広告表現を考えるとき、薬機法と景表法が基準となります。
大前提として、効果効能を謳った表現、医薬品を思わせる表現、疾病に関与する表現は認められません。
くしゃみ、鼻水など、このような身体症状に関する広告表現を考えていきたいと思います。
特にアレルギー、花粉症は特定疾患の扱いになるので、花粉を暗示させる表現も注意してください。
くしゃみ、鼻水など症状を特定しない広告表現
・季節の変わり目が気になる前に
・快適な春を過ごしたい
このように広告したい商品が必要とされる状況を考えます。
春=不調という季節と疾病に関与する表現を組み合わせることは避けましょう。
春、春先など季節を特定する場合はポジティブな表現がおすすめです。
不調に関しては、ケア、サポートなど健康を維持していくニュアンスを意識することが大切です。
では、症状が特定している場合、健康食品においてはどのような成分が使われているでしょうか。
含まれる成分の役割を紐解いていきましょう。
くしゃみ、鼻水、花粉症で懸念されること
・喉がイガイガする
・くしゃみが止まらない
・鼻水が出る
・鼻や目がかゆい
・目が赤い、充血する
・涙、めやにが出る
このようなアレルギー症状は、花粉によって免疫が過剰反応し、かゆみや炎症を生み出すヒスタミンという物質の影響です。
医薬品では抗ヒスタミン薬が認められていますが、健康食品の観点で考えると食生活を改善し、免疫力を維持、高めることで症状を予防していくということになります。
症状自体を改善させる目的ではない
「栄養機能食品」は、すでに科学的根拠が認められている栄養成分が、1日の摂取目安量に適合しているものを指します。
・脂肪酸(n-3系脂肪酸)
・ミネラル類(亜鉛、カリウム、カルシウム、鉄、銅、マグネシウム)
・ビタミン類(ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンA、ビタミンB₁、ビタミンB₂、
ビタミンB₆、ビタミンB₁₂、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、葉酸)
こちらは届出をしなくても、国が定めた表現で、機能表示することができます。
併せて、個別の審査を受けたものではない旨の表示も必要です。
ここでは、アレルギーや花粉症の際に免疫力を維持し、サポートするために含有する成分をみていきます。
以下のものが代表的です。
・乳酸菌
・ビタミンC
・ビタミンD
・DHA、EPA(青魚の脂に含まれる)
・ポリフェノール
・食物繊維
このように普段の食事に含まれる栄養素を効果的に摂取することが目的です。
広告したい商品において含有量の多い成分を中心に、どういった役割があるか考えます。
・乳酸菌 → 腸内環境を整える
・ビタミンC → 抗酸化作用
・ビタミンD → カルシウム、マグネシウムを吸収して骨をつくる
・DHA、EPA → 必須脂肪酸
・ポリフェノール → 抗酸化作用
・食物繊維 → 腸内環境を整える
成分の働きを広告表現してしまうと、医薬品的な効果、効能の暗示となるので、言い換えを考えていきましょう。
・腸内環境を整える → すがすがしい毎日に、すっきり
・抗酸化作用 → 若々しくいたい、いつまでも美しく
・骨をつくる → 生涯現役
くしゃみや鼻水、目や喉の痛み、かゆみのような症状は、流行する季節が来る前に免疫力を高めておくと効果的です。
また春先は、ドラッグストアなどの販売店にはマスク、鼻炎薬など花粉症に向けた商品が溢れています。
健康食品は医薬品ではありませんが、花粉症対策として顧客を誘引する意図が明確にわかる広告は規制対象になります。
例えば、同一紙面に医薬品と健康食品を併せて掲載すること自体は問題ありません。
しかし、一般の生活者に医薬品的な効果、効能があるとみせかけ誤認されるような広告は避けてください。
承認前広告の禁止にあたります。
(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)
第六十八条 何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
過度な消費、乱用を助長するおそれがある広告も不適切とされています。
健康食品だからいくら飲んでも身体に良い、副作用がないといった表現は事実に反するものです。
過度な消費、乱用を助長するだけでなく、虚偽や誇大広告とみなされるおそれがあるので注意しましょう。
一日の服用目安量を基準に、健康のサポートいう認識を明示してください。
また、医薬関係者、医療機関、公的機関や団体などが公認、推薦、選用している旨の広告は、
一般生活者の認識に与える影響が大きいため、仮に事実であっても原則不適当とされています。
健康食品での違反事例
花粉症ではありませんが、特定疾患の感染症対策ができるという広告で違反事例がありました。
2020年3月31日、健康食品販売会社「日本ホールフーズ」の社長ら2名が書類送検されました。
販売していたオリーブ葉を含有する健康サプリメントに、ウイルスの増殖を抑えるなどの広告宣伝を行っていたということです。
新型コロナウイルスが流行してから、このようなウイルス対策と謳った商品の違反が増えています。
もう1つ違反事例をみてみます。
2022年9月9日に、感染や重症化を予防するかのような広告表示で消費者庁が措置命令を出しました。
岡山県にある販売会社「山田養蜂場」では、以下3商品が対象になりました。
・「1stプロテクト」
・「2stプロテクト」
・「ビタミンD+亜鉛」
自社サイト内やダイレクトメッセージには、「コロナ時代を生き抜く対策を万全に」、「感染と重症化どちらも予防したいお客様の声に応えて」などと謳っており、顧客向けに広告宣伝しているところが悪質と言えます。
成分の役割を誇大広告してしまうと、疾病に関与する表現に直結してしまいます。
花粉症もまた、春に流行する疾患ですので、医薬品の効果、効能を思わせる表現にはよく注意してください。
あくまでも、食品として取り入れるという意識を忘れずに持ちましょう。
健康食品広告での使用が認められる表現
では、くしゃみに関与する健康食品の広告表現について、具体的に考えていきます。
デリケートな季節も健やかに過ごしたい
むずむずバイバイ
爽快な日々を続けたいあなたへ
このように、身体機能に関与せず、花粉やスギといった花粉症を思わせる直接的な単語は避けましょう。
また画像やイラストと併せて広告する場合は、イメージで花粉症と判断されてしまうので、より注意が必要です。
健康食品広告での言い換え表現例(参考)
免疫力を高める → 栄養補給でいつでも元気
アレルギーを良くする → デリケートな時期もハツラツと
「くしゃみ」に関する表現を言い換えたい時の具体例
NG:花粉症の時期がつらい人へ
OK:気になる季節も明るく過ごそう
NG:鼻がむずむずする時は
OK:ぼーっとする前に
まとめ
くしゃみ、鼻水などのアレルギー症状、花粉症に対する広告表現はごく曖昧なものしか認められていない現状です。
医薬品的な効果効能、疾病を改善する表現、明らかに花粉症のイメージとなってしまうものには気を付けましょう。
広告表現を考えるときに言い換えやすい手順をまとめてみます。
くしゃみ→鼻や喉の不調→広告したい商品に含まれる成分→成分の役割→医薬品な効果効能の表現を避ける
特定した表現を避けるということは、一般に広く供給できるチャンスでもあるということです。
効果には個人差があり、使用感や継続のしやすさも大きなポイントとなるので、消費者の目線に立って分かりやすく寄り添うような広告表現が好まれることでしょう。
※違反事例、言い換え表現についてはあくまで参考として捉えてください。表現の違反等の判断については各都道府県の薬務課によって見解が異なりますので、ご理解頂きますようお願いいたします。