プレスリリースにおいて健康食品や化粧品の紹介や効能を示して説明することは薬機法の適用となるでしょうか。プレスリリースとは、プレス(新聞)とリリース(発表)、からなる言葉で、報道各社に対して発表することを意味します。 化粧品や健康食品の新商品を報道各社へリリースし、それを受けてマスコミが新聞やテレビ等の媒体で取り上げる形となり、その結果、商品が認知され売上が上がります。
プレスリリースは、広報活動の一つとして知られています。 そのリリースの内容を薬機法に基づいて、広告の定義と共に解説していきます。
化粧品に関する薬機法とは
薬機法とは、正式名称「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、化粧品、医薬部外品、医薬品、医療機器の製造、販売、広告について定めた法律です。管轄は、厚生労働省、都道府県庁、警察となります。
医薬品として、許可されていない商品をまるで医薬品かの様な効能効果で表現してしまう、その様な商品を規制する法律が薬機法です。 なかでも、特に第10章医薬品等の広告については、広告に関わる立場の方は、しっかりと理解する必要があります。
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。 2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。 3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
薬機法における広告表示の規制対象者は、「何人も」と規定されており、広告代理店や広告物制作会社の従業員であっても違反広告を掲載した際は、当然、規制の対象になり得ます。広告媒体に限定はなく、当然、個人のブログやホームページ上で表示した内容も規制の対象になります。
プレスリリースと広告の定義
薬機法上、広告とは以下の条件を満たすものです。
- 誘引性について 顧客を誘引する意図が明確であること。
- 特定性について 特定の商品名が明らかにされていることと。
- 認知性について 一般人が認知できる状態であること。
上記条件を満たせば、薬機法上広告として認識されますが、プレスリリースに当てはめた場合、表示内容が広告に該当するか否かが問われます。前提として、薬機法に該当するか否かは、広告に該当するかで判断されます。
上記の条件を満たしているリリースは、広告性が妥当で薬機法の規制対象となるでしょう。
例えば、プレスリリースの内容をそのままホームページで掲載した時点で広告となります。 ホームページは、認知性の観点から広告の要素を伴いますので薬機法上の規制対象の可能性が高いです。
また、リリース先のプレスサイドがそのまま記事にした場合も同様に、一般に広く誰でもみることが可能となり認知性に該当します。 プレスリリースは、プレスサイドの担当者の扱いかた次第で広告となる可能性があるということでしょう。 プレスリリース自体に認知性、特定性、誘引性が含まれていないかを精査した上でリリースする必要があります。 そうすれば、薬機法上の規制を受けるリスクは少ないと考えます。
規制対象となる広告表現とは
広告に該当するか否かも重要ですが、具体的に規制の対象となってしまう表現についても見ていく必要があります。 化粧品や健康食品は当然薬機法の規制下にあります。 商品のラベルなどに効果やその効能的な表現が記されていますが、表現内容によっては誇大広告として見なされることもあります。
例として
- 「治療できる」「効く」「〇〇に効果がある」効くや治るなどの表現はNG
- 「〇〇を促進する」「〇〇を増進する」「〇〇を改善する」改善するなどの表現はNG
- 「〇〇を予防する」「〇〇にかかりにくい」予防効果をうたう表現はNG
- あたかも医薬品の様な使用量目安を記載するこもNG
- 成分の記載は可ですが、効果効能の記載はNG
薬機法に違反しないためにもこれらの表現がプレスリリースに含まれていないか、厳重にチェックする必要があるでしょう。
注意すべき薬機法違反、その罰則とは
これまで、規制の対象について解説しましたが、実際にこれらに違反した際、どの様な処分を受けることになるのでしょうか。
これまでの罰則として、未承認医薬品などの広告規制に違反した者に対しては、中止命令が下され、誇大広告及び未承認医薬品等の違反広告を行ったものに対しても、刑罰が科されることもありました。
さらに、薬機法上の業許可を持つ事業者が広告の規制に違反する様な行為があった際には、業許可自体を取り消される可能性もあります。 しかし、これらの罰則が科せられたとしても、そこで被る不利益は決して大きいものではありませんでした。
例えば、第66条第1項の虚偽・誇大広告に違反する様な行為があった際に、その罰金の金額は、わずか200万円以下に過ぎず、違反広告によって得た利益の金額と比較しても、さおほど大きな効果を産まない場合もあります。 また違反した広告自体が業許可を持たない事業者が運営しているケースもあり、その際に許可を取り消す内容の行政処分をおこなうことができない場合もあるのです。
上記の様に、法律の抑止効果が発揮しにくいケースもあったことを受けて、虚偽・誇大広告(法第66条第1項)及び未承認医薬品等の広告禁止(法第68条)に違反した際には、措置命令という行政処分が下される他、医薬品を販売した企業が虚偽・誇大広告によって処分される場合には、課徴金を科すという規制法があらたに創設されることとなったのです。
具体的には、課徴金制度において虚偽、誇大広告を行った際に、違反と認められる行為を行った期間に応じて該当する商品の売上から4,5%分を課徴金として徴収することができることになりました。
一方、自主的に違反があったことを申告した際には、課徴金が半額に減額される措置も取られれることとなっており、業務改善命令や業務停止命令を行った際には、課徴金の納付が命じられないことも規定として盛り込まれています。
これらの規制の改正によって今後、措置命令や課徴金納付命令を含めた執行件数が確実に増えることが予想されます。広告代理店・広告主の方は、これまで以上に薬機法上の規制内容の正しい理解と規制内容の変更を都度、把握する必要があるでしょう。
まとめ
化粧品やコスメのプレスリリースにおける広報活動や広告宣伝活動においては、薬機法の理解が重要となります。 ルールを知らずにうっかり誤った表現をしてしまうことは、非常にリスクが高く、先に記載した罰則を受けるだけではなく企業ブランドにも傷が付いてしまいます。
広報担当者ご自身も、情報を収集し、正しい法律の理解が求められるでしょう。