「限定」「新発売」「大人気」といったフレーズは、消費者の目を引くための定番の表現として知られています。
しかし、これらのフレーズは気軽に広告表示として使えるわけではありません。
化粧品の広告で誤った使い方をしている場合は、薬機法や景表法違反となる恐れがあるのです。
本記事では、「限定」や「新発売」「大人気」を化粧品の広告に使用する際の注意点についてご紹介します。
広告制作に関わる方は、誤った広告表現を使用していないかチェックしてみましょう。
表現方法は使用NG
化粧品の広告に「期間限定」「○○な方に大人気!」といったフレーズは使用できるのでしょうか。
化粧品広告は、その商品の効果効能や安全性について、事実に反して優秀であるといった認識を消費者に与える恐れのある表現は使用することができません。
特に、次のような表現は消費者に誤った認識を与える恐れがあるとされています。
- 最大級表現(最大、最小、最高、無類)
- 他社より優れていると意味する表現(No.1、日本一、日本で初めて)
「限定」や「大人気」は、客観的事実に基づく根拠があれば使用OK
しかし、化粧品公正取引協議会が定めている「化粧品の表示に関する公正競争規約」によると、「限定」や「大人気」というフレーズに客観的事実に基づいた根拠がある場合は、広告表現として使用が認められます。
客観的根拠がみられない場合は、広告への使用は避けることが大切です。
最上級を意味する用語
「最大」、「最高」、「最小」、「無類」等最上級を意味する用語は、客観的事実に基づく具体的数値又は根拠のある場合を除き使用することはできない。
優位性を意味する用語
「世界一」、「第一位」、「当社だけ」、「日本で初めて」、「抜群」、「画期的」、「理想的」等優位性を意味する用語は、客観的事実に基づく具体的数値又は根拠のある場合を除き使用することはできない。
(化粧品の表示に関する公正競争規約より引用)
また、「大人気」や「No.1」といったフレーズを広告表示に使用する際は、客観的根拠として調査機関の名称と調査を行った期間を添付しましょう。
多くの場合、直近1年以内の調査結果であることが求められています。
効能効果や安全性について「No.1」はNG
また、「大人気」「No.1」の広告表示を使って化粧品の効果効能や安全性を表現することは、たとえ事実であっても薬機法や医薬品等適正広告基準、化粧品等の適正広告ガイドラインに違反するため使用できません。
そのため、「大人気」「No.1」は、あくまで商品の人気や売り上げについて表現するために使うことが大切です。
ちなみに、化粧品の使用感(香り、使いやすさ)についてもこれらの広告表現が認められています。
何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
(薬機法第68条より引用)
医薬品等の効能効果等又は安全性について、具体的効能効果等又は安全性を摘示して、それが確実である保証をするような表現をしてはならない。
(医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項より引用)
「効き目No.1」、「安全性No.1」等のNo.1に関する表示は効能効果、安全性についての最大級表現に該当するため行わないこと。ただし、効能効果、安全性に該当しない「売り上げNo.1」等のように、消費者に効能効果、あるいは安全性に対する誤認を与えない表現で、客観的調査に基づく結果を正確適切(調査会社、調査期間等)に引用し、出典を明らかにしながら表現することは差し支えない。
(化粧品等の適正広告ガイドラインより引用)
「新発売」は発売後12ヶ月間まで使用OK
「新発売」や「新製品」といった広告表示は、その商品が発売してから12ヶ月間であれば使用が認められています。
以前は「新発売」「新製品」のフレーズは発売開始から6ヶ月間までとされていました。
しかし、2017年に医薬品等適正広告基準が改正され、発売開始から12ヶ月間までに延長されています。
「新発売」、「新しい」等の表現は、製品発売後 12 ヵ月間を目安に使用できる。
(医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項より引用)
化粧品の広告に「新発売」と表示する際は、その商品が発売してから12ヶ月間経過していないか確認しておきましょう。
認められた期間を超えても「新発売」と表示している場合は、「虚偽広告」として薬機法違反となるため注意が必要です。
過剰な「今だけ○○」は景表法違反となる恐れも
「限定」「今だけ」といった広告表示は、内容に客観的根拠があることに加えて過剰な表現を避けることが大切です。
例えば、「限定」「今だけ」の期間を何度も延長する・「今買えばお得」と広告に表示すると、不当表示として景表法違反に該当する恐れがあります。
景品表示法第5条第2号には、「商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる」表示をしてはならないと規定されており、この表示がいわゆる有利誤認表示ということになります。
(消費者庁HP「表示に関するQ&A」より引用)
景表法に違反しないためには、期間限定キャンペーンを常に行っていない(通常の販売実態がある)ことをしっかり表示することが大切です。
たとえ販売状況の悪化などの理由でも、キャンペーンを延長しつつ広告表示を「今買えばお得」のままにしていると、不当表示として景表法違反となる可能性があるため注意しましょう。
不当表示は課徴金制度の対象となっている
不当表示として景表法違反となった場合は、以前は不当表示を止めさせるための措置命令の対象となっていました。
しかし、2014年に景表法が改正され、措置命令に加えて課徴金制度が導入されています。
課徴金制度は、不当表示によって消費者が不利益を被る事態を防ぐために導入されました。
課徴金命令を受けた場合は、課徴金の対象行為に関係する期間(課徴金対象期間)に実施した取引で得られた売上高の3%の金額を国に納付しなければなりません。
事業者が、第五条の規定に違反する行為(課徴金対象行為)をしたときは、内閣総理大臣は、当該事業者に対し、当該課徴金対象行為に係る課徴金対象期間に取引をした当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額に百分の三を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし、当該事業者が当該課徴金対象行為をした期間を通じて当該課徴金対象行為に係る表示が次の各号のいずれかに該当することを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠つた者でないと認められるとき、又はその額が百五十万円未満であるときは、その納付を命ずることができない。
(景表法第8条より引用)
不当表示を使用して景表法違反となった場合は、多額の課徴金納付を求められます。
化粧品広告の制作に関わる方は、薬機法だけでなく景表法もしっかり把握しましょう。
健康食品や雑貨でも、業界内の自主基準をチェック!
健康食品や雑貨の広告表示は、化粧品とは違って薬機法の制限を受けていません。
しかし、これらの広告を作成する場合でも、その業界内で自主基準が設けられているため注意しましょう。
基本的には、化粧品と同じく「限定」「新発売」「大人気」といったフレーズが合理的根拠のある表現であれば広告表示として使用OKとなります。
まとめ
化粧品広告では、「限定」「大人気」といったフレーズが客観的根拠に基づいたものあれば表現が認められています。
しかし、客観的根拠がない場合は虚偽広告として薬機法違反に該当するため使用できません。
また、化粧品の「新発売」表示は商品発売から12ヶ月間であれば使用が認められています。
この期間を過ぎても使用し続けている場合は医薬品等適正広告基準に違反していると判断されるため注意が必要です。
化粧品の広告制作に求められているのは、消費者の目に留まるフレーズだけではありません。
薬機法や医薬品等適正広告基準、景表法をしっかり把握して、消費者に誤解を与えないように気を付けましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。