「治療」や「セラピー」という言葉はよく使われていますが、美容室やエステサロンの広告表現で使用して良いのでしょうか?
「アロマセラピー」という表現は大丈夫と思われがちですが、 「治療」や「セラピー」は薬機法違反にあたるため、美容室やエステサロンの広告表現で使用することはできません。
本記事では、「治療」「セラピー」とは何か、美容室・エステサロンなどで「治療」「セラピー」を謳っていいかについて解説して行きます。
「治療」「セラピー」とは
「治療」や「セラピー」とは何を指すのでしょうか? 「治療」とは医師が患者に対して行う行為で、医師以外の者が患者の症状を良くする行為は認められていません。 「セラピー」とは英語でtherapy=「療法」・「治療」と訳します。
医師が行う「治療」と同じ意味にあたリます。 アロマセラピーやノーニードルメソセラピーなどセラピーという言葉を用いた施術がありますが、治療行為は医師免許を持っている者しか行うことができないので注意が必要です。
「治療」「セラピー」を広告で謳える?薬機法との関連性
美容院やエステサロンで「治療」や「セラピー」という広告表現はできるのでしょうか?「治療」という言葉は、病院で怪我や病気などの「治療」を受けるというイメージがあるので、美容院やサロンで使うことは少ないと思いますが、「アロマセラピー」という言葉は知らずに使ってしまっている場合もあるかもしれません。
実は、「アロマセラピー」という言葉は薬機法違反にあたります。「アロマセラピー」という言葉も「セラピー」が「治療」という意味にあたるので、美容院やエステサロンでは使用することができません。
アロマセラピーをアロママッサージに置き換えれば大丈夫ではないかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、「マッサージ」は「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(略称:あはき法)」という法律で決められた、国家資格を取得した者だけができる施術なので、資格を持っていない美容院やエステサロンのスタッフは行うことができません。
美容院やエステサロンでアロマを使用した施術を行う際は、アロマトリートメントという言葉を使用すると良いでしょう。
ここからは、美容院やエステサロンでなぜ「治療」や「セラピー」という広告表現はできないのか、関連する法律を考えながら見て行きましょう。美容院やエステサロンでは薬機法と医師法における間接規制が関連します。
間接規制とは、その法律によって禁止事項が直接定められているのではなく、その他の法律により必然的に規制の対象になることをいいます。「薬機法」とは厚生労働省が定めた法律で、正式名称「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」で「医薬品医療機器等法」と略されることもあります。
「薬機法」は、どのような広告表現が違反となるのかを、「医薬品等適正広告基準」としてまとめています。保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止・指定薬物の規制・医薬品や医療機器、再生医療等製品の研究開発の促進を目的としています。
「薬機法」によると、医師以外のものが医薬品を取り扱うことはできません。「薬機法」では「治療」という言葉のように医師でない者が、医師のような行為や「治療」のような効果が出ると誤認するような表現は禁止されています。
また、製品の効能効果について、誇大な表現をすることや他社の誹謗中傷、医師監修のように医師が保証したと誤認される可能性のある表現を禁止しています。
美容院やサロンで取扱できる化粧品や健康食品については、「このサプリを飲むだけで痩せる」「塗るだけでしわが消える」など薬のような効果が出ることを謳ってはいけないのです。
誇大広告の禁止(第66条)
何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
3何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品の広告の制限(第67条)
政令で定めるがんその他の特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品又は再生医療等製品であつて、医師又は歯科医師の指導の下に使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいものについては、厚生労働省令で、医薬品を指定し、その医薬品に関する広告につき、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法を制限する等、当該医薬品の適正な使用の確保のために必要な措置を定めることができる。
厚生労働大臣は、前項に規定する特殊疾病を定める政令について、その制定又は改廃に関する閣議を求めるには、あらかじめ、薬事・食品衛生審議会の意見を聴かなければならない。ただし、薬事・食品衛生審議会が軽微な事項と認めるものについては、この限りでない。
引用:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
医師免許や業務等に関する法律を「医師法」といいます。医師でなければ「医業」をしてはいけない旨が定められています。
医師は、医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。
引用:医師法
美容院やエステサロンで医師免許を保持していないものが、医療行為だと誤認されるような表現をすると医師法違反になるので注意が必要です。薬機法や医師法は美容院やエステサロンと関係ないと思われがちです。
しかし、医師以外の者が身体の構造や・機能に影響を与える治療行為をすることやそのような行為と誤認される表現も違反となるので、広告表現を考える上でとても重要になります。
美容室・サロンでの違反例
美容室・サロンでの違反例をご紹介します。 薬機法違反をすると、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金が科せられます。
メディカルサロン「4種類のサプリやお茶」(2020年3〜6月) 「乳がん予防」「インフルエンザ予防」「便秘解消」などと広告し、薬機法第68条違反で規制対象となりました。
承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止(第68条) 何人も、第14条第1項又は、第23条の2の5第1項若しくは第23条の2の23第1項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第14条第1項、第19条の2第1項、第23条の2の5第1項、第23条の2の17第1項、第23条の25第1項若しくは第23条の37第1項の承認又は第23条の2の23第1項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
引用:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
言い換え表現(参考)
美容院やサロンの広告で、「効く」「矯正」などの医療行為と誤認される表現は使用できません。
下記の言い換え表現を参考にしてみて下さい。
・安全性確認済み⇨安全性に努めています
・効く⇨防ぐ
・矯正⇨整える
まとめ
「治療」や「セラピー」という言葉をよく耳にしますが、実は美容室やサロンの広告表現で使用することはできません。
「薬機法」では「治療」のように医師でない者が、医師のような行為や治療のような効果をもたらすことができると誤認するような表現は禁止されています。
また、「医師法」により「治療」行為は医師でなければ行ってはいけないと定められています。「セラピー」も「治療」と同等なので、美容院やサロンでは「アロマセラピー」という広告表現もできません。「アロマトリートメント」などに言い換えると良いでしょう。
※違反事例、言い換え表現についてはあくまで参考として捉えてください。表現の違反等の判断については最新の情報を常にアップデートして頂くことが大切です。また、各都道府県の薬務課によって見解が異なりますので、ご理解頂きますよう宜しくお願い致します。