに、「何人も」という記載があることから、広告主である販売元だけでなく、広告代理店やアフィリエイトサイト、SNSなど幅広く対象となるため、広告作成を行う際は十分に注意する必要があります。
化粧品の定義(薬機法第二条第3項)
3 この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
薬機法上、医薬部外品ではない、男性化粧品のほとんどが薬理作用によってその効能効果が認められている訳ではありませんので薬理作用による効能効果の表現はできないことに注意が必要です。
標ぼう可能な表現は?
NG表現
- 「治療できる」「効く」「〇〇に効果がある」
- 「〇〇を促進する」「〇〇を増進する」「〇〇を改善する」
- あたかも医薬品のような使用量目安を記載する
- 「最高の〇〇」「最上の〇〇」「強力な〇〇」効果に順位の誇張表現
- 「〇〇医師の推薦」「〇〇が治る」「〇〇が消える」治療が可能であるかのような表現
これらは薬機法上、非常に注意すべき広告表現となります。
OK表現
- 化粧品くずれを防ぐ
- 小じわを目立たなく見せる
- みずみずしい肌に見せる
- 清涼感を与える
- 爽快にする等の使用感
これらの表現を広告することは事実に反しない限り標ぼう可能となります。男性化粧品においても、効果及び使用感について事実であれば表現することができます。
ひげ剃りやにおいケア用品における広告表現
ひげそり用品
- ひげを剃りやすくする
- ひげそり後の肌を整える
これらの表現が可能となります。
においケア用品
用品夏の時期は体臭関連の商品の需要が高まります。 化粧品対象のにおいケア用品では、体臭を予防するような直接的な表現は避けなければいけません。化粧品は、あくまでも香りの効果で気になる臭いを気にならなくなる、というポイントで表現することをおすすめします。
化粧品として標ぼうするためには、以下の表現にとどめておく必要があります。
- 香りにより毛髪、頭皮の臭いを抑える
- 香りを与える
- 香りの効果が体臭を気にならなくします
- 気になるときにサッとエチケット
- シュッとひと吹き。さっぱり気持ちがイイ
また、スプレーなどのパウダー効果や、シートタイプのふき取り効果が実際あるのであれば事実に基づいて化粧品効能の範囲も合わせて標ぼう可能となるでしょう。 体臭の原因に作用する標ぼうや体臭を抑えるやリセットする、予防するなどの標ぼうは使用できません。
具体例
NG表現
- 「〇〇の香りが気になる、わきが、体臭、汗臭の臭いの元から、分解し気になる体臭を消します」
OK表現
- 「〇〇の香りが気になる身体の臭いを香りでやさしく包み込みます」
- 「〇〇の香りが脇、足、首筋などの気になる体臭を感じさせません」
腋臭対策用品に関する注意点
皮膚汗臭や制汗関連品のなかでも腋臭防止に関しては、医薬部外品の承認が必要となります。そして、たとえ医薬部外品であっても、効能効果において、臭いの元から分解するなど認められない表現もあります。
また、期間を示す様な表現もNGとなります。 例えば「1週間持続可能」などの効果期間を設定することは医薬品の用法用量を思わせる表現となり薬事法違反となる可能性がありますので十分注意が必要です。
まとめ
薬機法における男性化粧品の広告表現について解説してきました。
規制の対象となれば、広告の取り下げや企業イメージに悪影響を及ぼす可能性もあります。
薬機法上の分類と許可さてや表現に留め、最大限商品の魅了を伝える工夫が必要となるでしょう。