酵素には消化や代謝などを助ける働きがあると言われ、酵素を含むサプリやドリンクなどは健康食品として人気があります。
しかし広告などで酵素を扱う場合には法律に抵触しないように十分注意すべきと言えます。広告で表現する内容によっては「知らずに使っていて法律違反」ということも考えられ、法律違反してしまう事態は避けたいところです。
そこで本記事では「酵素」の効果などを広告で謳う際に注意すべき法律や具体的な表現などを分かりやすく解説していきます。酵素の健康食品を広告で扱う方などはぜひ最後まで読んで参考にしてください。
話題の「酵素」とは
酵素とは身体の中にある必須のたんぱく質のひとつです。人を含む動物が、摂取した食物を消化・吸収・代謝する際など、体で起こる様々な反応をスムーズにするために酵素が必要になります。
酵素には下記の2種類があります。
- 体内酵素
- 体外酵素
「体内酵素」はもとから体にあるもので、「体外酵素」は食べ物などで身体に取り入れます。「体内酵素」には消化器官から分泌される「消化酵素」と、吸収された栄養素を細胞に届ける「代謝酵素」があります。「体外酵素」には食べ物に含まれる酵素である「食物酵素」があります。それぞれの酵素について少し詳細を説明します。
消化酵素
「消化酵素」は食べた物を分解して、体に吸収しやすいようにします。代表的なものはでんぷんを分解する「アミラーゼ」、たんぱく質を分解する「プロテアーゼ」、脂肪を分解する「リパーゼ」などがあります。
代謝酵素
「代謝酵素」は消化酵素以外のもので、吸収された栄養素を体の細胞に届けます。主に血液循環や新陳代謝をよくすると言われています。
食物酵素
「食物酵素」は食べ物に含まれる酵素です。主に体内の消化酵素の節約をしたり、代謝酵素の働きを良くします。生野菜や味噌、納豆などの発酵食品などに含まれています。
健康食品で気をつけるべき薬機法、景表法
健康食品に酵素が含まれているものもありますが、広告などで効果を謳う際は法律違反にならないか注意が必要です。薬機法や景表法の詳細を見ながら気を付けるべき表現などを見ていきましょう。
薬機法とは
まずは薬機法から確認していきます。
正式名所は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と呼ばれ、「薬機法」「医薬品医療機器等法」など省略して呼ばれることが一般的です。
主に下記の薬品類や医療機器、化粧品などが薬機法の対象になります。
薬機法の対象
- 医薬品(医療用医薬品、市販薬、血液学的検査薬等)
- 医薬部外品(うがい薬、殺虫剤、染毛剤、栄養ドリンク等)
- 化粧品(一般的な化粧品、シャンプー、スキンケア用品等)
- 医薬機器(ペースメーカー、人工関節、超音波画像診断装置など)
- 再生医療等製品(心筋の細胞シート等)
出典:厚生労働省
厚生労働省は上記の医薬品や化粧品などの対象物に対して安全性や有効性を確保するために、「開発」「製造」「販売」「流通」「使用」などあらゆる場面で規制が細かく定めています。
(誇大広告等) 第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
薬機法では細かい場面ごとの法律が定められており、広告に関しても規制があります。医薬品など扱う場面で製造方法や効果について明示的暗示的に関わらず「虚偽や誇大な表現」は禁止されています。誤認されるような広告も違反にならないように注意すべきでしょう。
(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止) 第六十八条 何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
健康食品の場合は基本的には薬機法の対象外となります。
しかし、表現の方法によっては薬機法の対象になる可能性があるので注意が必要でしょう。健康食品の範囲内での表現ならよいのですが「医薬品と思わせるような表現」はNGです。
景表法とは
健康食品の広告を扱うにあたり、景品表も関わってきます。詳細を見ていきましょう。
(目的) 第一条 この法律は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とする。
景表法は正式名称が「不当景品類及び不当表示防止法」という名前で、不当な誘導などで商品販売の場で顧客が不利益にならないように防止する法律です。景表法では、規制をつくることにより消費者の方が「自主的かつ合理的」に良い商品を選べる環境づくりを目指しています。解決したい悩みにそぐわない商品を買わないためにも、顧客側にとってありがたい規制と言えるでしょう。
<不実証広告規制の概要> 消費者庁は、商品・サービスの効果や性能に優良誤認表示の疑いがある場合、その事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます。当該資料が提出されない場合、当該表示は不当表示とみなされます。
出典:消費者庁
少しだけ景表法の詳細も見ていきましょう。健康食品の場合、特に注意すべきは「不実証広告規制」です。
健康食品で効果などを謳う際は「合理的な根拠なし」で伝えることはできません。商品のすばらしさを伝えたいがため表現を強くしてしまう場合など、景表法に抵触しないかは特に注意すべきでしょう。
酵素サプリ、ドリンクの広告における注意点
実際に酵素サプリやドリンクを扱っており「広告で効果を伝えたい」という場合はどのようなことに気を付ければよいのでしょうか。ここまでの内容をもとに解説していきます。
酵素サプリ、ドリンクで認められない表現
薬機法の観点でみると下記の表現などは特に気を付けるべきと言えます。実際に活用する際は薬機法違反になってしまう可能性があります。
- 免疫力が上がる
- 血液サラサラ
- 代謝を促進
上記のような身体の機能に影響を与える表現は医薬品的な効果となり、薬機法違反になる可能性があります。扱う際の表現には十分注意すべきでしょう。
酵素サプリ、ドリンクで認められる表現
それではどのような表現であれば法律に触れることなく広告に載せてもよいのでしょうか。実際の例を交えながら確認していきましょう。前述の通り、暗示的・明示的に関わらず「身体の機能に影響を与える」表現は薬機法に抵触してしまいます。そのため抽象的な表現や栄養補給のような医薬品に該当しない表現が求められます。
言い換え表現(参考)
ここまでの内容をもとに、酵素サプリやドリンクで扱う場合の広告表現の言い換えを記載します。酵素サプリやドリンクなどを検討されている方はぜひ参考にしてください。
NG:酵素ドリンクで代謝促進
OK:日々の元気に
NG:酵素ドリンクで代謝促進
OK:食事でとりにくい成分を
まとめ
本記事では健康食品で酵素を広告などで扱う際に気を付けるべき法律について解説しました。
酵素サプリで「代謝促進」などの効果を伝えると法律違反の可能性があります。知らないうちに薬機法や景表法に触れてしまう可能性もあり、酵素の効果を謳う際には表現などを十分に注意すべきと言えるでしょう。健康食品の広告などを扱う際はぜひ今回の内容を参考してみてください。