SNSやYouTubeはインフルエンサーの商品レビューの場とされていましたが、最近では健康食品会社の社員が自社や他社の製品の情報発信する機会も多くなっています。
ただ、会社の知らないところで社員が法律やガイドラインに違反した内容を発信してしまうといったトラブルも起きているため、SNSやYouTubeの運用には注意が必要です。
本記事では、健康食品会社の社員が、SNSやYouTubeで自社または他社製品の紹介をする際の注意点についてご紹介します。健康食品メーカーや健康食品の広告会社に勤めている方は十分注意しましょう。
SNS・YouTubeで個人が発信しやすい現代
SNSやYouTubeでサプリメントの感想やおすすめなどの投稿を行う人は年々増加しています。近年では、サプリメントなどの健康食品会社の社員が会社や個人のアカウントで自社製品の情報を発信するといった宣伝戦略を行うことも増えてきました。
しかし、健康食品会社の社員がSNSやYouTubeで薬機法に抵触する表現などの不適切な内容を投稿してトラブルとなった事例も報告されています。
健康食品の範囲を超えた効果効能の表現はNG
サプリメントを含めた健康食品の情報をSNSやYouTubeで発信するときは、事実と異なる効果があるような内容は健康増進法に抵触するため注意が必要です。
何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項((中略)「健康保持増進効果等」という。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない
(健康増進法第65条より引用)
なお、法律が定める「健康保持増進効果等」の具体例としては次のようなワードが挙げられます。これらのワードを健康食品の情報として発信しないよう気を付けましょう。
- 疾病の治療又は予防を目的とする効果
例:「糖尿病、高血圧、動脈硬化の人に」、「末期ガンが治る」、「虫歯にならない」、「生活習慣病予防」、「骨粗しょう症予防」、「アレルギー症状を緩和する」、「インフルエンザ、コロナウイルスの予防に」
- 身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効果
例:「疲労回復」、「強精(強性)強壮」、「体力増強」、「食欲増進」、「新陳代謝を盛んにする」、「老化防止」、「若返り」、「アンチエイジング」、「免疫機能の向上」、「免疫力を高める」、「疾病に対する治癒力を増強します」、「集中力を高める」、「脂肪燃焼を促進!」、「細胞の活性化」、「治癒力が増す」、「○○○は、活性酸素除去酵素を増加させます」、「歩行能力改善」
- 特定の保健の用途に適する旨の効果
例:「本品はおなかの調子を整えます」、「この製品は血圧が高めの方に適する」、「コレステロールの吸収を抑える」、「食後の血中中性脂肪の上昇を抑える」、「体脂肪を減らすのを助ける」、「本品は骨密度を高める働きのある○○○(成分名)を含んでおり、骨の健康が気になる方に適する」、「本品には○○○(成分名)が含まれます。○○○(成分名)には食事の脂肪や糖分の吸収を抑える機能があることが報告されています。」
- 栄養成分の効果
例:「カルシウムは、骨や歯の形成に必要な栄養素です」、「ビタミンDは、腸管でのカルシウムの吸収を促進し、骨の形成を助ける栄養素です」
(健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項についてより引用)
広告と感想の違い
健康食品会社の社員が健康食品について発信することは、利害関係があると考えられることから「広告」と判断される場合があります。逆に、影響力のない人が健康食品についてSNSで発信することはその製品の「感想」と捉えられるでしょう。
また、健康食品の体験談や「個人の感想です」といった表示も、消費者にその製品の効果や安全性の保証をしているとして不適切な広告と判断されます。
実際に商品を摂取した者の体験談を広告等において使用することが、直ちに虚偽誇大表示等に当たるものではない。
しかし、体験談を不適切に使用することにより、一般消費者に誤認される表示をする場合には、その表示は虚偽誇大表示等に当たるおそれがある。 また、「個人の感想です」、「効果を保証するものではありません」、「軽い運動を併用した結果です」等の表示をしたとしても、虚偽誇大表示等に当たるか否かの判断に影響を与えるものではなく、本件商品に含まれる成分の効果を強調する表示や、体験談等を含む表示内容全体から、当該商品に健康保持増進効果等があるものと一般消費者に認識されるにもかかわらず、実際にはそのような効果がない場合には、その表示は虚偽誇大表示等に当たる。
(健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項についてより引用)
ただし、サプリメントや健康食品の使用感を説明する場合はSNSやYouTubeへの投稿が認められています。
健康食品の使用感の具体例としては、次のようなワードが考えられます。
- 飲みやすい
- のどごしがいい
- 美味しい
- サラサラ
- 香りがいい
健康食品会社の社員の製品について感想を投稿する場合は、一般の人より影響力が大きいと考えられます。そのため、使用感に関しても過度な内容は避けましょう。
会社名を伏せればOK?
健康食品会社の社員が、会社名を伏せて商品紹介を行う場合でも、他社製品の誹謗中傷や他社と比べた内容を投稿することは不適切とされています。
また、企業によっては自社の従業員であることを伏せて商品の紹介をすることを禁止している場合もあるため、入社時のルールや就業規則について確認しておきましょう。
また、他社の誹謗中傷や他社製品の比較広告は、暗示的な内容でも法律やガイドラインに違反する恐れがあります。他社名を伏せてA社、B社などの形で自社製品と比較した内容も投稿しない方が無難でしょう。
“ステマ”と見做される可能性も
社員が会社名を伏せて自社製品を宣伝するなどの行為は「ステマ」と判断されて非難やネット炎上の原因になる可能性があります。
ステマ(ステルスマーケティング)とは、SNSやYouTubeなどによって消費者に宣伝だと悟られないように宣伝するマーケティング手法です。
ステルスマーケティングは、中立的な立場での批評を装ったり、当の商品と直接の利害関係がないファンの感想を装ったりして行われる。商品の特長の紹介や、評価システム上の評価をつり上げるなどの行為により、多くのユーザーの目に触れさせ、またユーザーの商品に対する印象を上げることが主な目的とされる。 インターネット上では、ショッピングサイトのユーザー評価の投稿欄や、ブログ上の体験記、口コミ情報サイトなどがステルスマーケティングに利用されやすい。有名人などがブログでお気に入りの商品を紹介する記事の中にも、ステルスマーケティングに該当する例があるとされる。 ステルスマーケティングを行うことで、バイラルマーケティングやバズマーケティングを意図的に引き起こすことが期待できる。ステルスマーケティングはそれが宣伝であることを意図的に隠すやり方であり、一般的にはモラルに反するとされる。ステルスマーケティングを行っていることが発覚した場合、非難の対象となる場合が多い。
(Weblio辞書|ステルスマーケティングより引用)
ステマは問題のある投稿として非難やネット炎上が起こりやすいといわれています。
ネット炎上は会社の評判に直結するため、問題とされやすい行為は未然に防ぐことが大切です。また、炎上後の誠意ある対応も会社のイメージを守るために不可欠です。
まとめ
最近ではSNSやYouTubeで発信する人が多くなりました。健康食品会社の社員がSNSやYouTubeを使う場合は、会社か個人のアカウントかは関係なく、その製品について事実と異なる効果効能や過剰な表現は法律やガイドラインに違反にあたります。
ネット炎上は会社のイメージダウンに直結します。SNSやYouTubeを運用する際は、薬機法やガイドラインに違反する内容を投稿しないよう、十分注意しましょう。