健康食品や美容機器などを扱う場面において「精神安定」という表現は注意が必要です。
薬機法や景表法と呼ばれる法律に抵触する恐れがあります。商品の良さを伝えるために良かれと思って使っていた表現が「実は法律に違反していた」とうことは避けたいところです。
そこで本記事は薬機法や景表法の詳細や「精神安定」が実際の広告表現で使えるかどうかなどを詳しく解説していきます。健康食品や美容機器などで広告を検討されている方などはぜひ最後まで読んで参考にしてください。
「精神安定」は謳える?
健康食品や美容機器などを扱う場面において「精神安定」と表現することはできるのでしょうか。
結論を言うと「精神安定」という表現をそのまま使うと法律違反になる恐れがあります。具体的には薬機法や景表法に抵触していなかいか注意が必要です。後の章で詳しく解説しますが例えば薬機法の場合、医薬品を暗示するような表現の場合に薬機法の対象となってしまいます。薬機法や景表法の詳細を確認しながら理解を深めていきましょう。
広告表現に注意!薬機法、景表法とは
「薬機法」や「景表法」とはどのような法律なのでしょうか?ここからはそれぞれの法律を詳しく解説していきます。
薬機法とは
厚生労働省は医薬品や医療機器などの安全性や有効性を確保するために規制を作っています。正式名所として「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」とよび、「薬機法」「医薬品医療機器等法」などと略して呼ばれることが多いです。
主に下記の薬品類や医療機器、化粧品などが薬機法の対象になります。
薬機法の対象
- 医薬品(医療用医薬品、市販薬、血液学的検査薬等)
- 医薬部外品(うがい薬、殺虫剤、染毛剤、栄養ドリンク等)
- 化粧品(一般的な化粧品、シャンプー、スキンケア用品等)
- 医薬機器(ペースメーカー、人工関節、超音波画像診断装置など)
- 再生医療等製品(心筋の細胞シート等)
出典:厚生労働省
もともとの法律が「薬事法」という名前で、平成26(2014)年の法改正により名称が薬機法に変更されました。前述の対象のものを扱う際に「開発」「製造」「販売」「流通」「使用」など各場面で規制が細かく定められています。
(誇大広告等) 第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
広告に関しても規制が定められています。医薬品など扱う場面で製造方法や効果について「明示的暗示的に関わらず」誇大表現が禁止されています。
(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止) 第六十八条 何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
健康食品や美容機器は基本的には薬機法の対象外となり、基本的には薬機法に抵触しません。
しかし、表現の方法によっては薬機法の対象になる可能性があり、「あたかも医薬品のような表現」にならないように注意が必要でしょう。
景表法とは
薬機法の他に関わってくる法律として景表法が挙げられます。景品表も詳細を見ていきましょう。
景表法は正式名称が「不当景品類及び不当表示防止法」で、不当なセールスなどで商品販売の場で顧客が不利益にならないように防止する法律です。
(目的) 第一条 この法律は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とする。
公平に取引すべき商品の売買の場において、その商品を実態よりもよく見せて売るような悪質な業者が後を絶ちません。
景表法では、規制をつくることにより消費者の方が「自主的かつ合理的」に良い商品を選べる環境づくりを目指しています。
<不実証広告規制の概要>
消費者庁は、商品・サービスの効果や性能に優良誤認表示の疑いがある場合、その事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます。当該資料が提出されない場合、当該表示は不当表示とみなされます。
出典:消費者庁
健康食品や美容機器を扱う上では「不実証広告規制」「優良誤認表示」などに注意を払う必要があると言えます。簡単に説明すると商品に関して「事実に反していること」を伝えることはできず、効果などを謳う際は「合理的な根拠なし」で伝えることはできません。
健康食品での違反例
健康食品を扱う際はどのような表現が違反例になるのでしょうか。
健康食品の場合は「この商品を食べることで精神安定になります」という表現は「身体の機能への変化をイメージ」させてしまいます。そのため「精神安定」と伝えると医薬品の扱いになり、薬機法に違反する可能性があります。
使用が認められる表現
健康食品を扱う場合に認められる表現も確認していきましょう。
前述の通り「この商品を食べることで精神安定になります」という表現は身体への変化をイメージさせてしまい薬機法違反の可能性があります。そのため「より抽象的」な表現や「気分を表すような」下記のような内容を検討するとよいでしょう。
- 毎日の元気に
- ハツラツ
- 内側からイキイキ
言い換え表現(参考)
ここまでの内容を参考に具体的な言い換え表現も見ていきましょう。健康食品の広告を扱う際など参考にしてみてください。
NG:食べると精神安定になる
OK:毎日の元気に
NG:食べると精神安定になる
OK:内側からイキイキ
美容機器での違反例
美容機器での違反例も見ていきましょう。
例えばフェイシャルスチーマーなどアロマ系の美容機器の場面などにおいて、「このフェイシャルスチーマーの香りは精神安定になります」という表現は法律に抵触してしまう可能性があります。
ストレス軽減など、精神的な症状がよくなるような表現は薬機法で対象となっている「医薬品的な効果」となる可能性があります。類似の表現を検討するなどが必要です。
使用が認められる表現
具体的にはどのような表現であれば問題ないのでしょうか。前述の通り「精神的な症状がよくなるような表現」は薬機法で禁止されており、より抽象的な表現や気分を表す表現が適切になります。
- 気分スッキリ
- 内側からイキイキ
- 香りでリフレッシュ
言い換え表現(参考)
美容機器の場合、具体的にどのような表現で言い換え可能でしょうか。
具体的な言い換え表現の例を挙げていくので、広告作成の際など参考にしてください。
NG:アロマの香りで精神安定
OK:アロマの香りで気分スッキリ
NG:アロマの香りで精神安定
OK:アロマの香りでリフレッシュ
まとめ
本記事では健康食品や美容機器を扱う場面で、広告表現に「精神安定」が使えるのかを薬機法や景表法の観点から解説しました。
「精神安定」をそのまま広告表現などで使うと薬機法などに抵触してしまう可能性が高く、注意が必要です。景品法の観点でも根拠の弱い内容を訴求しないように十分気を付けるべきでしょう。素敵なサービスを届ける際に「知らずに法律違反してしまった」という事態にならないよう、ぜひ今回の内容を参考にしてみてください。