UV化粧品の広告には、「しばり表現」というものがあります。
しばり表現とは、効能効果の範囲を限定して、作用機序を明確にし消費者の誤解をなくすために、必ず表記しなければいけない文言のことです。 UV化粧品には、広告上気をつけるべきポイントが多いため、薬機法を理解して広告を制作しなくてはなりません。
この記事では、UV化粧品の広告としばり表現について解説します。
日焼け止め(UV化粧品)の基本
使用すれば紫外線をカットできる化粧品のすべてが、UV化粧品ではありません。
UV化粧品には処方に決まりがある
UV化粧品は、物理的な紫外線の遮断や、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤などUV防止を目的とした成分を含有している商品に限られています。 保湿を目的として配合した成分にUV防止作用があっても、「日焼けを防ぐ」といった標ぼうは不適切になります。 紫外線吸収剤を配合していても、その目的が退色防止といった場合にもUV化粧品になりません。
UV化粧品の表示の基本ルール
「UVカット」や「UVケア」といった表示は使い分けられています。
UVカット、UV
化粧品では「UVカット」あるいは単にUVという表示は、紫外線吸収剤・散乱剤を紫外線カット剤として配合した化粧品であれば問題ありません。「UV対応」「UV対策」も同様です。 薬用化粧品の場合も同じです。「肌への紫外線カット効果と認識される表示」には、紫外線カット効果を連想させる絵画、図解を含みます。対象とならない化粧品に太陽や紫外線を連想させるデザインを施すことは禁物です。
UVケア
「UVケア」は、日焼け後のケア(美白)を目的とした薬用化粧品でなければ表示できないことになっています。「紫外線吸収剤・ 散乱剤」を紫外線カット剤として配合した薬用化粧品であっても、「UVケア」とは表示できないので注意しましょう。
UVカット効果は物理的なものであること
化粧品であるため、医薬品的作用の連想させるような日焼け防止効果は標ぼうできません。あくまでも、物理的な紫外線防止効果であることが明確にわかるよう表現することが重要です。
日焼け止めのしばり表現とは
「しばり表現」とは、商品の効果効能を標ぼうする際に必ず付記しなければならないと決められた文言のことです。 薬機法で認められている日焼け止めの効能効果は、日やけを防いだり、日やけしたことによってシミ、ソバカスができるのを防ぐことです。
この「日焼け」がポイントで、シミ、ソバカスは日やけ以外の肌の炎症でもおこります。 「化粧品で防ぐことができるのは日焼けによるものだけ」ということを明確にするために、表現にしばりがあります。
化粧品の場合
化粧品で認められた日やけに関する効能効果は2つです。
- (36)日やけを防ぐ。
- (37)日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ
(37)を単にシミ、ソバカスを防ぐと表記することはできません。必ず「日焼けによるシミ、ソバカスを防ぐ」でなければいけません。
医薬部外品(薬用化粧品)の場合
医薬部外品では
- 日焼け・雪焼けによる肌あれを防ぐ。
- 日焼け・雪焼けを防ぐ。
- 日焼けによるしみ・そばかすを防ぐ。 注)作用機序によっては、「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」も認められる。
- 皮膚を保護する。
薬用化粧品でも化粧品と同じように、しばり表現に「日焼け・雪焼けによる」があります。 単に「肌荒れを防ぐ」「しみ、そばかすを防ぐ」と表現すると違反になります。
さらに、作用機序の「メラニンの生成を抑え」の部分についても、医薬部外品のしばり表現となります。メラニンの生成を抑えることによって、新しいシミやソバカスができるのを防ぐことだけが効果として認められています。
したがって、すでにできているシミ、ソバカスへの作用は、明示・暗示ともに不可となるため、注意が必要です。
日焼け止めで使われがちな禁止表現
日焼け止めの広告で、つい使いたくなる表現のうち、医薬品等適正広告基準で禁止されているものについて説明します。
完全/万能表現の禁止
「絶対に焼けない」「完璧な白肌」のような、完全/万能を意味する表現は、効果効能の保証的表現となるため標ぼうできません。
最大級表現の禁止
「最強の日焼け止め」という表現はできません。
紫外線防御効果を意味し、紫外線B波を防ぐ指標として「SPF」、紫外線A波を防ぐ指標として「PA」が使われます。これらの値が最大値「SPF50+/PA++++」であることを根拠として「最強の」と謳うことは不適切です。 例え根拠となるデータがあっても「最強」は最上級表現となり、効果効能の保証と捉えられる可能性があるため、使用することができません。
強力/強いも原則禁止
E5 「強力」、「強い」の表現 効能効果の表現で「強力な…」、「強い…」の表現は、原則として行わない。
使う場合は「強力な紫外線カット効果」とせずに、「強い紫外線もカット」というように、「強いのは日焼け止めの効果ではなく紫外線」だとわかる表現なら、不可とはなりません。
UV化粧品における美白表現の注意事項
日焼け止めでは、美白表現も入れたくなりますが、ここでも注意が必要です。 日本化粧品工業連合会による「化粧品等の適正広告ガイドライン」では、美白表現についても定められていて、狂言の範囲が決められています。
E15 「美白」等の表現 E15.0 薬用化粧品・一般化粧品における美白表現の原則 「美白」、「ホワイトニング」等は医薬品医療機器等法による効能効果ではない。従って、これらの文字を使用する場合は承認を受けた効能効果や化粧品で定められた効能効果の範囲で表現し、特に継続して使用しているうちに既に黒い肌の色が段々と白くなる旨を暗示することは認められない。 【関連法令等】 医薬品等適正広告基準 第4の3(1)、3(2)
まず、美白は薬用化粧品にのみ許されている表現なので、化粧品では使えないことを押さえておきましょう。 そして、承認を受けた効能効果の範囲内で表現し、使い続けることで肌が徐々に白くなるような記述はしないことが求められます。
認められる美白表現
ガイドラインでは、以下のように定められています。
「美白」「ホワイトニング」等を表現する場合は、承認を受けた効能効果「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」、又は「日やけによるしみ・そばかすを防ぐ」を記載すること。
キャッチコピーで「美白」を謳う場合は、美白だけで表現することはできません。 必ず「美白※」と※印をつけ、そばに美白とは何を指すのか、説明表現を行う事が必須とされています。
具体的には
- この美白化粧品はメラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぎます
- 美白※ ※メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ
といった表記をします。
認められない美白表現
ガイドラインに載っている美白表現で、違反となるおもな項目をまとめました。
- 肌本来の色そのものが変化するような(肌が白くなるような)表現
- できてしまったしみ、そばかすをなくす(治療的な表現)
- 承認効能以外のしみ、色素沈着などに効果があるかのような表現
- 肌質改善を暗示させる表現
どの項目も薬用化粧品の効果の範囲を明らかに逸脱した、認められない表現です。このような表現は使用せず、認められる範囲で広告を作りましょう。
まとめ
日焼け止めやUVケア商品には、効果を正確に表現するための「しばり」が存在します。 この「しばり表現」を理解していないと、違反広告になってしまうかもしれません。
広告表現について不安がある場合は、専門家の手を借りるなど、知らないうちに違反してしまわないよう気をつけましょう。