医薬品や化粧品、健康食品の販売において、キャンペーン割引を行うことは認められているのでしょうか?
これらの商品についてのキャンペーン割引は、薬機法や景表法の規定に反しない限り可能とされています。特に、景表法ではキャンペーン割引についての金額範囲が定められているため、必ずチェックしておきましょう。
本記事では、医薬品や化粧品、健康食品におけるキャンペーン割引の注意点について解説します。
キャンペーンや割引に関わる法律
医薬品や化粧品、健康食品のキャンペーン割引を行う際には、次のような法律・ガイドラインをしっかりチェックしておきましょう。
- 景表法(景品表示法)
- 薬機法
- 医療広告ガイドライン
また、キャンペーンで配布される「景品」については、景表法によって次のように定められています。
- 消費者に購入を促すための手段となるもの
- 事業者が商品やサービスの取引に付随して提供するもの
- 消費者や取引の相手方に提供する物品や金銭、利益
この法律で「景品類」とは、顧客を誘引するための手段として、その方法が直接的であるか間接的であるかを問わず、くじの方法によるかどうかを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引(不動産に関する取引を含む。以下同じ。)に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。
(景表法第2条より引用)
したがって、化粧品や健康食品のキャンペーンで配布する物品や商品券、キャンペーン割引は法律上「景品」と判断されます。
医薬品のキャンペーンは薬機法違反?
医薬品のキャンペーンが消費者に医薬品の過剰摂取・乱用を促す広告とされた場合は、薬機法違反に該当します。
医薬品のキャンペーン割引について、「医薬品等適正広告基準」によって次のように定められています。
11 懸賞、賞品等による広告の制限
(1)過剰な懸賞、賞品等射こう心を煽る方法による医薬品等又は企業の広 告を行ってはならない。
(2)懸賞、賞品として医薬品を授与する旨の広告を行ってはならない。 ただし、家庭薬を見本に提供する程度であればこの限りではない。
(3)医薬品等の容器、被包等と引換えに医薬品を授与する旨の広告を行っ てはならない。(1) 懸賞、賞品等による広告について 景品類を提供して販売・広告することは、不当景品類及び不当表示防止 法(昭和 37 年法律第 134 号)の規定に反しない限り認められる。 なお、医薬品の過量消費又は乱用助長を促す広告を行うことは、本基準 第4の4「過量消費又は乱用助長を促すおそれのある広告の制限」に抵触するため不適当である。
(1)多数購入又は多額購入による値引きについて
多数購入又は多額購入することによる過度な値引き広告については、消費者に不必要な購入を促すことになるため行わないこと。
(医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等についてより引用)
したがって、医薬品のキャンペーンが消費者に医薬品の過剰摂取・乱用を促していると判断された場合は、法律上不適切な広告とされるため注意が必要です。
また、クリニックや医療相談の広告については、キャンペーン割引を強調した広告表現は「品位を損ねる内容の広告」として不適切とされています。
ア 品位を損ねる内容の広告 医療広告は、患者等が広告内容を適切に理解し、治療等の選択に資するよう、客観的で正確 な情報の伝達に努めなければならないから、医療機関や医療の内容について品位を損ねる、あるいはそのおそれがある広告は行うべきではない。
【具体例】
・ 「無料相談をされた方全員に○○をプレゼント」
物品を贈呈する旨等を誇張することは、提供される医療の内容とは直接関係のない事項として取り扱う。
(医療広告ガイドラインより引用)
また、景品をプレゼントすることを強調する広告表現も、医療広告において「品位を損ねる内容の広告」として認められていません。
提供される医療の内容とは直接関係のない情報を強調し、患者等を誤認させ、不当に患者等を誘引する内容については、広告は行うべきではない。
【具体例】
・ 「無料相談をされた方全員に○○をプレゼント」
物品を贈呈する旨等を誇張することは、提供される医療の内容とは直接関係のない事項として取り扱う。
(医療広告ガイドラインより引用)
景表法が定めるルール
景表法(景品表示法)では、取引額が5,000円未満であれば購入額の20倍以下、5,000円以上であれば10万円以下であれば、キャンペーンの景品として配布することが認められています。
加えて、配布する景品や商品券の額を売上予定額の合計に足して2%以下に設定することが必要です。
第二十六条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、景品類の提供又は表示により不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害することのないよう、景品類の価額の最高額、総額その他の景品類の提供に関する事項及び商品又は役務の品質、規格その他の内容に係る表示に関する事項を適正に管理するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならない
(景表法第26条より引用)
景品の価格を算定する方法
キャンペーン割引や景品の価格を算定するときは、その商品が通常購入するときの価格を参考にするよう定められています。
Q7 景品類の価額は、どのように算定すればよいのでしょうか。
A 景品類の価額は、景品類と同じものが市販されている場合は、景品類の提供を受ける者が、それを通常購入するときの価格によることとされています。
景品類と同じものが市販されていない場合は、景品類を提供する者がそれを入手した価格、類似品の市場価格などを勘案して、景品類の提供を受ける者が、それを通常購入することとしたときの価格を算定し、その価格によることとされています。
(消費者庁「景品に関するQ&A」より引用)
ちなみに、商品の取引額は消費税込みの価格とされています。消費税を無視して景品の最高額を超えてしまわないよう、十分注意しましょう。
Q12 取引の価額は、消費税込みの価格でみるのでしょうか。
A 取引の価額は、消費税込みの価格となります。
(消費者庁「景品に関するQ&A」より引用)
「来店してくれた全員にプレゼント」する景品の価格を算定するときは
「お店に来たお客様全員に景品をプレゼント」といったキャンペーンを実施する場合は、景品や割引価格を原則100円とするよう定められています。ただし、お店で通常取引される商品が100円を超える場合は、お店にとっての最低価格を参考にします。
Q 当店では、商品を購入したかどうかにかかわらず来店してくれた顧客に、景品を提供したいと考えています。この場合の取引の価額はどのように算定すればよいでしょうか。
A 商品・サービスの購入を条件とせずに、店舗への来店者に対して景品類を提供する場合の取引の価額は、原則として100円となります。ただし、当該店舗において通常行われる取引の価額のうち最低のものが100円を超えると認められるときは、当該最低のものを取引の価額とすることができます。
なお、この考え方は、懸賞、総付景品のいずれの方法で景品類を提供する場合でも同様です。
(消費者庁「景品に関するQ&A」より引用)
まとめ
医薬品や化粧品、健康食品を販売するときにキャンペーン割引を行う際は、景表法・薬機法・医療広告ガイドラインに抵触しないことが求められます。
医薬品の過剰摂取・乱用を促すようなキャンペーン広告は薬機法に抵触する恐れがあるため注意が必要です。
また、景品や商品券、キャンペーン割引については景表法によって金額の範囲が決められています。提供できる景品類の最高額については必ず確認しておきましょう。